まみ めも

2018-11-13 のりものづくし

地元でいきつけだった店に洋風カツ丼というメニューがあった。つぶだったごはんにとろりと光るつゆがかかっていて、うす焼きの卵がオムライスのようにかぶせてあり、その上にトンカツ、ソースがかかっている。その洋風カツ丼が好きで、その店ではそれ以外のメニューをほとんど食べなかった。いつのまにか店のオーナーが変わったとかで洋風カツ丼はメニューからなくなり幻のお皿になってしまった。記憶の中で正体不明のつゆをまとった黄色いまんまるのひと皿が神格化されていく。久しぶりに洋風カツ丼のことを思い出したらいてもたってもいられなくなり、つくってみることにした。ごはんに、めんつゆとケチャップに少し甘みを足したつゆをかけ、卵をかぶせた上にうすく叩いて揚げたチキンカツ、ソースはケチャップとめんつゆ。近い、けれどけして本物には触れられない。記憶のなかのお皿はUFOのようにもはや本物を食べても到達できない領域にとんでいってしまった。でもまた作ろう。

のりものづくし (中公文庫)

のりものづくし (中公文庫)

ト。

汽車による初めての大移動、娘と乗った新幹線札幌チューリヒ市電の違い、ヒマラヤで出会った頼れる愛馬…。池澤夏樹が、バラエティ豊かな乗り物と旅の思い出を綴ったエッセイ。『Harmony』他掲載を文庫化

仕事の往復以外にどこにもいけない毎日のかわりに、池澤夏樹が遠いところへ連れていってくれる。ヒマラヤだって、南極だって。自分の思い出深いのりものは、金沢までの夜行列車、パリの移動遊園地の観覧車、ラ・リューヌの登山鉄道

2018-11-07 見知らぬ町ふしぎな村

すこし肌寒くなってきて着るアニエスベー花柄の中綿ジャケットがうれしい。ちょっと着ぶくれてださい感じがいいと思っている。気分としては初恋がきた道のチャン・ツィイー。しかし髪の毛は三つ編みのおさげではなくぼさぼさのショートカットで、こちらは気分としてはニキータアンヌ・パリローで、全体としては支離滅裂なことになっているかもしれない。ぼさぼさなのはほんとうの無造作だからで、このまま永遠にドライヤーをちゃんとあてられないままぼさぼさ頭でやっていくのだと思う。

見知らぬ町ふしぎな村 (安房直子コレクション)

見知らぬ町ふしぎな村 (安房直子コレクション)

ト。

洋吉はレストランの主人です。急にお父さんが亡くなり、そのあとを継いだのですが、お店の味の秘密を全く知りませんでした。そこに、コック姿の小人が現れ、洋吉の舌に魔法をかけてくれたのです。この「魔法の舌」のほかに「べにばらホテルのお客」「天の鹿」「あるジャム屋の話」「鳥にさらわれた娘」など14編の物語が収められています。

魔法をかけられた舌

空にうかんだエレベーター

ひぐれのお客

ふしぎな文房具

猫の結婚式

うさぎ屋のひみつ

青い花

遠い野ばらの村

秘密の発電所

オリオン写真館

海の館のひらめ

ふしぎなシャベル

海の口笛

南の島の魔法の話

だれにも見えないベランダ

「まほうをかけられた舌」のこと

「海の館のひらめ」のこと

一冊のノートのこと

今年の読書で一番の出会いは安房直子だと思っている。平成最後に出会う、昭和感ぷんぷんのお話たち。でも時代がどんなに先にいったって、新しいさわやかな切なさを胸に運んできてくれる。

2018-11-05 青空のむこう

ぱっとしない体調を引きずったまま、10月がおわってしまった。気がつけば長引く風邪から副鼻腔炎になり、味と香りがすべてにおいて7割引きになっている。体がどんよりするのでさっぱりしたものがありがたく、オールブランヨーグルトをかけてひと晩冷蔵庫にいれておき、はちみつとフルーツをのせて食べている。朝と昼はいいけれど、夜はたべてもあとから気持ち悪さがあがってきて吐いてしまう。朝は相変わらず早く家を出る日々。遊歩道のわき道にたわわにみかんの実っている木があって、小鳥たちがつつくに任せてある。その木からみかんをひとつ泥棒して、たべたら、ぶるっとするようなすっぱさがよかった。甘いみかんももちろんいいけれど、走りの時季のすっぱい硬いみかんが好きだったりする。みかんの木が庭にあればとおもう。

青空のむこう

青空のむこう

ト。

「この世」に思いを残したまま死んだ少年が、「この世」にゴーストとなって戻ってくる。友達、家族に思いを伝える術がなかったが、最後に奇跡が起きて「あの世」に旅立ってゆく。

「スノードーム」のアレックスシアラー作品を、久しぶりに。あの世に関する話は、どうやらファンタジーには求めていないのだった。横尾忠則とか美輪明宏みたいに、実体験として語られるあの世に惹かれる。アレックスシアラーがあの世について考えている実感の強度が足りないのかもしれない。ほんとうのことは知らないけれど、横尾忠則美輪明宏体験に疑いが混じらない、その混じりけのなさに魅力がある。

2018-10-30 私の本棚

闘病中の父が敗血症のショックを起こしたしらせが入り、仕事をお昼でしまいにして慌ただしく帰省した。24日。こどもたち三人をお迎えして身支度して新幹線に乗り込んだらどっとくたびれて、つぶ入りのみかんジュースを飲みほしたあとは座席にもたれてうとうとした。いっときは血圧が50まで下がったらしいけれどなんとか持ちこたえてくれた。金曜のかがやきでもどり、土曜は保育園の運動会。ふくちゃんが保育園さいごのリレーでアンカーを走った。声を枯らして応援。いい走りを見せてくれた。ごほうびにロイホでお昼をした。生ハムのサラダとオニオングラタンスープ、ガーリックトースト。食後にあったかいココア

私の本棚 (新潮文庫)

私の本棚 (新潮文庫)

ト。

本棚は宝物、憧れ、宇宙。そしてほんとに厄介-。新居の本棚を作るにあたり蔵書全ての背幅を測った小野不由美、未来の本棚を想像する椎名誠ら、23人の読書家が綴った本棚にまつわる話。『yom yom』掲載を単行本化。

すべての本を一列に並べよ 小野 不由美

消える本箱 椎名 誠

エバーグリーンの思い出 赤川 次郎

本棚の行政改革は難しい 赤瀬川 原平

To be or not to be 児玉 清

怪しい趣味 南 伸坊

本の力 井上 ひさし

本棚は難しい 荒井 良二

価値のない価値 唐沢 俊一

書棚はひとつだけ 内澤 旬子

蔵書の掟 西川 美和

本棚が、いらなくなる日 都築 響一

昔は祭壇だったのに 中野 翠

目茶くちゃな本棚 小泉 武夫

少年期的読書 内田

<永遠の美しさ>に囲まれて 金子 國義

父の後姿 池上 彰

読書のベースキャンプ 田部井 淳子

ピノッキオの本棚 祖父江

愛人に少し稼いでもらう 鹿島

和本が落ちてきて 磯田 道史

混ざりあう心地よさ 酒井 駒子

アマチュアの本棚 福岡 伸一

都築響一ではないけれど、わたしの本棚は図書館ですというぐらい、このごろは図書館の本ばかり読んでいる。本当に大切な本はトランクにひとつぐらいにまとめて、いつでも本棚をもって旅に出られるくらいの身軽さでいたいと思いつつ。

2018-10-23 僕達が何者でもなかった頃の話をしよう

土曜の夜にこの秋はじめての鍋をした。白菜とねぎ、えのきだけ、豚の薄切り肉を買って帰り、豆腐とくずきり。ぽん酢と柚子こしょう。秋もここまできたなとおもったけれど、日曜は汗ばむような陽気で蝉が鳴いたらしい。日曜は思いつきでピクニック。朝からおにぎりをつくり、ウインナーと人参を焼き、ゆで卵と塩もみのきゅうりの簡単な弁当。ファミチキを買ってきて、公園のベンチでみんなで食べた。家に帰ったらはりきったのと陽気にくたびれてしばらくソファから動けなくなってしまった。鼻水と咳がつづく。しんどい。

ト。

どんな偉大な人にも、悩み、失敗を重ねた挫折の時があった。彼らの背中を押してチャレンジさせたものは何だったのか。山中伸弥羽生善治らの講演と対談を収録する。京都産業大学講演会を書籍化。

失敗しても、夢中になれることを追いかけて 山中 伸弥

環境を変える、自分が変わる−対談−

挑戦する勇気 羽生 善治

“あいまいさ”から生まれるもの−対談−

映画を撮りながら考えたこと 是枝 裕和

先入観が崩れるとき、世界を発見する−対談−

挫折から次のステップが開ける 山極 壽一

おもろいこと、やろうじゃないか−対談−

是枝監督の「僕は神様がいない世界に生きているつもりなので、真っ白と真っ黒を放棄したグレーゾーンの中で、物語をつくり続けたい」というのは、いかにもという感じがする。神様がいない世界で、しんどいことや救いのないことを描いているけれど、愛はあるんだよな、是枝作品には。