パブリックコメント(2)

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河かおるさん

 本省令案に反対する。
 本省令案は、「公立高等学校に係る授業料の不徴収および高等学校等就学支援金の支給に関する法律施行規則」第1条第1項第2号に定めた(イ)(ロ)(ハ)の3つの類型のうち、(ハ)の規程を削除するというものである。
 下村文部科学大臣が記者会見等で述べ、報道されているところによれば、本省令案は、(ハ)を削除することにより、朝鮮学校を高校無償化の対象から除外することに目的があるという。
 以下、反対する理由を述べる。
(1)
 私は、高校無償化制度発足時まで遡って朝鮮学校に高校無償化を即刻適用(朝鮮高級学校生徒に就学支援金を支給)するべきであり、その間、就学支援金を支給してこなかったことに対して謝罪すべきであると考えている。従って、この省令案には反対である。
 朝鮮学校に高校無償化を即刻適用すべき理由は、昨年11月15日付に提出した「「高校無償化」制度の朝鮮学校への適用を求める大学教職員の要請書」およびそれ以前にも提出した要請書のとおり。
(2)
 「改正の概要」によれば、現時点で(ハ)に基づき指定を受けている外国人学校については、「当分の間」、「経過措置を設ける」とされている。しかし、現時点で(ハ)に基づき申請を受理し審査中である外国人学校については言及されていない。
(2)-1
 (ハ)を削除した場合、(イ)に定めるような、ある特定の国の在外校や、(ロ)に定めるような、特定の学校評価団体の認証を受けたインターナショナル・スクール以外の外国人学校の存在を想定しないことになる。朝鮮学校以外にも
既に(ハ)によって指定されている外国人学校があるように、日本における外国人学校は(イ)や(ロ)のみで規定できるものでないことは明らかである。
 朝鮮学校は、在日朝鮮人の学校であり、(イ)の想定するような形の、朝鮮民主主義人民共和国の在外校ではない。つまり、仮に日朝の国交が樹立しても(イ)の規定に従って「大使館を通じて…確認」できる外国人学校ではない。在日朝鮮
人および朝鮮学校の存在は、他ならぬ日本が朝鮮を植民地支配したことに歴史的淵源がある。つまり朝鮮学校が(イ)には該当し得ない歴史的背景をもつ学校であることは、日本が一番よく理解しなければならないことである。
 然るに、かろうじて存在していた(ハ)項すら削除し、(イ)や(ロ)の想定する学校のみを外国人学校として扱い、朝鮮学校の存在を無視し除外することは許されない。従って、この省令案に反対である。
(2)-2
 既に指定を受けている外国人学校に対しても、根拠となる条項を削除しておきながら、「当分の間」「経過措置」などとしか示さないことが無責任であることは言うまでも無いが、朝鮮学校に関しても、既に(ハ)に基づき申請を受理し審
査中であるにもかかわらず、審査結果すら出さないまま根拠となる項目自体を削除するなどということは、およそ法治国家の所業とは言えない。従って、この省令案に反対である。
(3)
 「省令案の概要」には、「改正の概要」は書いてあるが、改正の理由や目的が書かれていない。下村大臣が記者会見等で述べ報道されたことによれば、「拉致問題に進展が無い」「国民の理解が得られない」ことを理由として、朝鮮学校
無償化の対象とする根拠となる条文を削除するのが目的であるという。
 「拉致問題に進展が無い」については、そもそも無関係であるものを勝手に関連づけているだけである。「国民の理解が得られない」については、アムネスティ・インターナショナル日本支部が発表した声明にあるように、「国民の理解」の
有無にかかわらず、履行しなければならないのが人権の保障である。
 このような「理由」がまかり通って本省令案が施行されるならば、今後、どのような人権侵害的措置も同じ「理由」によって「正当化」され得るだろう。地方自治体による補助金支給には既に波及しており深刻な問題である。さらには、例
えば同じ「理由」で朝鮮学校卒業生の大学受験資格を再び認定しないという大学が出て来ても、「正当化」されてしまうだろう。
 本省令案は、このように、あってはならない「差別の正当化」そのものであるので、反対である。



中野 敏男さん
高等学校等就学支援金制度からの朝鮮学校の排除を意図した今回の省令改正案に反対します。
高校教育の無償化を実現する就学支援金制度は、そもそも教育を受ける権利を万人に保障した民主主義の基本原理に発してすべての高校生に一律に適用されるべきもので、如何なる政治的理由によってもそれが妨げられてはなりません。それを妨げることは、日本の民主主義の根幹に関わることであり、日本が批准している子供の権利に関わる国際条約の理念にも反することで、民主主義国家の政策としてとうてい受け入れられるものではありません。
また、わたしは大学教員ですが、すでに多くの日本の大学において朝鮮学校出身者を高校教育修了者としてそのまま受け入れ、他の学生と対等に平等に教育が進められている実績があります。それなのに、朝鮮学校だけに就学支援金制度が適用されないとすれば、大学教育における平等性もその前提が否定されることになって、これは大学人としてもとうてい受け入れられるものではありません。
そのような意味を持つ省令改正案を撤回し、就学支援金制度の原点に戻って、長い間引き延ばしになっている朝鮮学校への制度適用を法律施行の当初に遡及して直ちに実施することを求めます。



大田 美和さん
省令改正案に反対します。
 私は東京朝鮮中高級学校を訪問し、授業を見学しました。文化祭にも出かけました。先生も父母も協力して子どもたちのより良い教育の場を作ろうとしている姿に接し、日本の学校朝鮮学校も同じ「学校」だと思いました。
特定のマイノリティのみを除外する省令を作ることは、21世紀のグローバル社会の重要な目標であるダイヴァーシティを認める社会の実現の努力に逆行します。日本の多くの若者(高校生、大学生)も、朝鮮学校が無償化から外されたことを「民族差別」「イジメ」として受けとめており、朝鮮学校はずしが生む弊害は、朝鮮学校の子どもたちや父母や関係者のみならず、日本人の子どもたちにも及んでいます。文部科学省や政府がイジメの先頭に立ってはなりません。
近い将来、朝鮮半島朝鮮民族をはじめとした世界中の人々が自由に行き来できる場所になった時、母語と母国に誇りを持ち、また生まれ育った日本にも愛着を持っている朝鮮学校の子どもたちは、日本をこの地域の平和交流に導いてくれるでしょう。彼らが日本社会で伸び伸びと、経済的心配なく教育を受けられることを願っています。子どもは社会の希望、未来の希望です。日本社会で学ぶすべての子どもが日本社会の将来を背負っているのです。



末永 恵子さん
日本に住むすべての青少年が教育を受ける権利を平等に保障されることを希望します。したがって、高等学校等就学支援金の支給対象から外国人学校を除外することはしないで下さい。



酒井 裕美さん

「高校無償化に関する法律施行規則の一部を改正する省令案」に反対します。
この「改正」は朝鮮学校を排除するためのものであることが明白です。
もともと法律制定時、即時に朝鮮学校にも適用するべきところ、適用を渋りに渋ったあげく、
排除のための法改定を強行しようとするのは、あまりにひどいやり方です。
在日コリアンは日本社会の重要な構成員であり、その子どもたちは民族教育を受ける権利があります。
健全な国家であれば、マイノリティーの子どもたちが民族教育を受ける権利を保障しなければなりません。
在日コリアン形成の歴史的背景を考えれば、日本はより積極的にこの権利を保障するべきでしょう。
それなのに、政府がこのような政策を打ち出すことは本当に残念です。
高校無償化から朝鮮学校が意図的に排除されるとき、
それは同時に日本社会がより健全に、より豊かになっていく可能性、希望をつみとることだと思います。



黒坂 愛衣さん

 この省令案は、実質的に、いわゆる「高校無償化」から朝鮮学校を除外することを目的としたものでありますが、以下に述べる理由により、わたしは本省令案に強く抗議し、反対します。これは明らかな差別政策であり、国際的な批判、それに、将来のわれわれの子孫からの批判は免れられないでしょう。文部科学省は、この省令案に現在向けられている国内外からの批判に、真摯に耳を澄ませてください。この省令案を破棄し、すみやかに、朝鮮学校に通う子どもたちへの就学支援金の支給を開始してください。
 報道によると、下村博文文部科学大臣は先月28日、(1)北朝鮮による拉致問題の進展がない、(2)朝鮮学校朝鮮総連と密接な関係がある、といった点を挙げて、「適用は国民の理解が得られない」として、朝鮮学校の除外を決めました。
●「子どもの権利条約」30条は、「種族的・宗教的若しくは言語的少数民族又は原住民である者が存在する国において、当該少数民族に属し又は原住民である児童は、その集団の他の構成員とともに自己の文化を享有し、自己の宗教を信仰しかつ実践し又は自己の言語を使用する権利を否定されない」としています。日本国内にいる在日朝鮮人の子どもたち、ひいては、朝鮮学校に通う子どもたちが、この30条がいう「種族的・宗教的若しくは言語的少数民族又は原住民である者」であることは、客観的に明らかでしょう。――「子どもの権利条約」は、国際人権規約(A・B規約)で定められた諸権利等を、子どもに広げるものです。そして、1994年のB規約委員会一般的意見23「27条について」は、B規約27条にある「マイノリティ」について、「(締約国の)国民・市民であることを必要とされない」「マイノリティの存在は締約国の決定ではなく客観的基準によって確定される」としています。このB規約委員会の意見に照らせば、朝鮮学校に通う子どもたちが「子どもの権利条約」30条の対象となるのは、明らかなのです。
 日本国は「子どもの権利条約」に批准しています。日本人の子どもたちが自文化のなかで学ぶ権利を保障されているのと同様、日本国は、国内のマイノリティの子どもたち――ひいては朝鮮学校に通う子どもたちが、自文化を享受して学ぶ権利を保障しなければなりません。
 国家のこの責務は、たとえ「国交のない国」にルーツをもつ子どもたちであろうと、あるいは、たとえ「敵国」にルーツをもつ子どもたちであろうと、かわりません。国家間の政治情勢のいかんによって、子どもの権利が奪われるようなことがあってはならないことは、教育を司る省にいらっしゃる方々にとっては自明の理でありましょう。
●近年、日本国内では、朝鮮学校へむけた攻撃、在日朝鮮人にたいする攻撃がますますエスカレートしています。国は(ましてや文部科学省は)、本来であれば、このような国内に存在する民族差別を「なくす」取り組みをする責務があるはずです。それなのに、前述した下村大臣の発言(「朝鮮学校の適用は、国民の理解が得られない」)、および本省令案は、あろうことか、国内でエスカレートしている民族差別を肯定し、それをますます助長するものです。この国の教育を司る省がこのような差別政策を進めることに、わたしは、この国の政治に責任をもつ一主権者として、深い悲しみと怒りを覚えます。
 日本国が批准している「人種差別撤廃条約」第4条(c)条項は、国や地方の当局や機関が人種差別を助長、扇動することを認めない、としています。(日本国は(a)(b)条項を留保していますが、この(c)条項については留保していません。)下村大臣の発言、さらに本省令案は、明らかにこの(c)条項に違反しています。
 以上の理由から、わたしは、この省令案に強く抗議し反対します。どうぞ批判に耳を傾けてくださいますよう、お願い申し上げます。



金 鎮宇さん

 朝鮮高級学校に無償化を適用お願いいたします。拉致問題朝鮮総連など政治問題と、子供たちの健やかな育成とは別次元の問題です。
 現状では、文科省により大学受験資格を有する学校と認められながら、各種学校認可を受けていないため就学支援金の給付対象となっていないブラジル人学校等があります。大学受験においては高校同等と認められるのに、公的支援に関しては高校扱いしないというのは、明らかに法的整合性がありません。朝鮮学校に加え、これら学校を就学支援金給付対象とできるような省令改正こそ行うべきです。



高林 敏之さん

【高校無償化法施行令改正に関するパブリックコメントについて(追加論点2)】
 1月9日に2通の意見を送付した者ですが、座視できない状況が新たに出来していますので、もう1通意見を送ります。
 報道によれば、貴省は11日に発表した2013年度予算の概算要求において、朝鮮学校への就学支援金給付に備えた2億4千万円を要求から外す一方で、市区町村が幼稚園の保育料を軽減している場合に費用の一部を国が支援する補助費を上乗せする要求を行ったとのことです。
 そもそも、本件省令「改正」案に対するパブリックコメントの公募期間も終わっていないというのに、朝鮮学校除外の結論ありきの概算要求を行うとは、国民を欺き、朝鮮学校の子どもたち・保護者・教職員・運営者を愚弄するものです。このパブリックコメントは「意見を聞いた」という単なるアリバイ作りのために実施しているのですか?
 幼稚園の保育料等が高額で、保護者たちから補助金上乗せの切実な声があることは、私も保育運動に関わる父親として承知しています。
 しかし、それならば幼稚園への補助金増額も、朝鮮学校の生徒に対する(他の各種学校認可を受けた外国人学校と同様の)就学支援金給付も、ともに要求するのが文部科学省の仕事ではないですか?衆知の通り、日本の教育支出はOECD諸国中最低レベルです。教育予算全体の大幅アップを堂々と要求することが、文部科学省のなすべきことではありませんか。
 自民党は「保育園への助成が手厚すぎる」として、保育園と幼稚園との対立を煽るような言説を繰り返してきました。その自民党が政権に復帰した後のこの概算要求で、今度は朝鮮学校に幼稚園を対立させようとしています。
 本件省令「改正」案は前の意見で述べた通り、ただでさえ法的整合性がなく、国際人権諸条約の規定にも関係人権委員会の勧告にも反した、世界に恥ずべき差別法令案です。これに加えて、日本に暮らす子どもと保護者同士の「パイの取り合い」を煽ることは、子どもの健全な教育にとってマイナス以外の何物でもありません。
 子どもを分断し、政治の道具とすることは止めてください。



板垣竜太さん

 いわゆる「高校無償化」制度に関する省令の「改正」案に反対します。
 欧米を中心に広がる「イスラーム嫌悪(Islamo-phobia)」にも相似した「北朝鮮嫌悪(NorthKorea-phobia)」にともなう日本社会の排外主義的な感情を抑制する努力をするどころか、むしろ日本政府自らが朝鮮学校のみを意図的に「高校無償化」制度から排除するのは、国の主導するレイシズムとして国際的にも厳しく批判されるべきことです。実際、「高校無償化」法案が成立する直前の2010年3月に開かれた国連人種差別撤廃委員会は、「一部の政治家が朝鮮学校の排除を提案していること」に懸念を示す文書を発しました。まさにその懸念どおりのことを、日本政府自らが行おうとしているのです。
 今回の省令案は、条文の一項目を削除するものですが、これは外国人教育・民族教育をめぐる基本方針の大きな変更です。そもそも「高校無償化」制度は、いわゆる一条校に限らない様々な形態の後期中等教育に相当する教育課程に通う生徒らの就学を支援するように制度設計されています。外国人学校においては、(イ)項を通じて「本国」をもつ民族系の外国人学校を支援の対象とし、(ロ)項を通じて「本国」の有無に関係なくインターナショナル・スクールを支援する枠組を構築しています。さらに、それ以外の形態の外国人教育・民族教育の後期中等教育課程に対しても支援の対象に含め得る道を開いたのが(ハ)項でした。実際、朝鮮学校の審査は不当に滞っていたものの、この間、2つの外国人学校が(ハ)項を通じて支援対象に指定されました。(ハ)項そのものを削除することは、「本国」と日本との間に外交関係がない、またはそもそも「本国」がない民族教育は支援しない、というポリシーを日本政府が積極的に選択したことになります。これは言語・文化を中心とする(少数)民族教育を重要視する近年の国際的な動向に全く逆行するものです。
 昨年、日本政府はようやく国際人権規約の中等・高等教育の漸進的無償化条項の留保を撤回しました。その対象から朝鮮学校だけを意図的に外すことは、同じ国際人権規約で定められた民族教育の権利という観点からすれば、日本政府が新たな人権侵害を作り出したことを意味します。2010年から高校段階の年齢の子どもをもつ親の特定扶養控除が廃止されましたが、こちらの方は朝鮮学校高級部に子どもを送る親にも「平等」に適用されていることを合わせて考慮すれば、日本政府による排除の姿勢の問題性は一層鮮明になります。
 (ハ)項削除案を速やかに撤回するよう強く求めます。



浅野健一さん

 下村博文文部科学相安倍晋三首相の指示を受け2012年12月28日、朝鮮学校への高校授業料無償化を適用しないと表明した。文科省朝鮮学校への無償化適用を除外するため、省令を改定するという。この省令改定は、朝鮮学校を名指しはしていないものの、朝鮮学校を指定の対象外にすることだけを目的にした前代未聞の改悪である。
下村氏は、日本人拉致問題で進展がなく、朝鮮学校の人事や財政に在日本朝鮮人総連合会の影響が及んでいることなどを理由に挙げた。文科相は会見で「子どもには罪はなく民族差別をするわけではない」と説明した。文科相はまた、朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)「国交回復」がなされれば提供対象にするとも述べた。
朝鮮学校に通う生徒たちは日本が朝鮮を植民地支配していた時に日本に渡ってきた人たちの子孫(2〜5世)で、日本に生まれ育った市民で、拉致問題に何の関係もなく、国交がないことにも何の責任もない。日朝間に国交がないのは、日本が敗戦後、朝鮮半島の北半分の政府と人民に謝罪と補償をしていないからだ。
高校無償化法は10年4月に執行された。法の施行から2年9カ月もたってから、省令をいじることができるのか。省令といえども法律であり、特定の学校、生徒を狙い撃ちした改定は、普通の国の「法の支配」に反している。
前政権は審議会で朝鮮学校を対象に含めるかどうかの審査中だという理由で、引き延ばしてきた。前政権は、政治・外交問題とは切り離して審査しているという説明をしていた。
無償化が始まってから、朝鮮学校で無償化の対象から外された卒業生は既に2回出ている。この措置で、今の3年生も無償化の対象から外れ、13年3月には3年目の卒業生になる。
生徒たちが裁判を起こす動きもあったが、文科省が審査中だということで提訴を踏みとどまってきた。今回の措置はそうした経緯を無視した人権蹂躙だ。
私の勤める大学には朝鮮高校の卒業生が多数学んでいる。大阪朝鮮高校はラグビーの第92回全国高校ラグビー大会に出場して善戦した。京都朝鮮高校も全国高校サッカー大会に出場したことがある。日本では様々な分野で高校と認められている。
私は東京で9月に開かれた在日本朝鮮青年同盟などの主催した日朝青年ドリームフェスタで、東京朝鮮高級学校の3年生の女子生徒が「どうして私たちを差別するのか。日本に生まれ日本人と仲良く暮らしたい私たちを特殊視するのか」と語っていた。当時は「適用の可否を審査中」で、これまで卒業生が2年連続で、無償化の適用のないまま卒業している。彼女は3年目の卒業生になる。
東京朝鮮高級学校3年生の女子生徒は周囲から「補助を受けたいなら日本の高校へ移ればいいではないか」ともよく言われるという。元生徒の男性は「11年3月に卒業した一番上の学年の先輩は、無償化問題で解決できないでごめんね」と後輩に言って卒業したと打ち明けた。
 私は11月、学生と一緒に京都朝鮮中高級学校の授業を見学した。その日に出会った生徒、教員は心を深く傷つけられたと思う。
 朝鮮学校には朝鮮籍の生徒のほか、韓国籍日本国籍の生徒も通っている。
下村文科相は「子どもに罪はない」「民族差別ではない」というが、朝鮮高校の生徒たちに会って話を聞いてほしい。
今回、文科相に指示を出した安倍氏は2002年9月に日朝平壌宣言の際、官房副長官として小泉純一郎首相の隣にいた。宣言を履行するよう努力する義務が安倍氏にはあるのではないか。
小泉首相は東京都内で04年5月28日から2日間東京で開かれた朝鮮総連第20回全体大会に自民党総裁として初めて祝賀メッセージを送り、在日朝鮮人の差別をなくすために努力すると述べている。佐田玄一郎筆頭副幹事長が代理出席して代読した。
朝鮮学校在日朝鮮人が民族教育、言語・文化の継承のために設立した学校で、朝鮮政府や朝鮮総連が支援してきた。国からは一円の支援もないが、大阪などを除いてほとんどの自治体が補助金を出している。小泉氏は二度目の訪朝の際、「拉致が起きたのは国交がなかったからだ」という趣旨の発言を記者団にしている。日朝関係を「敵対から友好に」「対立から協調へ」と呼び掛けた。
前政権時代に朝鮮に残る日本人遺骨問題などを契機に局長級会談が実現し、対話の機運が生まれていた。
下村文科相は「朝鮮学校への無償化適用に国民の理解が得られない」とも言っている。国民の現在のような世論は誰が創ったのか。
日本が朝鮮の人々に対し1905年から1945年まで行った加害行為を、なかったことにして、1945年から今日まで米韓と組んで朝鮮を威嚇、脅迫してきたことへの自問もない。アジアの人たちがなぜ日本の軍国主義の復活を警戒するのかに想いをはせない日本国と日本人は東アジアで孤立を深め、世界の敵になるだろう。



藤永壯さん

朝鮮高級学校生徒を「無償化」の対象から排除しようとする今回の省令案に反対します。
報道によると、下村文科相は、今回の措置について「子どもに罪はなく、民族差別でもない」と述べたそうですが、ごくシンプルに考えて、日本の学校や他の外国人学校には「無償化」を適用し、朝鮮学校のみ不適用とすることが、差別でなくて何なのでしょうか。
また下村文科相は、朝鮮民主主義人民共和国に対して、「拉致や核、ミサイルの問題を解決し国交正常化に努力してほしいというメッセージにもなる」と述べたそうですが、「無償化」は教育の機会均等を保障するための制度であり、政治・外交問題と結びつけるのは筋違いです。あえて言えば、日本政府はこの間、朝鮮船籍船舶の入港禁止や輸出入禁止などの、いわゆる「制裁」措置を取ってきましたが、こうした強硬政策が上記のような政治・外交問題の解決に全く効果がなかったことを踏まえ、むしろ朝鮮民主主義人民共和国との関係を改善する方向へ政策を転換するべきなのです。
さらに今回の省令案は、朝鮮高級学校生徒を「無償化」の対象から除外する手段として、交付のルール自体を変更しようとしているわけですから、一言で言って卑劣と言わざるをえません。大阪に住む私たちは、すでに朝鮮学校をめぐって同様の「掟破り」を経験しています。大阪市は2012年3月、大阪府の決定に追随して朝鮮学校への補助金停止方針をまず決定し、そのために補助金交付要綱を駆け込み的に改悪して、遡及的に施行しました。こうして補助金申請は前年9月に行われていたにもかかわらず、事後のルール変更で朝鮮学校に対する補助金が停止されてしまったのです。今日の日本は、中央政府地方自治体も、朝鮮学校を排除するためであれば、手段を選ばないということなのでしょうか。これでも朝鮮学校に対する差別はないと言い張るのでしょうか。
こうしたことから私は、今回の省令案が朝鮮民主主義共和国に対するメッセージとなるどころか、むしろ「朝鮮学校は差別されて当然」というメッセージを日本社会に発信する効果を生むであろうことを、深く憂慮しています。日本社会に蔓延する在日朝鮮人への差別意識に政府が「お墨付き」を与え、在日朝鮮人児童・生徒に対するより深刻な人権侵害事件が発生するかも知れない危険性を、政府はいかばかり認識しているのでしょうか。
最後に、下村文科相は朝鮮高級学校への「無償化」適用は「国民の理解が得られない」と述べたと伝えられましたが、教育の機会均等実現や民族教育の保障は、憲法その他の国内法規や国際人権法に定められ、政府として実行しなければならない義務であり、「国民の理解」を口実とする「正当化」は許されない事案です。在日朝鮮人をはじめとする在日外国人も、日本人と同等の納税の義務を果たしているのですから、当然、日本人と同等の教育を受ける権利を有しているはずです。今回の朝鮮高級学校を「無償化」から除外しようとする省令案は、それこそ「納税者の理解を得られない」改悪案にほかならないと考えます。
以上の点から、省令案に改めて強く反対し、撤回を求めます。



庄司俊作さん

安倍新政権が「高校無償化」制度を朝鮮学校に適用しないことを決定したことに関して、意見を述べます。
「高校無償化」の問題と拉致問題の解決等は、別の問題です。政府が決定した方針は、それを混同し、教育行政において旨とすべき公平さを逸脱するものであり、許されることではありません。
「高校無償化」については、日本に住む対象者すべてに等しく適用されるべきです。



匿名

この省令案は一部のマイノリティの子供たちの教育を受ける権利を制限する、差別的政策であり、認められない。
憲法にも国際人権条約にも違反している。
政治的または外交的問題と、国内の弱い立場にあるマイノリティに対する政策を結びつけて考えること自体不当である。このような国際情勢下でも、人権は保障されなければならないことを、(国民の理解が得られないことを言い訳にせず)国民に周知させる責務があるのではないか。