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DTAL(旧RCEAL)留学記録 RSSフィード

2011-09-11

Eurosla 2011

昨年のレッジョ・エミリアに続き、ストックホルム大学で行われたEuroslaに出席してきました。Language Learning Round TableやDoctoral Workshop、基調講演を含め計40発表を聞いたのですが、文法形態素やL1転移に関する研究も多くあり、楽しめました。コーパス絡みの研究はほとんど見られませんでしたが、こちらは今週後半にLearner Corpus Researchがあるのでよしとします。むしろSLA研究ではコーパスがまだ普及し切っておらず、コーパス言語学者の活躍の余地がある、とも言えそうです。


今回、自分が拝聴したほぼ全ての発表についてツイッターで実況中継を行い、それをここにまとめました。そんなことをするつもりは当初はなかったのですが、特に国際学会の場合はwi-fiが全ての部屋で使える場合も多く、自分用のメモを兼ねて要旨をどんどんツイッターに投稿していくというのは面白い試みかもしれません。惜しむらくは学会中に学会についてツイートしていたのは私の他にもう一人(その方もケンブリッジの同じ研究科所属)しかおらず、参加者間でツイッター上でコミュニケーションを取れなかったことでしょうか。最近ではツイッター上で学会参加者間で意見交換し、その後に(コーヒー休憩などで)初めてリアルで会う、ということもよくあるようです。まあ実際に面と向かって話せということかもしれませんが。


今回特に面白いと感じた発表は以下。

  • タイトル:The L2 perception of inflectional endings in Dutch: The role of L1 background and L2 proficiency
  • 発表者: Loes Oldenkamp@Radboud University, Nijmegen
  • 背景&研究設問:L2屈折接辞の産出技能の研究は多くあるが、受容技能の研究はあまりない。L2屈折接辞を聞き取ることができているのかを見る。
  • 被験者:L1トルコ語、L1モロッコ語、L1アラブ語、L1中国語のL2オランダ語学習者。L2言語能力はCEFRのA1〜B1レベル且つ低学歴。オランダに最低数年は住んでおり、L2教育も受けている(=instructed learners)
  • 課題:picture selection task
  • 対象言語項目:三人称単数vs複数と単数名詞vs複数名詞の二種類
  • 刺激:例えばZe kusteen jongen(単数)とZe kussen een jongen(複数)の対比など(?)。屈折部分を聞き取らないと正しい絵を選択できないようになっている。
  • 結果:
    • 動詞の屈折の正答率が0.326と非常に低かった
    • 熟達度の高い学習者の方が正答率が高い
    • 名詞の複数形の屈折に関して(←少し怪しい)、L1トルコ語とL1モロッコ語>L1中国語
  • 結論:名詞の屈折変化も動詞の屈折変化も理解するのが難しいが、特に動詞でその傾向が顕著。屈折部分と重複する情報がないからではないか。
  • 感想:知覚の顕著さ(perceptual salience)はよく文法形態素習得順序研究の文脈で取り上げられるので興味があるのですが、本研究は学習者が本当に聞けていないことを実証しました。次は音素の数と聞ける・聞けないの関係を知りたいです。


以下、写真を何点か貼ります。


ストックホルムでの最近の流行りは「寿司」。ちょっと歩いただけですが、寿司屋を相当件数見かけました。以下は地球の歩き方にも載っている「三代目 加藤」という店の寿司。日本の(回らない)寿司屋と比較しても劣らぬ美味しさでした。

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学会会場。ストックホルム大学内にあるAula Magnaという建物です。

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市庁舎。ノーベル賞授賞式後の晩餐会・舞踏会が行われる場所です。

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市庁舎内のGolden Hallという部屋。ノーベル賞受賞者の舞踏会を毎年ここで行っているとのことです。

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ストックホルムにある国会議事堂

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スウェーデン料理はサーモンとミートボールが有名ですが、こちらはトナカイの肉。初めて食べましたがなかなか美味しかったです。

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Euroslaは来年はポーランドのAdam Mickiewicz Universityで開催されるようです。今年はタイミングが悪く発表できなかったのですが、来年こそは発表したいです。

GTGT 2012/01/27 08:32 こんにちは。発表内容に関して思ったのですが、正解率の低い人(学力も低い人)は屈折ではない他の問題もできないのではないでしょうか?

学力の低い人はそもそも屈折に注意を払わないかも知れないし、学力のある人も屈折を理解していたのかは疑問です。

詳しく研究発表内容を調べる必要があるかも知れませんが(>_<)

mrkm-amrkm-a 2012/01/27 11:26 紹介した発表では熟達度が高ければ屈折の理解度も高かったとあるので、二者には相関があると思います。相関の程度やそもそもの正解率はL1に影響を受けるでしょうが。

この発表のポイントは、一見容易そうに見える屈折変化も特にL1に対応する項目が存在しない場合に学習者は実際にはそれらを捉えられていない、ということを実証したことにあります。論文になったら是非読んでみたいです。

GTGT 2012/01/27 16:17 うーん、反論を試みるものの慣れていないこともあり、なかなか上手くいきません。

mさんはディベートしたり授業の中で批判眼を身につけましたか?特別に何か練習したりしましたか?

mrkm-amrkm-a 2012/01/27 16:52 何への反論でしょうか。GTさんの最初の段落はその通りだと思いますし、第二段落はちょっと主旨がよくわからなかったのですが・・。

学部時代はESSで英語ディベートに勤しんでいました。

GTGT 2012/01/27 18:17
現状として、ほぼ全ての研究には手法または結論に問題があります。

L1Transferはよく研究されていますが、結果だけでは判断出来ない点が難しい点でもあると思います。


この研究ではどういった手法を用いたのか詳しく知りませんが、屈折が理解出来なければ解けない問題だからといってそれが解けていれば屈折を習得出来ているとは言い難いのかな(特にリスニングという点で)と思います。


逆に全て解ければ屈折を習得しているというのも妥当かわかりません。

先ほどのコメントの後半に関しては、学力が高い子供は屈折に注意を払うことが必要と判断し、そこに注意するかも知れませんが、学力の低い子供はそれにさえ気付かずに屈折には全く注意を払わず聞き逃している可能性があるとは考えられないでしょうか?


これがpaper basedの文法性判断タスクなどではまた異なった結果が出る気がします。

GTGT 2012/01/27 18:24 L1に屈折が存在しない言語話者でも学力が高い話者は屈折に注意するかも知れませんし、L1に屈折が存在する言語話者でも学力が低い話者は屈折への意識が浅く間違える可能性があります。

学力が高い方が成績がよかったというならばこの可能性も現れるのではないですかね…?

mrkm-amrkm-a 2012/01/27 22:56 >屈折が理解出来なければ解けない問題だからといってそれが解けていれば屈折を習得出来ているとは言い難い

すみません、この部分はよくわかりませんでした。解けていても屈折を習得できていないかもしれないとすると、そのタスクが屈折の習得を必ずしも測定していないということになりませんか?タスクの妥当性(用いられたpicture selection taskが捉えているのは本当に屈折変化の理解度なのかどうか)の話はあると思いますが。

>先ほどのコメントの後半に関しては、学力が高い子供は屈折に注意を払うことが必要と判断し、そこに注意するかも知れませんが、学力の低い子供はそれにさえ気付かずに屈折には全く注意を払わず聞き逃している可能性があるとは考えられないでしょうか?

「学力」を知的能力と読み替えると、ありえる話だと思います。ただL1群間で知的能力に大幅な偏りがあったと考える理由もないように思えます。

>L1に屈折が存在しない言語話者でも学力が高い話者は屈折に注意するかも知れませんし、L1に屈折が存在する言語話者でも学力が低い話者は屈折への意識が浅く間違える可能性があります。

そうだと思います。特定のL1群に学力の高い学習者が集中していれば問題ですね。

GTGT 2012/01/28 08:30 mさんの発表ではないのにすいません(>_<)

精進します。。

話は変わるのですが、First class honorってGPAにするとどの位になるかご存知ですか?

3.7という人もいれば3.4という人も...
一年生の頃留学など考えておらず、低い成績をとってしまい四年間でGPAは3.5位にしかならないかも知れません

mrkm-amrkm-a 2012/01/28 11:26 日本の大学にFirst class honorがあるのでしょうか?ケンブリッジ大学の学部は(First class) distinctionなるものがありますが、そもそもケンブリッジ(おそらくはケンブリッジを含む英国の大学)ではGPAを用いないのでGPA換算でどのような扱いになるかはわかりません。確かに国外の修士課程を目指すのであれば学部時代に成績は重要かもしれません。頑張ってください。

GTGT 2012/01/28 11:42 日本ではGPAのみで、class分けではないのでどう判断されるかは監督者に依るかも知れませんね…

mさんのように日本人で世界最高峰の機関で活躍されている方をみると勇気づけられます!

研究頑張って下さい。ありがとうございました。

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