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なにかあり/とくになし

キセル・シングス・キセル

キセル
シングルB面曲やコンピ参加曲、
レアなインスト曲などを収めた3枚組CD
「SUKIMA MUSICS」のレコ発ライヴ@恵比寿LIQUID ROOMに
とことこと出かけた。


先月、
このCDの
タワレコ特典ブックレットの仕事をした。


そのブックレットの表紙
デザイナーの佐藤さんから送られてきたとき
CDのジャケットのアウトテイクなのだろう
ふたりが車に乗った写真を見て、
まるで「ニルソン・シングス・ニューマン」みたいだと思った。


たぶん
ぼくの思い過ごしというか
単なる偶然の空似なのだろうけど。


あの70年のアルバム
「ニルソン・シングス・ニューマン」は
「うわさの男」が映画の主題歌でヒットして
当時人気絶頂のニルソンが
ランディ・ニューマンというひねくれ者の書く歌に
血のつながりはないけれど
自分と兄弟のような親近感を覚えて
全曲ニューマンの曲だけをうたったものだった。


一方
キセルの「SUKIMA MUSICS」は
自分たちで作ったけれど
あまり顧みられる機会のなかった曲たちと
あらためて対面するような企画で、
「なんだ、おまえ(おれ)はこんなこと考えてたのか」と
思わされるような場面が多かったのではないかと想像した。


まったく知らないのに他人の作品とは思えない曲をうたった
「ニルソン・シングス・ニューマン」と
自分たちの曲だけどちょっと遠い存在になっていた曲をうたった
「SUKIMA MUSICS」は
同じようなアルバムではないけれど、
なんとなく背中合わせにしてみたら
相通じる匂いがあるようにも
ぼくには思える。


案の定
今夜のライヴで
ひさしぶりに自分たちの昔の写真を見るような面持ちで
しかし
確かに今の自分たちの手足とからだで
10年のスキマに隠れていた曲の数々と握手したキセルのふたり。


最初のうちは
あまりおなじみ感のない楽曲たちに対し
本人たちも客席も
親近感と緊張感が
ないまぜになっていた気がすこしした。
でも最後には
「ああ、やっぱりおれらはおれらやった」と
自分たちでも安堵しているような
不思議な解放感があったのだ。


これってもしかして
キセル・シングス・キセル」みたいな体験なんだろうか。


自分のような他人。
他人のような自分。
自分のような自分。


やっぱり
「ニルソン・シングス・ニューマン」を思い出しながら
ぼくはキセル
2時間のステキなスキマを過ごした。