Kamasi Washington / Heaven And Earth

オーケストレーションや男女混声のコーラスが齎す荘厳でスピリチュアルなムード等は基本的に「The Epic」を踏襲しているが、ビバップやヴォーカルもののソウル・ジャズは比較的減って、代わりにパーカッシヴでシャッフルしたリズムのアフロ・キューバンや、キーボードを多用したフュージョン風 (Thundercatのエレクトリック・ベースが絡む曲は特に)が台頭を見せている。

前作は割とオーソドックスなアドリブ→テーマの展開が多かった印象があるが、アレンジはより複雑になり、単一の楽器がリードを交代する展開が勿論メインではあるが、よりバックの楽器が創造性豊かで自由度の高い演奏で応酬し拮抗し合う場面が増えたというが気する。
怒涛のポリリズムにファジーシンセサイザーが漂う上を、無調のテナー・サックスの超絶テクニックのタンギングが駆け回るM3の混沌としたアレンジ等は前作には無かったものだろう
(特に後半のドラムの凄まじいこと)。

Disc2-M2のヴォコーダーやシンセベース等、クラシック・ピアノやローズ以外の鍵盤の音色も多様化しており 、M4のコーラスに施されたダビーなエコー処理やM6の終盤で演奏を掻き消すコラージュ等、確実に前作よりも音響面でのギミックや創意工夫は多くなっている。
Disc2-M3のヒップホップ的な8ビートにサブベースを模したようなベースの音色、後半のドラムンベースめいたビートも新鮮だ。

個人的にジャズの再発見に近い体験だっただけに、流石に「The Epic」を聴いた際程の驚きは無いが、着実にそのアイデアを拡張・発展させ歩みを進めた充実作だと言えるだろう。
思えば自分にとってリアルタイムでジャズ・ミュージシャンのキャリアを追う事が初めての経験(菊池成孔という存在が居るには居るが純粋にジャズとして興味を持ったかは怪しいし、第一そんなに熱心な彼のリスナーという訳でもない)で、その意味でもKamasi Washingtonのこれからのキャリアがとても楽しみだ。