PPM
PPM(Product Portfolio Management)とは、市場占有率と市場成長率の指標から、自社の事業がどの位置に置かれているかを分析し、さらに投資するか、撤退するかなどの意思判断の材料として使うツールである。
+---------------+------------------+ 高 | 花形 | 問題児 | CIF(Cache In Flow):収入 | (Star) | (Problem Child) | COF(Cache Out Flow):支出 市 | | | 場 | CIF++ COF-- | CIF+ COF-- | 成 |---------------+------------------+ 長 | 金のなる木 | 負け犬 | 率 | (Cash Cow) | (Dog) | | | | 低 | CIF++ COF- | CIF+ COF- | +----------------------------------+ 高 相対的市場占有率 低
横軸は市場成長率で、上にある事業は高いの方が高い成長率をあらわす。縦軸は相対的市場占有率で、左側の方が高い占有率を表す(通常、真ん中が1で、左側はシェアNo.1であることをあらわす)。
過去の家庭用ゲーム機市場について考えてみよう。
ファミコンが花形
+---------------+------------------+ 高 | 花形 | 問題児 | | | | 市 | ファミコン | カセットビジョン| 場 | | セガSG-1000 | 成 |---------------+------------------+ 長 | 金のなる木 | 負け犬 | 率 | | | | | | 低 | | | +----------------------------------+ 高 相対的市場占有率 低
振り返ると、家庭用ゲームと言えばファミコンだったが、別にゲーム機はファミコンだけではなかった。いくつかあるゲーム機がNo.1になろうと争っていた。問題児は、No.1を奪うために多くの投資(COF)が必要であるが、花形でもNo.1を守るために多くの投資(COF)が必要となる*1。性能、使い勝手、ソフトの面で上回るファミコンがシェアNo.1をとっていた。なお、この当時は、キンニクマンやハットリ君といったゲームソフトでさえ、100万本ヒット(多分)という、かなりの高市場成長率であった。
ファミコンが金のなる木、スーファミが花形
+---------------+------------------+ 高 | 花形 | 問題児 | | | | 市 | スーファミ | PC-エンジン | 場 | | | 成 |---------------+------------------+ 長 | 金のなる木 | 負け犬 | 率 | | | | ファミコン | カセットビジョン| 低 | | セガSG-1000 | +----------------------------------+ 高 相対的市場占有率 低
ゲーム機市場が落ち着いてくると、もう他社は改めて参入しようという気は起きなくなる(市場成長率が下がると旨みが少ないため)。この時期が「ファミコン」にとってはおいしい時期である。新たな投資(COF)は少なくなり、収入(CIF)だけが多くなる。負け犬はもう撤退するしかない。
金のなる木を持つ企業も、ただ待っているだけではダメで、新たな市場(次の金のなる木)を求めて、新製品を投入していく(新事業を立ち上げる)必要がある。性能の上がったゲーム機市場でも任天堂のスーファミの一人勝ちであった。
プレステの躍進
+---------------+------------------+ 高 | 花形 | 問題児 | | | | 市 | プレステ | 3DO | 場 | | サターン | 成 |---------------+------------------+ 長 | 金のなる木 | 負け犬 | 率 | | | | スーファミ | PC-エンジン | 低 | | | +----------------------------------+ 高 相対的市場占有率 低
ゲーム市場の低迷
+---------------+------------------+ 高 | 花形 | 問題児 | | | | 市 | | | 場 | | | 成 |---------------+------------------+ 長 | 金のなる木 | 負け犬 | 率 | | キューブ | | プレステ2 | X-Box | 低 | | ドリキャス | +----------------------------------+ 高 相対的市場占有率 低
32bit機戦争などいろいろあってその後、現在はゲーム市場は低迷している(市場成長率低い)。既に庶民の娯楽はゲームだけでなく、以前のようなウハウハはもうない。新たな市場開拓として、携帯、ネットワークゲームの開発などに各社凌ぎをけずっている。
と、ゲーム機市場を例にとってみた。まあ、本当にそれ花形?とか、ゲームボーイは?とか、時代がちょっとずれてるとか、いろいろ異論反論ありそうですが、説明のために単純化するとこんな感じかなぁ。製品(というより事業)は、うまくいくと問題児→花形→金のなる木という道を歩む、失敗すると問題児→負け犬という道を歩む。もちろんNo.1だけが利益があるわけではなく、みんながNo.1を目指す戦略を取るわけでもないが、PPMを利用すると、自社の事業がどのような立場におかれているかを分かりやすく表すことができる。指標が市場成長率と相対的市場占有率だけというのもナニですね、ということでもっといろいろ含めた、ビジネス・スクリーンという少しマイナーな手法もあるらしい。