Ben Frost / The Centre Cannot Hold

いきなりの如何にもSteve Albini的な、濃密で重厚なインダストリアル・ノイズでアルバムは幕を開ける。
実際にはミックスのみでプロデューサーとしてはクレジットされていないがその影響は明らかで、Steve Albiniによって補強された暴力的な要素とそれでも次第に滲み出るBen Frost的なリリカルな要素との拮抗はとてもスリリング。

Albini的な要素に呼応するかのようにアンビエンスも何処か不穏さを増しており、M5のインダストリアルな打撃音やシンセギター風の音色と言い、M7やM10等で聴かれるキック・ドラムによるビートと言い、Oneohtrix Point Never「Garden Of Delete」及びシアトリカルなムードは「Good Time」にも通じる。
元よりブラック・メタルがバックグラウンドにある人らしいので自然と言えば自然で、そう思えば「Aurora」にもインダストリアル・メタル的な要素は聴き取れた。

OPNが標榜する「ハイパー・グランジ」がそのコンセプトからして冗談臭さや諧謔性を伴っていたのに対して、本作のサウンドは(「Meg Ryan Eyes」「Entoropy In Blue」なんて曲名は巫山戯てはいるものの)何処までもシリアスで、インダストリアル・ノイズやヘヴィ・ドローンとリリカルなアンビエンスの組み合わせ自体は最早有り触れていて、「Aurora」程の新鮮さは無い。

ノイズ自体の音圧・強度は流石だが、音色の幅も全体のトーンの起伏も乏しく、アルバムとしての聴きどころは正直少ないし、終始張り詰めた緊張感に覆われていて、「Good Time」のラスト2曲のような救いも無い。
アンビエント/ドローン/ノイズがポップ・フィールドを侵食し始めた2010年代初頭であれば聴こえ方も違ったのかも知れないが、あれから10年近くが経過しようとしている今、どうしても耳はその次を求めてしまう。