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2018-11-01

[]嘆き節

西口のコンビニへ移動した彼の替わりに、西口のコンビニから新しい店長がやってきた。入れ替わりなんですよ、と新しい店長を紹介された。紹介された気安さからか、レジの向こうの新しい顔と話すことに抵抗がない。

自分が来たとたんすぐモノが壊れるんですよー、バイトのばっくれが多くてー、この店たばこの種類が多すぎるんですよー、少しずつ減らしますよー。

前の彼とは違う、真面目な顔での嘆き節もまた愉快で、あいかわらずこのコンビニに通っている。

アルバイトの顔も多少変わった。よく会うのは坊主頭のがっちりした体格の彼で、いまの店長の嘆き節のせいか、彼もまたよく嘆く。ある日行くと、寝てないんですよーと嘆き、またある日行くと、右手が痛いんですよー、と右肩の辺りを弱々しくさすっている。坊主頭とがっちりした見た目から、運動でもして痛めたのかとたずねると、いえ、役者をしています、と返ってくる。たばこを取るために一日に何度も手をあげるからですかね、とレジの真上の棚に右手をのばし、いてて、という顔を見せてくる。坊主頭にしたのも役ですよ。高校生の役なんです。

高校生?つい聞き返してしまったことばの響きを読んだのか、いや、留年した高校生ですよ、と照れながら笑う。

珈琲を待つあいだ、彼、役者なんですね、と新しい店長に話しかける。自分も昔、目指してたんですけどねー。どこか自慢げに、新しい店長がこちらを見返す。実際、多いですよ、この業界。時間の自由がわりと利くから。そうなんだ。うなづきながら、ここで働く顔とは違う、役者の顔はどんなだろうと想像しながら、いれてもらった珈琲を受け取る。