museionの日記 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2007-01-30 ジェロニモの十字架 このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

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第80回文学界新人賞 青来有一 ジェロニモ十字架

後から知ったのだが芥川賞受賞作品でもあるようだ。この作品ほど受賞に相応しいものはないし、もしかすると賞の器を越えた作品とも言える。長崎という舞台重要意味をなしているところなど、ニューハンプシャーに捉われ続けているジョン・アーヴィングと作風が被るところがある。ところが、この作品で舞台となる長崎は、大勢の隠れキリシタンが指つめや鼻削ぎ、竹鋸による首切りなど過酷な拷問・弾圧を受け殺害されたという歴史原爆が投下されたという歴史など、歴史的な大量殺戮の現場となったことが大きな意味を持つ。

口頭癌で声帯を除去し声をなくした主人公。その主人公にはジェロニモという叔父がいて、そのジェロニモ叔父は放火罪や、痴漢などの検挙歴があるだけでなく親族の中では一番の問題児として誰もが悩まされ続けてきた人物だった。そのジェロニモ叔父を中心に、原爆を体験した祖母の代から主人公と従妹の赤ん坊に渡る四世代と、ジェロニモ叔父の心を捉えた隠れキリシタンがいた時代(ジェロニモ叔父は自分の一族がもともと隠れキリシタンだったと確信している)などと歴史を縦断しながら、声を奪われた主人公は過去の中で声を奪われた者たちに思いをはせながら記憶をたどっていく。ジェロニモ叔父には、犯罪歴だけでなく、口にする言葉、態度、ジェロニモ叔父から発せられるものは全てに不快さがつきまとい親族皆から疎まれているのだが、親族たちは心の中ではどこかでジェロニモ叔父に対して優しい目で見守っているところがこの作品に描かれた登場人物と同時のこの作品の深さを感じさせるところで、それは原爆や弾圧といった厳しい現実を目の当たりにしながらも力強く耐えて長崎で生きてきた人々に対する作者の愛が感じられる。

by文芸誌ムセイオン

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