m.r.factory

2009-08-13

[][]海を見に行く

海が見たくて手頃に行けるお台場へ行く。駅を降りるとガンダム目当てかフジテレビ目当てか、海のほうまで家族連れとカップルの列がだらだらと続く。人の流れに乗るようにして歩いていけば、目の前にはいつのまにかお台場の海がある。お台場の海から葛西の海まで、水上バスが走っている。私はもっと海が見たい。生ビールと、葛西までの切符1000円を買い、13時20分発の水上バスに乗る。空と海の見える後ろのデッキに腰掛けて、生ビールを飲む。船のエンジンの音、重油の匂い、腐った茶色い海の匂い、どこかから流れてくるお弁当の匂い。これにコパトーンの甘ったるい匂いが加われば、夏が完成するのにね。

お台場の人工の島沿いを船は走る。公園の木々の中に、噂の等身大ガンダムが、海に背を向けて立っている。18メートルの高さは海から見れば驚くほどちっぽけで、ガンダムの足元に群がる人の影はさらにちっぽけ。大きなロボットが出るアニメーションを見るたびに、あんなでかいものが街中を歩き回り戦うのはさぞ迫力だろうと思っていたが、高層ビルが林立する今の東京では、ガンダムさえも小さく見える。

大きなコンテナ、それをいくつも乗せる船、夢の島の風車、京葉線の鉄橋、遠くに見えるディズニーランドお台場茶色い海から葛西薄茶色い海までの、50分の小さな船旅が終わる。お台場では見えなかった水平線が、葛西の海では遠くに白く煙って見える。

船着場から徒歩10分。葛西臨海水族館へ行く。水族館までの道ですれ違う、子どもを連れた父親たちの顔は、暑さと慣れない家族サービスのせいか、ぐにゃりと崩れて人の顔から離れつつある。

サメとエイがいて、マグロがいて、シードラゴンがいて。どの水槽の前にもみっちりと、大人と子どもの大小の頭が並ぶ。人込みに疲れて、マグロの大水槽の前のベンチで休む。ベンチを囲むように360度の円を描くこの水槽は、マグロの回遊を見るためのものだが、肝心のマグロたちは、同じ場所を行ったり来たりしてばかり。以前は小さなマンボウが一匹ゆらゆらと360度漂っていたが、そのマンボウも今日はいない。360度ある水槽はその内の100度分くらいしか使われておらず、残りの部分にはただ海水だけが漂っている。

電車を乗り継ぎ、月島へ行く。もんじゃ商店街とは逆側、佃島とよばれるこの町の、長屋と古い商店街を抜けたところに銭湯「旭湯」はある。入り口で、今何時かな、とつい出てしまった声に、5時ですよ、とすれ違ったおばあさんが答えてくれる。左側が女湯。脱衣所は、体を拭くおばさんたちでごった返している。活気のある銭湯に来たのは久しぶりのことで、今日はどこに行っても混んでいるなと可笑しくなる。

脱衣所の天井は高く、洗い場の天井も高く。古いところと改修したところが程よく混じり合う、昔からあるいわゆる普通の町の銭湯だ。変わっているのは桶で、金盥、だったこと。銀色の、ヘルメットのように深く丸くな桶で、こんな形も銭湯で使っているのも、はじめて見た。洗い場の正面にはどこかの海と松のペンキ絵。その下の湯船は、大きめと小さめに分かれ、小さめはさらに小さく2つに分かれ、片方にはジェットがついている。下町らしくお湯はかなり熱く、肩まで身を沈めるのに気合がいる。今日は早いじゃない、さっきまで混んでたのよ、さいなら、さいなら。さいなら、と短く言い合う響きが気持ちがいい。ここにいると、昔の日本映画の中にいるような、そんな気分になる。
旭湯

ビールを買いたいところを我慢して、地下鉄に乗り築地まで。回る寿司屋に突入し、生ビールをぐびっと飲む。あーおいしい。砂漠に染み込む水のように、体にビールが染みていく。