mrbq(松永 良平 blog Q)

2018-08-30 これから始まるふだんの話/ふだんインタビュー その1

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〈ふだん〉という名前のアーティストを見かけたのは、今年の初夏。


ぼくもときどきお邪魔する神戸塩屋の旧グッゲンハイム邸の名ソムリエにして高校野球狂のSSK氏が主催するイベント〈第3回 初夏のセンバツ〉(2018年6月3日)に関するツイートを見ていたときだった。


 出演者にはだいたい見覚えがあるなかで、ひとつだけ見慣れない名前が。それが、ふだんだった。


 ふだん、って? 普段? 不断? ひとり? ユニット? バンド?


 いろいろ想像をめぐらしたが、SSK氏がブッキングするくらいのアーティストだから、そのうち音源かライヴに出会うだろうと気楽に思っていた。そしたら、6月に大阪に出かけたとき、neco眠るのリーダーにして、レーベル〈こんがりおんがく〉を主催する森雄大くんから「今度、うちのレーベルでスプリットの7インチをシリーズで始めます」と教わった。その第一弾が、ふだんだという。ほら、やっぱり出会ったわ。


 ふだんの正体は、このインタビューを読んでもらえればわかる。彼がやっていたバンド、白い汽笛のファンの人も少なくないはずだし(ぼくもそう)、最近リリースないなと感じていた人もおなじく少なくないはず(ぼくもそう)。


 知ってみてわかったが、これはぼくがひそかにずっと待ち続けていた人の新作だったのだ。


 スプリット・シングルと銘打つだけあって、A面は軽妙なレゲエ・タッチで街をそぞろ歩きするような〈ふだん with エマーソン北村〉での「つゆいり前」、B面はのどかで愛おしい〈popo with ふだん〉での「パンを買いに」。両面で主客逆転の構成になっているが、両面通じての出演は、ふだんのみ。テレビをつけていたら、彼が主役になったドラマと、脇役(しかし重要な)で出てくるドラマを2本立て続けに見るような感じか。どちらの設定にもすっと溶け込んでいるのが、とてもいい。限られた音数だけど、足りている。ふだんの第一歩は、別にファンファーレに見送られずとも、「ちょっと煙草買ってくるわ」と出かける程度がいい。


 インタビューは過日、ふだん&こんがりおんがく森の両名を迎えて行った。せっかくの7インチの軽やかさを妙に重くしないよう、2回に分けて掲載します。


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──「ふだん」というユニットについて、最初は何もわからなかったんですよ。旧グッゲンハイム邸でSSKさんがやったイベント〈第3回 初夏のセンバツ〉(2018年6月3日)が終わった後のツイートとかで、その名前を見つけて、「あれ? 誰? 出てたっけ? バンド?」と思ってて。そしたら、白い汽笛のおぐらこうくんだったという。


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ふだん ソロでおぐらこう名義でもやってたんですけど、今回シングルをリリースするにあたって、改めることにしました。それで、ずっとその名前でやるんだったら、ずっと使える名前がつけたいなと思って。それで、ふだんに。


──いい名前ですよね。他にも候補はあったんですか?


ふだん 日常的というか、「そこにある」みたいな雰囲気の言葉にしたくて。「fudan」って飲み屋さんが家の近くにあるんですけど、その名前がすごくいいなと思ってて。


森(こんがりおんがく/neco眠る) その店がまたいい店で。


ふだん それこそ森くんと一緒に飲みに行って、「名前使っていいですか?」って許可をもらいました。それで、まったくおなじやとあれなんで、こっちはひらがなにして。


──それが今年の前半くらいですか?


ふだん そうですね。グ邸のときもおぐらこうでやったんですけど、イベント中に改名したという。


──イベント中に?


ふだん はい。イベント中にエマーソンさんが改名してくれました。このレコードが出るという紹介を以て、ふだんになったんです。


──バンドの白い汽笛とスタンスが変わったわけではなく?


ふだん そうですね。今のところは。でも、今まではソロやったら弾き語りだけだったんですけど、今回作った7インチみたいにエマさんやpopoと一緒で、トラックや楽器の音がある中でやってみて、それも楽しかったです。


森 これを僕が「出そう」て言い出したんは、一年前のグッゲンハイムでの〈第2回 初夏のセンバツ〉(2017年6月4日)で、そのときにおぐらくんとエマさん、popoが一緒に演奏したんですよ。それが本当にすごくよくて。それがこの7インチの収録曲だったんです。スプリットのかたちで、とまではそのときは考えてなかったですけど、とりあえずおぐらくんのソロ名義でもいいし、その3者を組み合わせたやつを出そうという話をその場でしたんです。


──ということは、リリースの計画としては1年がかり。


森 そうですね。


ふだん 曲を作ったんも、もう2年前かな。popoのオルガンの喜多村(朋太)さんが福井でやってる店(TOKLAS)があって、そこでエマさんのソロ・アルバム『遠近に』のレコ発があったときに、ソロでぼくを呼んでくれたんですよ。そのときにエマさんから「せっかくだから一緒にやりましょう」て声かけてもらって、だったら新しい曲を作ろうと思ったんです。それで、ずっとやりたかった裏打ちのリズムの曲を、ちょっとドキドキしながらエマさんに提出したんです。


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森 今回は、結構明確に「レゲエ、スカっぽいことをやりたい」というのがあったよね。


──白い汽笛にもその要素はあったけど、もっとそれを押し出すようなことですか。


森 そうですね。やっぱり白い汽笛ではおぐらくんが一番その要素が強かったんで。


D



──そうなんですね。おもしろい。普通は弾き語りというか、ソロでやると、もっとフォーキーになるって想像するじゃないですか。むしろ逆なんですね。


ふだん そうなんです。白い汽笛でも、まっちゃん(松原哲也/ベース)なんかはレゲエなんか全然聴いてないし。なので、ああいう独特な音になるんです。


──あとは、〈ふだん〉という名前をまとうことで、ひとりのシンガー・ソングライターというより、「何でもやっていい」みたいな自由さも生まれますよね。


ふだん 確かに。それはありました。


──今回のシングルでも、単にふだんとしての初ソロというより、エマさん、popoと混ざり合うことで、その2アクトが「歌ものをやるとしたらどんな感じ?」みたいな問いに、絶妙な答えをしてるように思えましたね。


ふだん A面の「つゆいり前」は、ぼくが曲を作っていって、エマさんにベースの音を作ってもらったんですけど、ご本人も「すごくエマソロっぽい感じで演奏した」って言ってくださって。


森 「こんなにエマソロっぽく他人の曲に参加したのは初めてかも」って。


ふだん エマソロっぽくやってほしくて作った曲という面もあるしね。


──やっぱり、エマさんの近年のソロ作『遠近に』や『ロックンロールの始まりは』は好きですか。


ふだん 大好きです。


D



──とはいえ、ある意味、音楽だけで表現できているエマソロの世界に自分の歌を乗せていくというのは、結構な難題だったとも思います。


ふだん エマさんの感じに曲をつけるというよりは、僕が作った曲に「演奏つけてください、お願いします」という感じでした。こっちからのリクエストはなくて、エマさんがリードしてくれて。


──先日、ASA-CHANG with エマーソン北村のアルバム発売時におふたりに取材する機会があったんですけど、そのときにエマさんが「今、自分は“エマーソン with ○○”みたいなユニットをいくつかやってるけど、自分とやることで“with ○○”のほうのアーティストの個性がモロに出た音楽になると感じてる」みたいな話をされてて、それは確かに言い得て妙だし、今回、ふだんとの曲を聴いても、おなじように感じました。


ふだん そういう意味でも不思議な感じの楽曲になりましたね。


森 録音のときはエマーソンさんから2人で授業受けてるみたいな感じで。アレンジの違いをいろいろ説明してくれるのを2人で聞きながら。全部が大事な時間でした。楽しかった。密室で3人で、おぐらくんは歌も歌ってたし、緊張感はすごくあったんですけどね。


ふだん 「どっち(のアレンジ)がいいですか?」って聞いてくれて、「こっちがいいです」「じゃあ、こうやって広げてみよう」とか。全然いやな顔ひとつせず、いろいろやってくれて。そういう意味でも、エマさんが作って弾いてくれてるけど、ちゃんと自分もアレンジに参加して作れたという気持ちが残ったし。


──popoとの曲はどうやってできたんですか? 付き合いとしては長いですよね。


ふだん 長いですね。もともとは森くんが働いてたブリッジにpopoが出演してた頃から、好きで見に行ってたんが始まりで。白い汽笛をやり始めてからは共演したりもしてて、アルバムにも参加してもらったりしたし。一緒にやり出してからは、もう5、6年かな。それで〈初夏のセンバツ〉で、今回popoと一緒に録った「パンを買いに」という曲をやったんです。もともと歌詞があった曲で、喜多村さんが歌ってはったというのを白い汽笛の寺ちゃん(寺島タマミ/オルガン、ウクレレ)が知ってて。「歌ってみたら?」って勧めてくれて、それで一緒にやったんがスタートでした。


D



──そう、この曲はpopoのカヴァーなんですよね。エマさんとはまた違うコンビネーション。


ふだん そうです。これは曲がもうあったんで、それを歌わせてもらったんです。だから“popo with ふだん”。


森 僕も「あっ」と思ったんですよ。この2曲を一枚の7インチにするとスプリットってかたちになるんやと。むしろ、それで出すことを思いついたというか。popoとの録音は一発でしたね。


ふだん 楽器は全部一発で録って。


森 最初の1テイクくらいで決まりやったね。プレイバック聴いた一瞬で、みんな「これや」ってなった。


ふだん あの感じもなんか「先輩とやってる」感ありましたね。popoのみなさんの余裕がすごかった。


森 またエマさんのときとは違う先輩感やったね。


ふだん 「音源にするから」という気負いもないというか。「こうせなあかん」とか「きっちりせな」というのではなくて、その現場でいい音が鳴ってるから「それだよ」って感じ。たぶん、自分ひとりで録ってたら、「あ、ちょっとやり直したい」ってなってたかもしれないけど、全然それを越してくるん説得力があるんですよ。


(つづく)