don't think , be crazy

今年の後半は怒涛

夜、吉祥寺のバウスに「pina/Dance,dance,otherwise We are lost」を見に行く。春に観ているので二回目。始終ブレてるような気がしたが、3Dグラスが合わないのか、スクリーンが平坦だからか、自分の視力のせいか。条件反射もあり、はじまって10分くらいの「春の祭典」の音が良すぎてやはり泣いてしまう。この音楽を世界で初めて聞いたひとの気分にこの音楽を聴いたときはいつもなってしまう。同様に、この映画の冒頭でのこのシーンでは、ブッパタールのダンサーが初めて「春の祭典」を振付・演出された時の「これやるの!?信じられない!」って気持ちと、過去に、初めてこの演目を見た観客の「まじで!?信じられない!」って気持ちになってしまう。クレイジーだ。こんなクレイジーなものをあんな静かな人が。

その昔、わたしの踊りの先生の練習場に、彼女が来たときに運悪くわたしは休みだった。日本の民俗舞踊を教える先生はじめ生徒たちも、「日本のトラディショナル・ネイティブダンスを見学に来た、静かなドイツの女の人」が何者なのかを誰も知らなかった。あとで母から「あんたピナバウシュって知ってる?今日きてたわよ」と聞かされて愕然としたものだ。よく、お釈迦様が老人に化けて試すとか、黄門様が身をやつしてとか、そういう話かと思った。後から先生に、「姿勢が良くて、非常に物静かで、なんともいえない悲しいものがあるんだけど、猛烈な芯の強さを感じさせる、美しい人であった」と聞かされて、そのまんまなんだなと思った。先生は後から、彼女が長年のパートナーと死別れた直後であったことを聞かされて納得したと。「目が動物みたいだった。馬の目みたいだった」って言ってたっけ。自分はこの時、世の中には、精神と身体が一体化している人間って本当にいるんだと思った。

そのまま居残って、去年のフジロックのをほとんどそのまま(あとちょっとのファンタジーと悪い冗談も混ぜて)撮った、ケミカル・ブラザースのドキュメンタリー「DON'T THINK」も観ていく。わたし何の前情報もなかったから「五感メインのは前に客席の無い席」主義にのっとって、一番前の、やんちゃ男子グループの端の席にお邪魔したのだが、これが、始まると同時に「っ待ってましたぁ!!」とばかりにスタンダップ&ダンシンになって、後ろを振り返ると観客の9割がたが同様に立ち上がって踊り狂ってるという驚くべき光景になった。クラブで体感する、体への圧力がぶるぶる変動する全身マッサージプールみたいな、巨大スピーカでの音響空間で、視覚からの情報がPVと国内の野外フェスのミックスで、しかも軽めのドラッグで悪酔いした女の子の頭ん中までを見せてくれるというサービス精神旺盛な時間だったので、一滴もアルコールの入っていない自分は無念ながらも完全にサーカスのバスに乗り遅れた気分に。でも、客席のスクリーンへの信頼度の高さったら、映画にかかわりのある人なら誰もが一瞬でも泣いてしまいそうなほどだった。こんなにフルに入った観客が我先に楽しんでる館内って、むかし働いてた古い映画館で正月に寅さんもしくは座等市シリーズかかる時か、ムンバイの映画館でダンスシーンに熱狂のヤングインディアン達しか見たことない。踊らにゃ損なので損をした気分だ、メルド。今春からの2回目だったので、すでにそういうゆるいルールは出来上がっていたらしいが、自分は、まん前でめちゃくちゃ楽しそうに踊ってる女の子に足を踏み潰されないようにと膝を抱えて、ケミカルブラザースが嫌いなひとなんてそりゃいないよとか思いながら、ガムと苦虫を噛み続けた85分だった。i couldn't to think 畜生!