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裏取りは基本的にしてません。しない、できない、やる気がない。

2008-11-03

[][]張嶷

Wikipedia:張嶷

張嶷(ちょうぎ、? - 254年)は、中国後漢末期から三国時代にかけての、蜀漢の武将。字は伯岐。巴郡南允国の人。張瑛・張護雄の父、張奕の祖父。演義では、何故か張疑(擬)(ちょうぎょく)となっている。または張儀とも記されるという。

はじめ「ちょうぎょく」だったのにルーツ君が勝手に「ちょうぎ」に変えちゃってる。ルーツ君は正史が「ちょうぎ」と読ませているからと言ってるけど、もちろんデタラメで、正史(および裴注、集解)にそのような読み(ぎ=Yi2)の指定はない。

名が「嶷」、字が「伯岐」で、どちらにも「山」が含まれてるので山名にちなんでいるように見えるが、嶷山は荊州にあり、岐山は雍州にあり、まったく相関がない。山名にちなんでいるわけではないのだ。

「嶷」には高いという意味があり、「岐」にも高いという意味があり、じっさい「岐嶷」という言いまわしもあって、その場合「嶷」の読みは「ぎょく」(=Ni4)。けっきょく、かれの姓名は「ちょうぎょく」と読むほうが妥当だろう。

ところで南允国ってのは南充国の誤り。「張疑」「張擬」「張儀」の出所は不明。そもそも『演義』にはさまざまに版本があって、どの版本でそのような表記になっているかを明記しないと無意味。『演義』にいちいち読みの指定があるとも思えないから、ルーツ君の手にした訳本にそのような誤植とルビがあったということじゃないか。

nagaichinagaichi 2008/11/03 23:38 「二流の将軍」とか「一流の将軍」とかも誰の感想でしょうね。
僕も最近ルーツ君の書いた記事を見つけては直してるんですが、本当にどうしようもないですね。Wikipediaの方針からみると本当はよくないんですが、ひどいものについては大幅に改稿してます。小手先の改変でどうにかなるレベルじゃないですし。
あーがっくしですね。

mujinmujin 2008/11/03 23:45 ああ、そうなんですよね。事実認識もまずいんですが勝手に価値判断を下しちゃってることも多いですね。しかしそれにしてもこういう根拠のない記述を可能にする脳内の機序がよう理解できんわーなのです。

あわわあわわ 2008/11/04 00:24 今、ちくまの訳本(文庫本の方)みたら、「ちょうぎ」とふりがなされてますよ。
ちくまの間違いでしょうか?。

mujinmujin 2008/11/04 00:28 ああ、それは訳本のルビの間違いということでいいと思います。あと劉廙を「りゅうよく」と読んでるのもよくないと思います。字から判断すると「りゅうい」ですね。

あわわあわわ 2008/11/04 19:36 あっ!そうなんですか!。
って事は、ルーツ君はちくま読んで「絶対な確信」を抱いて編集した可能性もありますね。

時に、「張儀」って表記は確証とは行かないんですが、陳舜臣の小説がそうなってた気がします。(たぶん誤植と思います)

nagaichinagaichi 2008/11/04 23:06 たしかに「張儀」ありますね。
陳舜臣『秘本三国志』より
南征軍の参謀長は、夷陵で戦死した馬良の弟の馬謖であった。李恢、馬忠、張儀といった新しい世代の将軍が、この南征で小手しらべをすることになった。

mujinmujin 2008/11/04 23:44 おお、ついに出所に行きあたりましたね。あの情報量の乏しいなかよく探しあてたもんです。しょうじき脱帽です。それにつけてもルーツ君の罪の深さよ(笑)。

あわわあわわ 2008/11/05 00:54 「秘本三国志」でしたか。よかったぁ、間違ってたらどうしようかとヒヤヒヤしてました。(何せ相当昔に紛失したもんだし…)

nagaichiさん、フォローありがとうございました。

読んだ当時は「張儀って誰じゃらほい?」と戸惑ったものでした。

goushugoushu 2008/11/05 04:52 恥ずかしながら私はロクに調べもせずに適当に「ギ」と読んでおりました。百姓読みというやつですね。
せっかくなのでちょっと調べてみましたが、岐と嶷の関係については、詩経の大雅・生民に「克岐克嶷」という句が出てきますので、典拠としては詩経のほうがいいかも知れません。ちなみに詩経の解釈では毛伝・鄭箋ともに「幼くして聡明なさま」と解釈しているようです。また『經典釋文』にはきっちりと「魚極反」と音注されています。
なお、私がみた字書では嶷をギョクと読む場合のピンインは「ni4」となっております。

たけたつるたけたつる 2008/11/05 06:14 『演義』の版本8種について検索かけてみると、「張疑」に作るのは鍾伯敬本に7箇所、李漁本に1箇所ありますね(あくまで電子テキスト検索の結果なので割引は必要ですが)。ただし、両者とも「張嶷」に作る箇所の方が圧倒的に多いです。通行本(毛宗崗本)もすべて「張嶷」に作るので、邦訳も「張嶷」で統一されているはずですがね。
嘉靖本・葉逢春本といった古本とされるテキストに「張疑」の例は無いので、鍾・漁各版刊刻レベルでの誤刻だと思われます。

発音について興味深いのは、古本とされる葉逢春本で「張巍」に作る箇所が2箇所あること(他の7種は無し。ただし、葉の系統を引く本はデータベースに含まれていないので、その系統には存在している可能性が高そう)。これだと「チョウギ」と発音していることになりますね。
しかし、「支」韻と「微」韻を通用させるのは元以降の現象だと思われるので、これを証拠に発音を確定させるのはムチャ。

どうでもいいけど、「張疑」だったら「チョウギ」どう頑張っても「チョウギョウ」としか読めず、何で「チョウギョク」になるのかも謎ですね(苦笑)

mujinmujin 2008/11/05 08:13 > goushuさん
ルーツ君の場合はただ単に「ちょうぎ」と読んだというのではなく「ちょうぎょく」という読みを積極的に否定してるところが問題なんですよね。
『詩経』大雅は『康煕字典』からも引かれてますね。この字典では音魚力反、鄂力反とありました。聡明さというのはけっきょく知力の高さを言うわけですね。もう一つ徳の高さだとも書いてありました。
そう、それでピンインの件なんですが、わたしの手元の小学館『新選漢和辞典』もNi4になってるんですよ。それでこのエントリも最初はそう書いてたんですが、しかし魚からどうやってNを抽出できるのか…というわけで誤植と判断してYi4に改めたんですよ。しかしこの辞典は誤植が少ないのであれからずっと疑問になってたんですよね。だとしてもNの根拠が分からない……。

> たけたつるさん
山名としての「嶷」はもともと「疑」というところから来てるらしいですから、版本の作者が「ぎ」と読んでいたらこれは自然な変化ですね。
「張巍」と作る例はほんとうに興味深いお話で、音韻の変化もそうですし、もう一つは筆者が字義を「高い」と解していたということにもなりますね。

しかしここのコメント欄レベルたけぇー!

殷景仁殷景仁 2008/11/05 21:10 「嶷」の入声読みですが、平声に相配される「凝」(反切は「魚陵切」、どちらも声母は「疑母」です)が、現代の普通話では「ning2」となるので、「ni4」と読むのは別に変ではありません。

mujinmujin 2008/11/05 21:13 なるほど。勉強になります。戻しました!

殷景仁殷景仁 2008/11/05 21:18 なお、「疑母」の中古音における復元音は、大体の場合「ŋ」なので、鼻音が残っている場合には、「n」の音が出てくるのではないかと思います。

mujinmujin 2008/11/05 21:33 へぇ、中古音までさかのぼるんですかね。とすると「ぎ」と読む場合でも「ŋ」が絡んでくるのかな。ルーツ君から中古音まで発展しちゃいましたね。すごい。

殷景仁殷景仁 2008/11/06 00:03 まあ音韻学的には、(ほかにも「逆」や「牛」などもそうですが)「疑母」を持つ字の一部が現代の普通話などで「n」となるから、「ŋ」と推測される、というのが正確なのでしょうね。
あと「嶷」は平声の発音でも「疑母」ですね。

mujinmujin 2008/11/06 02:08 お、ということは「ちょうぎ」の場合でもNi2で頭がNという理解でよろしいですか?

goushugoushu 2008/11/06 02:30 言葉の変化は数学みたいに杓子定規にいかないのが難しいところで、「嶷」を「ギ」と読む場合は「疑」字の仮借とみなされているようなので「疑」と同音の「yi2」でいいと思います。
なお、別にルーツ氏を擁護する意図はありませんが、『集韻』や『經典釋文』によると「疑」の字に「ギョク」(嶷と同音)という発音があるようです。

mujinmujin 2008/11/06 06:45 そうですね、なかなか杓子定規にこれこそとはいかない。なるほど、とすると揺れはあるもののおおむね疑はYi2、嶷がNi4というところで落ち着きそうな感じでしょうかね。

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