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時間償却特別感情

2006年11月04日 土曜日 箱舟が出る港 第三章 一節 カタストロフィの日傘 五

murasameqtaro2006-11-04

常央大学

本部棟八階大会議室。

楕円型のテーブルの

一番奥に背を向けた

市島典孝が居た。

窓の外は水戸市内が

一望できる。

高層建築の県庁舎が

ゆっくりと形を整えつつあった。

強い揺れが収まり、ようやく正常が戻ったばかりである。

遠い筑波山が赤々と燃えている。

パトカー救急車の咆哮が市内は勿論、遠くからも聞こえてくる。

まるで狐火だ...と市島は思った。

沢山の狐が松明を手に持って、底知れぬ不気味な踊りを踊っている。

魅入られた人間も、わけがわからず狂気の踊りを踊っている。

子供が消滅したのが、本日未明五時。

大洗海岸を中心に夥しい死人を発見したのが今朝から昼。

そして強い地震が収まった今、時計は午後七時を回っていた。

隣接する付属病院には私服刑事が二十四時間の戒厳体制で

張り付いていたが、二、三人構内から飛び出して行ったようだ。

暫く市内を見下ろしていた市島の背は、付属病院を最後にして、

ゆっくりと回転した。


パソコン接続された液晶プロジェクター赤ん坊の消滅の瞬間を

映し出していた。

「見たかね、諸君」

市島はぐるりとテーブルを見回した。

座っているのは五、六人であった。

「...えっ?...ああ...確認しました?、まさに、まさに一瞬の消滅でしたな....」

市島の言葉が最初は理解出来なかった。

暫しの沈黙の後、ようやく時間が繋がったのである。

三度目の揺れが襲うと、理工学部長は床に伏していた。

子供の消滅どころではない、逃げなくては..恐れが脳裏を焼いた。

その瞬間が映し出された直後、強い揺れが何度も襲ったのである。

唇がわなわなと震えている。

どうにかイスを支えとしてふらふらと立ち上がった

目まぐるしい一日だ....床に伏した教授、テーブルの下に隠れた教授

入り口のドアまで逃げかけた教授...理工学部長の細い声を聞くと、

我に帰ったように立ち上がり戻り、テーブルに座った。

室内の灯りという灯りが、地震直前と全く違う光りを点しているようだった。

暗い....全員が憔悴していた。

カウンターパンチのような十数分程の時間は、教授達を何年も老い

に誘い込んだかのように、遠い筑波で笑っている。


「...ふむ...落ち着いたかね、それでは続きと行こう...瞬間を今度はスロー

モーションでもう一度回してくれ....,」

市島は何事もなかったように横目で秘書の大林に指示した。

「待ちたまえっ!」

太い声が対面から届いた。

学長井上輝義であった。

「今はこんな論議をしている場合ではないぞ! 続きは中止するべきだ。

窓を見ろ、ええ? ....筑波が燃えている、火山活動のようだ。あの様子では

死人も沢山出ているはずだ。消滅は次にして現状を協議すべきではないか

?」

尤もな発言であった。確かに子供の消滅は大変な問題である。

が、消えたという事実こそ確かに存在するが客観的要素が乏しい。

いや、乏しくさせたのだ、筑波山の噴火という転変地位の現状が。

誰もが見た客観的な巨大なる事実である。論点をこちらに移す事が

理性的と言うものだろう。

近くにヘリコプターの音が乱舞している。

百里基地だろう。

ヘリは筑波を目指している事は間違いない。

「大丈夫だ、噴火は収まる...あれは火山活動などではない」

...なんだと!?

ざわめきが室内を競争している。表現さえ違うものの、市島を非難する

矢の連続であった。

「...ほう、何故確信が持てる? 火山活動でなければ何だ?、噴火は収まる

だと?そして火山活動ではないと...そう仰るが甚だ矛盾しているのではない

かね。噴火と火山は同義語と認識していたがね。」

上目使いの井上の双眸が光った。

「ま、落ち着きたまえ。子供の消滅、一連の心臓発作による死亡、海岸

地帯付近での不可解な死体、そして今度は筑波がアレだ....何かしらの

法則があるとは思えんか? それを順を追ってお話しさせて欲しいと、

私は御願いしている」

「法則だと? 確かにおかしな事が続いた一日だった。が...一連の事件

には法則性などはない。考えても見ろ、子供が消え、心臓麻痺死亡が

あり、骨のみの死体があって、さらには筑波の噴火....因果などはない、

まさに無秩序ではないか!!」

「そうだ、それが法則だ...無秩序と言う名のね....」

バカバカしい、あんたそれでも学長か! 狂っているとしか思えん!!

理事会を招集し、あんたをクビにするぞ!! こんな会議に付き合ってられ

ん、甥が八郷にいる。山麓だ。私はこれで失礼する!!」

賛同した教授達が次々と立ち上がった。

「待て!!」

会議室のドアを遮るように十名の男が立っていた。

中心にいるのは菰野広重であった。

太田垣と山下も居る。

「何だっ君達! そこをどきたまえっ!!」

「最後まで聞きましょうよ、副学長

菰野が両手で井上を制した。

「何を寝ぼけておる、菰野君。それに君達は誰だ?」

見覚えはあったが、菰野太田垣、山下以外の七名はよく分からない。

「やまぐも計画の研究員、学校では講師です。私は山中と言います。

ここは一歩たりとも通しません、ええ、力づくでもね」

言い終わると同時に井上は吹っ飛んだ。

菰野がその顔面に拳を叩き込んだのである。

「さあ、...悪いが最後までつき合って貰うよ」

市島がかすかに微笑んだ。


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