りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

ま・く・ら

ま・く・ら (講談社文庫)

ま・く・ら (講談社文庫)

★★★★★

枕は落語のイントロ。バイクの車庫に居ついたホームレス、英語留学の顛末、玉子かけご飯まで小三治にかかるとたまらなく面白い。旺盛な好奇心と確かな眼、磨いた話術がくり出す枕は枕を超えた。長短18篇を取り揃えてご機嫌伺います。人生っていいなと心温まる、「まくらの小三治」の真骨頂、お楽しみの程を。

大好きな噺家柳家小三治師匠のまくらを集めた本。
小三治師匠はまくらが面白いことで有名で(私はまくらももちろんのこと小三治師匠の落語が好きで好きでしょうがないのだが)、確かにこれは本当に面白い!爆笑をねらってこれでもかこれでもか!と話をぶつけてくるわけではなく、自分が見聞きしたことや自分が体験したとほほな経験やちょっと困っちゃったことなんかを、こんなことがあってねぇとゆったりと話しているのだが、師匠の落語と同じで大げさなことは何もしなくても人間の面白さやおかしさ、かわいさがにじみ出ていて実に楽しい。

とにかく凝り性で、なにかを好きになると徹底的にはまりこんでいって、どんどん深みにはまっていくところ。
世の中のあれこれに怒りながらも時々プッと吹き出すような面白がりの精神、回りの人たちを斜めから見る冷静さと温かさ。
駐車場物語の面白さといったら!

そして最後におさめられた弟子の襲名の時の師匠の口上の素晴らしさ…。
面白くてあたたかいのにどこか寂しい。どこからどこまでも好きだー!