本の話続き

百輭の師である夏目漱石と同門で友人であった芥川龍之介について書いた随筆を集めた本『私の「漱石」と「龍之介」』を読む。
その本の中で百輭が夏目漱石の『文鳥』という話について触れていて、たまたま日本へ帰国した際に一冊だけ買った夏目漱石の本に『文鳥』が入っていて、ほくほくしながら『文鳥』を読む。
気になった話がすぐに読めて幸せであった。

『私の「漱石」と「龍之介」』の本文はとても面白く、読んでいて師の漱石よりも関係が近かったと感じられる芥川龍之介についての文には思わず涙を落とした。
しかし解説に引用された野上彌生子の日記には感涙したことを鼻で笑われそうな百輭と芥川龍之介への容赦無い描写が続き、見知らぬ野上彌生子という人に謝ってしまいそうな気持ちになる。

解説には野上豊一郎の妻で、漱石、百輭、龍之介と親しかった人だと書いてある。調べてみると野上彌生子もまた作家で、あの容赦無さは作家ならではの鑑識眼であったか、と納得した。