museionの日記 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2007-12-23 カファブンガ このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

小雨の振りし来るなか傘を持たずに六本木界隈を歩いていて、偶然見つけたカファブンガというカフェに雨宿りがてら入った。ご主人は1960年以前のポピュラーミュージックファンで、当時の流行曲を歌手ゴシップを交えながら有名曲を掛けてくれた。1960年以前はミュージカル映画が絶頂だった背景があるので、歌手の多くはフランク・シナトラに代表されるように映画俳優でもあったようだ。ご主人のお気に入りはイタリア系の歌手の曲で、どうやらブルックリンなどイタリア移民の歌手はカンツォーネや、オペラなどの下地を活かした大胆で派手な迫力のある歌い方が特徴で、大きな声量でまさに歌い上げるといった感じだ。

エルビスプレスリービートルズ登場以前のポピュラーミュージックはリズムよりメロディが主体で、ブルースジャズなど黒人音楽の影響が全く感じられず、今聞いてみると却って新鮮な感じがする。心が大きくなるというか、リズムに合わせるというのは、やはり規律正しさというか全体主義的な傾向がやはりあるのか、比較してしまうとこじんまりした感じが拭えない。しかし、自分はジャズのスイングのリズムは好きだし、ジャズの場合はそのリズムの単調さを突き破るために、変則的な音階フレーズを生み出していった。その歴史はそれはそれで惹きつけるものがあり、どちらが素晴らしいと比較できない。いずれにしても音楽はその時代の人の要望や苦しみが形になったものだと思うと、音楽はこれからも変わり続けていくのだと思うし、そうであって欲しい。

2007-02-27 ビッグ フィッシュ このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

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久しぶりの書き込み。

ティム・バートン監督映画ビッグ・フィッシュ」をレンタルDVDで見る。

個人的にチョコレート工場を見て演出手腕の衰えを感じていました。期待半分恐る恐る見てみたのですが、内容は実に面白く濃い。シザー・ハンズから続くファンタジー世界に、エド・ウッドやスリーピーホローのようなゴシックホラー的暗い雰囲気が融合した作風なのですが、類まれなキャラクター造詣やディテールの懲りようはティム・バートンならではの世界観が如実に反映されています。

内容は、もうすぐ子供が生まれる男性が死を間近に控える父親と本気で向き合うという裏の筋があるのですが、

表面上はシーラカンスのような巨大な魚を取り上げると子供が生まれた話や、巨人サーカス一座が支配する小さな田舎町の話、従軍先のアジアで出会った体は一つで頭が二つある美人姉妹の話など虚実ないまぜとなったような作り話が繰り広げられていく。つまりそれらの話を主人公の男性は父親から聞かされていたという設定。

結末はさておき、描かれている不思議な世界は現実にはありえない世界で奇妙な視点を変えると恐い世界なのかもしれないのですが、ティム・バートンが描くと素敵と思えるところが監督の力量といえるのでしょう。

物語の中で描かれる異次元というか別世界というと、SFのような近未来歴史神話になぞらえた壮大な幻想的世界、怨霊が取り巻くオカルト世界など色々ありますが、ティム・バートン監督は20世紀のアメリカおもちゃで遊ぶ子供の視点のような夢溢れる世界として取り上げそしてファンタジーの世界にまで昇華しているところが斬新というか妙技と言えます。

2007-01-30 ジェロニモの十字架 このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

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第80回文学界新人賞 青来有一 ジェロニモの十字架

後から知ったのだが芥川賞受賞作品でもあるようだ。この作品ほど受賞に相応しいものはないし、もしかすると賞の器を越えた作品とも言える。長崎という舞台が重要な意味をなしているところなど、ニューハンプシャーに捉われ続けているジョン・アーヴィングと作風が被るところがある。ところが、この作品で舞台となる長崎は、大勢の隠れキリシタンが指つめや鼻削ぎ、竹鋸による首切りなど過酷な拷問・弾圧を受け殺害されたという歴史、原爆が投下されたという歴史など、歴史的な大量殺戮の現場となったことが大きな意味を持つ。

口頭癌で声帯を除去し声をなくした主人公。その主人公にはジェロニモという叔父がいて、そのジェロニモ叔父は放火罪や、痴漢などの検挙歴があるだけでなく親族の中では一番の問題児として誰もが悩まされ続けてきた人物だった。そのジェロニモ叔父を中心に、原爆を体験した祖母の代から主人公と従妹の赤ん坊に渡る四世代と、ジェロニモ叔父の心を捉えた隠れキリシタンがいた時代(ジェロニモ叔父は自分の一族がもともと隠れキリシタンだったと確信している)などと歴史を縦断しながら、声を奪われた主人公は過去の中で声を奪われた者たちに思いをはせながら記憶をたどっていく。ジェロニモ叔父には、犯罪歴だけでなく、口にする言葉、態度、ジェロニモ叔父から発せられるものは全てに不快さがつきまとい親族皆から疎まれているのだが、親族たちは心の中ではどこかでジェロニモ叔父に対して優しい目で見守っているところがこの作品に描かれた登場人物と同時のこの作品の深さを感じさせるところで、それは原爆や弾圧といった厳しい現実を目の当たりにしながらも力強く耐えて長崎で生きてきた人々に対する作者の愛が感じられる。

by文芸誌ムセイオン

http://eizou.web.infoseek.co.jp/muse1.html

2004-12-04 山中貞雄  「丹下左膳餘話 百萬両の壷」 このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

museion2004-12-04

山中貞雄  「丹下左膳餘話 百萬両の壷」 (1935/日)

小津安二郎、黒澤明など日本を代表する映画監督がその卓越した脚本・演出に憧れた山中貞雄の最高傑作。

芝居の魅力が全て盛り込まれいる完璧すぎる作品。

第二次大戦で海外出兵で28歳で命をおとさなければどれだけの歴史に残る名作を作ったことかとつくづく思わされる。大戦で彼はなくなり、とりわけ大衆芸能面ではアメリカナイズの一途をたどるわけだが、山中貞雄の残していった影響力が形をかえ、小津や黒澤らによって世界が認める普遍的なものへと再生されたかと思うと感慨深いものがある。