m.r.factory

2009-06-27

[]六龍鉱泉

アトリエで絵を描いて、夕方から銭湯に行く。

山手線に乗って西日暮里で降りる。谷中銀座の商店街の酒屋で生ビールを買い、肉屋でメンチカツを買う。焼き鳥も買う。ビール片手に飲みながら食べながら歩いていく。東京はすでに夏の気温で、生ビールが水のように体に染み込み、そして汗になっていく。

谷中から行くと、上野公園不忍池の手前の路地を曲がった奥に、銭湯「六龍鉱泉」はある。路地の奥、住宅密集地にあるのでそれほど大きく見えないが、中に入ると東京の古い銭湯らしい、威風堂々さがある。仙台銭湯「かしわ湯」の女将さんの言葉、東京銭湯は立派でしょ、を思い出す。確かに立派だと思う。

右手が女湯。引き戸を開けるとフロントがある。脱衣所の一部を壁で囲い無理やり作ったフロントだ。古い銭湯が番台からフロントに移行すると、こういう造りになる。450円払って脱衣所へ向かう。天井が高い。格天井ではないが、高い天井に梁が何本も通っている。脱衣所が広い。ベビーベットが5台分ある。女湯にしては広めの庭も付いており、庭には大きい池もある。金魚の姿は見えないが、きちんと水がはられている。池を囲むように渡り廊下が付いており、廊下の先には便所がある。

脱衣所と洗い場は、全面木枠のガラス窓で区切られている。このガラス窓が、この銭湯の空間をさらに広く大きく見せている。ガラス窓の1枚1枚に茶色の文字でそれぞれ「六」「龍」「鉱」「泉」と書かれている。文字のないところにはこの銭湯家紋なのかおそらく、桔梗の紋、が書かれている。木枠のガラス窓とそこに書かれた立派な文字が、ここが銭湯ではなくどこか田舎の温泉宿に来たかのような錯覚をさせる。

洗い場に入る。洗い場も広く天井が高い。島カランが2列ある。正面の壁には男湯から続くタイル絵が全面に施されている。女湯のタイル絵は、手前に大きな池があり、奥に茶室なのか庵なのかわからない日本家屋がひとつある。薄桃色の花をつけている木は桜なのかなんなのか、とにかくこの絵の季節は春らしい。男湯はと見ると区切りの壁の上に、大きな丸い橋らしきものが見える。

男湯と女湯を区切る壁にもタイル絵がある。このタイル絵は富士山で、薄紫色で頭に白い雪をのせている。正面のタイル絵は10センチ四方の大きなタイル、区切りの壁のタイル絵は1センチ四方の小さなタイルで出来ている。

湯船は大きめと小さめのふたつ。湯は、黒に近い濃い茶色をしている。そう言えば鉱泉だっけ、と思い出す。温泉鉱泉、の銭湯東京にはいくつかある。思い出してみると、どのお湯も濃く茶色い。

大きめの湯船に入る。お湯はそこそこ熱いが、肩まで体を沈めることはできる。床の一部分から泡がぽこぽこと出ている。大きな湯船は盛況だが、小さな湯船に入る人はいない。小さく深い湯船は波ひとつたたず、鏡のような黒いお湯に天井や壁が写っている。どうしてだろうと小さな湯船に入ってみる。足先を入れ、膝の辺りまできた瞬間、あまりの熱さに体が痺れる。誰も入らない、入れないはずだと納得する。わざわざ水で薄めて入るのも違う気がする。この鏡のような黒いお湯は、横の大きめの湯に浸かりながら見て楽しむのが正解なのだ。

フロントのお兄さんに、銭湯遍路の判子をもらう。ついでに女湯のペンキ絵はどこの場所なのかと聞いてみる。男湯のペンキ絵は錦帯橋なんだけど女湯はうーん・・・、と悩んでいる。

上野まで歩き、居酒屋で一杯飲んでから帰る。一杯飲んで外に出る。夏の一日は長くて、まだまだ空が明るい。

六龍鉱泉