偶然の科学

偶然の科学

偶然の科学


米・ヤフーリサーチの主任研究員であり、物理学をバックグランドに持つ社会学者、ダンカン・ワッツによる著書です。
ワッツは「スモールワールドネットワーク」の研究で著名で、新しい切り口の社会学の先駆者という印象を持っています。


その彼が3年の月日をかけて書き上げた本書ですが、過去に出版されている「常識がもたらすバイアス」に言及する著作に近似した内容で展開されます。
この中の「群と個」については、我々マーケティングに関係する人間にも示唆に富む内容であり、タイポロジーによる分析の限界と有効性や「インフルエンサー」を仮定することの妥当性と有用性について改めて考える基礎を提示してくれたように感じました。


後半は予測に対しての各種研究を通した考察がなされており、表面的な(というと語弊が多いにある気がするのですが)数値の予測の内部に存在するメカニズムについて改めて考える機会を提示してくれています。


特に参考になったのは彼の検証に対するスタンスや手続きであり、この辺りをデータアナリストが読むと自身の分析スタンスと同じことに安堵したり、あるいは「こうした考え方を導入するべきであるな」と気づきも出るのではないかと思います。


最後半は社会学全体に対しての考察を行っており、門外漢の僕にはなかなか吸収しにくいところもあったのですが、彼の熱意が感じられる内容になっています。


やや理解が追いつかない表現もありましたが、数式はまったく出てこないので、読み物として一読の価値はあるように思います。