星空のグローブ 1  〜亡き父に贈る〜

陽炎を流しながら流行のバスケットシューズが交差する。
手には形さまざまなグローブ。
軟球が駆け抜け、
小児喘息だった私も仲間たちと追った。
手には学校所有のグローブが。



望んだものを買ってくれたことはなかった。
定期的に購入してくれたのは、
小学館の小学何年生シリーズ。
六年間かかさず買ってくれはしたけれど、
自分が心から欲しいものはそんなもので全くなかった。



ピノキオを、宝島も読みたい!
ねだったけれどとうとうとう買ってくれず、
ある日自分は、所有する友人の部屋から無断で拝借した・・・
セーターの中に隠して・・・



市内の野球大会が始まる。
弱かった体だけれども、幸い学校代表の選手に選ばれた。
けれども、うかなかった・・・
みんな自分のグローブを持っているのに、
私は学校のものを手に。
グローブを隠そうとしながら、ポジションについていた。
みんな自分のミットを持っている。
なんで自分だけがない・・・
下級生のものを借りたこともあった。



陽炎流れる夏の校庭で自分たちは何を追っていたのか?
まぎれもなくあれは、ボールだったのか?
それから相当な時が流れ、一人の部屋で問いかける。
しかし誰も何も答えてはくれない。



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