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2009-09-29

[]豊川浴泉

みちくさ市でお馴染みの鬼子母神通り商店街を抜けて、目白通りを越える。目の前にあらわれた長く急な坂・宿坂をくだり、「怪談 乳房榎」のゆかりの寺・南蔵院の手前を左折する。そのまま道なりにまっすぐ歩くと、銭湯豊川浴泉」がある。古い木造の、大きくて立派な銭湯だ。銭湯入り口の壁には、鶴のコテ絵。屋根の飾り・懸魚は、まん丸の目に歯が剥き出しの何かの顔で、チベット仏教画か何かで見たことがあるような顔だがよくわからない。入ると右手に傘入れと下駄箱。正面に脱衣所を削ってつくられたフロントがあり、フロントの前はベンチが置かれ小さなロビーになっている。入った瞬間、格天井の見事さと、そこから吊り下がる照明器具の美しさに目が吸い寄せられる。照明の横には古い扇風機も吊られていて、大きな羽がゆっくりと回っている。壁にかかるboseのスピーカーから、邪魔にならないような音量で、常に演歌が流れている。

左手が女湯。脱衣所もゆったりと広い。脱衣所に面して、小さな庭と池もある。池にはきちんと水がはられ、金魚と鯉が泳ぎ、小さな灯篭には明かりが灯っている。洗い場に入る。正面の壁には、どこかの渓谷のペンキ絵がある。絵の端に渓谷の名が書いてあったが、湯から上がりビールを飲んだらすっかり忘れた。ペンキ絵の下には湯船が並ぶ。右から、深めの薬湯、座ジェット、泡風呂、の3つ。座ジェットと泡風呂は、浅め広めの湯船を分割して作られている。湯船と洗い場のあちこちは今風に改装されているが、天井や壁、梁、ペンキ絵は、昔のままの姿を残している。脱衣所の天井も見事だったが、洗い場の天井もこれまた見事で、こんなに広く高い天井は滅多にないのでは、と思う。湯に浸かり、天井を見ているだけで幸せな気分になれる銭湯も珍しい。

湯から上がり、ロビーのベンチに腰掛け「文京区銭湯に行こう!」のチラシを手提げ袋からごそごそと出していると、あ新聞の折込チラシ?とフロントのおじさんに声をかけられる。そうです、と差し出すと、タオル石鹸シャンプー銭湯手ぶらセットをくれた。そのままおじさんと少し話す。「豊川浴泉」は昭和25年創業で、天井から下がる素敵な照明器具は創業当時からのもの。今は昔からの照明器具と後から壁に付けた蛍光灯で脱衣所を照らしているが、創業当時はまだ蛍光灯がなく、天井から吊られた照明器具だけで照らしていたので今よりだいぶ暗かった、とおじさんは話す。男湯の脱衣所の上の窓、あそこの外側にもライトがつけてあって、昔は神田川までの道を照らしていたんだよ、昔は道が暗くて足元か危なかったから、よく見えるようにね。外に出て言われた場所を見てみると、体育館の天井にあるような丸い大きなライトがひとつ、神田川まで伸びるまっすぐな道を照らすように置かれていた。このチラシの絵、私が描いたんです。なんとなく照れくさく、最後までその言葉が言えなかった。
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