りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

ウェルカム・ホーム!

ウェルカム・ホーム!

ウェルカム・ホーム!

★★★

「フツーの家族」って、なに?「結婚」なんかしてなくたって、血なんかつながってなくたって、家に帰ってきたときに、「おかりなさい!」こう言ってくれる人が、たぶんあなたのほんとの家族。ふつうとは少しカタチが違うけど、とっても温かいふたつの家族の情景を描いた心ぬくぬくの物語。


すごく好きそうな話だなぁーと期待して読んだんだけど、まぁまぁまぁ…。

悪くはなかったけど、そんなに感動したり心温まったりはしなかったかな、正直。

料理人

料理人 (ハヤカワ文庫 NV 11)

料理人 (ハヤカワ文庫 NV 11)

★★★★


これは怖くて面白かった。

食欲っていうのは、すごく原始的っていうか本能に近い欲望なだけに、野蛮で無防備なエリアなのだな。

それだけに胃袋を捕らえられるともう抵抗できないのだ。

「餌付け」って言葉を思い出した。

リテイク・シックスティーン

リテイク・シックスティーン

リテイク・シックスティーン

★★★★

高校に入学したばかりの沙織は、クラスメイトの孝子に「未来から来た」と告白される。未来の世界で27歳・無職の孝子だが、イケてなかった高校生活をやり直せば未来も変えられるはずだ、と。学祭、球技大会、海でのダブルデート…青春を積極的に楽しもうとする孝子に引きずられ、地味で堅実な沙織の日々も少しずつ変わっていく。


ああ、これ好き好き。

高校に入学した頃のふわふわした感じ。

近づいたと思うとぷいっと離れていく友達との距離感。

ふいに大人びて見えたり身近に感じたりする異性の存在。

あれが青春だったのだなぁと、いまになって思うけれど、あまりにぱっとしなくて不完全燃焼でそう感じることはなかった、あの時代。


渦中にいたらおそらくここまで客観的に描くことはできないだろう。

だけど、あまりに離れてしまったら、ここまでリアルに描くことはできないだろう。

この「つかずはなれず」感が絶妙だ。

現役高校生にぜひ読んでほしい。

これを読んだからって人生が変わるわけではないだろうけど、少しだけ気が軽くなるんじゃないか。それってすごいことなんじゃないか、と思う。

感応連鎖

感応連鎖

感応連鎖

女たちの内側で、何かが蠢く。

肥満を異形とする節子か、他人の心が読める絵理香か、自意識に悩む由希子か。

交錯する視点、ぶつかり合う思惑。

真実を語っているのは誰?──魅惑の長編小説


うへぇ。これはだみだ、私には。

出てくる女たちがどいつもこいつもこれでもかと胸糞悪い。

これをリアルと感じる人もいるのだろうが、なにもここまで醜悪に描かなくてもいいのに、と思う。

だからといって面白くないわけじゃなかったんだけど、でもこういう話だったら別に読まなくてもよかったな、わたしは。

暗闇の楽器

暗闇の楽器

暗闇の楽器

★★★

現代のマンハッタン/暗黒の中世フランス、二つの世界が時空を超えて交錯する奇跡のパラレル・ストーリー。高校生が選ぶゴンクール賞受賞作。


50代の作家ナディアの手記と、彼女の小説「復活のソナタ」が交互に語られていく。

ナディアの手記のほうは、「悪魔」と対話しながら、彼女がなぜ今「ひとり」でいるのか、彼女の抱える「闇」の正体は何なのかが徐々に明らかになっていく。

「復活のソナタ」は、双子バルナベとバルブの過激に悲しい物語が語られていく。


私にとってはこれで3冊目になるナンシーヒューストンなんだけど、好きだけど微妙にツボをはずされる感じっていうか、近づけそうで近づけない感じがあって、最後まで読み終わっても、わかったようなわからなかったような…。

好きだと思っていたけど、実はちょっと苦手なタイプの作家なのかもしれない。

薔薇を拒む

薔薇を拒む

薔薇を拒む

★★★

施設で育った内気な少年・博人は、進学への援助を得るため、同い年の樋野と陸の孤島にある屋敷で働き始めた。整った容姿の樋野には壮絶な過去が。博人は令嬢の小夜に恋心を抱くが、陰惨な事件で穏やかだった生活は一変する。それは悪意が渦巻く屋敷で始まる、悲劇の序章に過ぎなかった―。


初めて読んだ近藤史恵作品。

おうおう、なかなか面白いんでないかい。

嫌いじゃないよ、この感じ。でもちょっとお安い感じがしないでもない。なんだろう、なにかを上手に真似たような?

レンブラントの帽子

レンブラントの帽子

レンブラントの帽子

★★★★


これは地味に面白かった。

レンブラントの帽子」、「引出しの中の人間」、「わが子に、殺される」の3編が収められているのだが、特に表題作は身につまされる…。


こんなふうに自分が放った悪気のない一言で誰かと気まずくなったり、友達のつもりでいた誰かを失ってしまうのはよくあることだ。

でもそこで「なぜあの一言が彼の逆鱗に触れてしまったのだろう」と考え、その人の気持ちになってみて、「ああ…」と腑に落ちる。このシーンがたまらなくいい。

被告の女性に関しては

被告の女性に関しては (晶文社ミステリ)

被告の女性に関しては (晶文社ミステリ)

★★★

海辺の村に保養にやってきた学生アランは、滞在先の医師の妻イヴリンと関係を結んでしまう。秘密の関係に深入りしていくアランだが、その先には思わぬ事件が待ち受けていた…。アイルズ・ミステリの到達点ともいうべき傑作。


ミステリのようでミステリではなく、深刻なようでいて案外ユーモラス。

なんともいえない味わいがあるなぁと思ったら、これは結構昔の作品だったんだね。なんか納得。

嫌いじゃないけどすごく面白かったとは言えない。微妙。

あるスキャンダルの覚え書き

あるスキャンダルの覚え書き (ランダムハウス講談社文庫)

あるスキャンダルの覚え書き (ランダムハウス講談社文庫)

★★★★

「まるで新しいおもちゃのような身体だったわ」15歳の男子生徒との禁断の関係を、新任教師シバは友人の老教師バーバラに告白した。バーバラは、シバをスキャンダルから守るため、手を差し伸べる。しかし秘密を握ったバーバラの心には、いつしか黒い感情が渦巻きはじめ…。密かにシバを観察し、毎夜綴られるバーバラの日記。そこには友情を超えた、孤独な老嬢の支配欲と嫉妬がほの見えてくる。ブッカー賞最終候補となった問題作。


美しい新任教師シバと15歳の男子生徒の禁断の関係を、シバの友人である老教師バーバラが語るというスタイルなのだが、読んでいるうちに、この物語の主人公はシバではなくてバーバラなのだということに気付く。

美しくて才能があって幸せな家庭に恵まれたシバへの憧れと執着と嫉妬。それが読み進めるにつれて明らかになっていて実に気持ち悪い。
うへぇキモチワルイ!と切り捨てられないのは、自分の中にもバーバラに似たところがあるからなのか。


嫌な話だけど、嫌いじゃない。