スマイルプリキュア!第45話「終わりの始まり!プリキュア対三幹部!!」
それは暗黒の闇の中、どんな光も寄せ付けない無限の地獄だった。
奇跡の力で撃退したと思われた絶望の支配者ピエーロ。しかし、その姿を変え宇宙へと逃げたソレは、今再び地球へと向かっていた。
みゆき「え――――――何あれ……」
その日いつものように5人で集まって遊ぶ予定を立てていたみゆきは、曇り空の向こうから巨大な禍々しい何かが空に浮かんでいるのに気づきました。
やよい「こっちに向かってる……?」
いつの間にかどんよりとした色に染まった空は、いつもウルフルンたちが作り出すバッドエンド空間に似ています。
なお「一体あれは……」
その時、軽快なリズムと共にロイヤルクロックが光りだします。まるで空のソレに反応するかのように。
みゆき「えぇ―――――!?」
キャンディ「クル!?」
みゆき「キャンディ!?」
ロイヤルクロックから溢れた光はキャンディに当たり、その瞬間キャンディの体がなぜか光りだします。
キャンディ「クーーーールーーーー!!?」
光に吸い込まれるようにキャンディがその中に埋もれていくと、次の瞬間、眩い光と共にキャンディのいた場所には、翼の生えたタマゴのようなものがぽつんと置かれていました。
「「「「「キャ、キャンディ!!!!?」」」」」
ウルフルン「……。」
アカオーニ「……。」
マジョリーナ「……。」
ジョーカーから最終勧告を言い渡され、後にも先にも引けずに戦ってきた三幹部。しかし、覚醒したプリキュアの力にことごとく敗れ、恐怖に怯えながらも、ジョーカーの最後の召集を受けて集まりました。
ジョーカー「役立たずの皆さんにもう一度集まっていただいたのは他でもありません。ミラクルジュエルが見つかりました。」
「「「なにぃ!!??」」」
ミラクルジュエル。物語中盤から名前だけは登場していた謎のアイテム。ロイヤルクィーンを復活させようとするみゆきたち、バッドエンドエナジーを集める三幹部。そして、その裏でミラクルジュエルを狙って動いていたジョーカー。
ジョーカー「ワタシもびっくりしまシタ。まさか、あの妖精がミラクルジュエルだったなんて……。」
嬉しそうに彼は取り出したカードから、人間界にいるみゆきたちの中継映像を3人に見せました。
ジョーカー「どんな願いも叶えると言われているミラクルジュエル。それを我々のものにすれば、世界は永遠にバッドエンドデス!」
ウルフルン「頼む!オレ達にもう一度だけチャンスをくれ!」
アカオーニ「絶対にプリキュアを倒してミラクルジュエルを奪うオニ!」
マジョリーナ「今度は本当に命を賭けるだわさ!」
必死にジョーカーに言い寄る3人。その目には恐怖にも似た震えが入り混じっていました。
ジョーカー「命ねぇ……。実は皆さんの命、もう僅かしか残っていまセン。」
サラリと、まるで何でもない事のように、ジョーカーは言い放ちました。
「「「えぇぇぇぇ!!!!?」」」
ウルフルン「どういうことだ!?」
想像だにしていなかったジョーカーの言葉に動揺する3人。すると、ウルフルン達の目の前にジョーカーは、あの禍々しい黒っ鼻を取り出して言いました。
ジョーカー「黒っ鼻は使う度に命を削られマス。なぁ〜んのリスクもなく強さだけを手に入れられるわけがないデショウ?だからもし次負けたら皆さんの命は……確実にキエマス」
ウルフルン「!?」
アカオーニ「!!」
マジョリーナ「――!」
まるで最初からこうなることを計算していたのか、笑みすら浮かべてジョーカーは皮肉混じりに言います。
ジョーカー「おやぁ?さっきの勢いはどうしたんですかぁ?勝てばいいんデスよぉ〜、プリキュアさえ倒せば世界はバッドエンドになるんですカラ……それとも皆さん……」
少し言葉を溜めたあと、3人のすぐそばで囁くようにジョーカーは続けます。
ジョーカー「ムカシに戻りたいんデスカぁ?」
ウルフルン「――――――」
アカオーニ「――――――」
マジョリーナ「―――――――」
一瞬何かを思い出したように3人は身震いします。そして、揃って汗が滲んだ拳を握りしめました。
ウルフルン「――――オレはやるぜ!」
アカオーニ「―――!」
マジョリーナ「――――!」
ジョーカー「フ。そうこなくっちゃ!」
そういうとジョーカーはウルフルンに黒っ鼻を放り投げました。それを受け取ったウルフルンの手に、アカオーニとマジョリーナは手を合わせます。
ウルフルン「地獄に堕ちるぞ」
アカオーニ「地獄は鬼にぴったりオニ」
マジョリーナ「もう後には引けないだわさ……。」
ジョーカー「ウッフフ。それでは皆さん、ピエーロ様復活の最後のバッドエナジーを、集めてきて下サイ―――――。そうだ!とっておきの黒っ鼻の使い方もお教えシマショウ!」
窮地に立つ三幹部。自分自身の絶望を恐れ、戦う。悲しい運命を背負う彼らに、みゆき達は戦えるのか。
スマイルプリキュア!第45話「終わりの始まり!プリキュア対三幹部!!」
みゆき「何なのこれ……キャンディ、どうなっちゃったの!?」
突然起こった出来事に途惑うみゆき。そこに、聞きなれた声が空から聞こえてきました。
ポップ「皆の衆―――――!!」
「「「「「―――――?」」」」」
ポップ「大変でござるーーーー!!」
バサバサと羽ばたくのは鳥でも飛行機でもなく、絵本です。2つに開かれた本が鳥のように羽ばたき、みゆき達の目の前で着地しました。その瞬間、本のページにいたポップが本から飛び出してきました。
「「「「「ポップ!!!!?」」」」」
ポップ「地球に迫っているなの大きな塊は、ピエーロのタマゴでござる!」
「「「「「ピエーロのタマゴ??」」」」」
さらに唐突に告げられた事態がうまく飲み込めない5人。みゆきは慌てて今起こったことを説明します。
みゆき「ポップ、それより見て!キャンディが―――――」
ポップ「まさか、これは―――――!?」
ミラクルジュエルとなったキャンディをポップに手渡すみゆき。その時、今度も聞きなれた声が空から聞こえてきました。
ウルフルン「そのまさかよ!」
アカオーニ「お前達の妖精がミラクルジュエルだったオニ!」
みゆき「ミラクルジュエル……」
れいか「一体、どういうことなんですか!?」
ウルフルン「そんなことはどーでもいいんだよ!」
アカオーニ「世界中の人間を絶望させるオニ!!」
マジョリーナ「ピエーロ様復活の最後のバッドエナジーだわさ!!!」
そう言って三幹部は残り1カウントとなったピエーロのカウントを進めるべく、白紙の絵本を取り出します。
ウルフルン「世界よ、最悪の結末バッドエンドに染まれ!!」
アカオーニ「世界よ、最悪の結末バッドエンドに染まれ!!」
マジョリーナ「世界よ、最悪の結末バッドエンドに染まれ!!」
ウルフルン「白紙の未来を黒く塗り潰すのだ!!」
アカオーニ「白紙の未来を黒く塗り潰すオニ!!」
マジョリーナ「白紙の未来を黒く塗り潰すだわさ!!」
孤独な夜空と黄昏の夕焼け、そしてそれにかかる蜘蛛の巣の三重のバッドエンド空間が大規模に広がります。
それはピエーロの復活も相まって、いつもの大きさよりもはるかに広く、日本、地球全体を包み込む勢いでバッドエンド空間は広がっていきました。
友だち、家族、クラスメイト、商店街の人、街中のみんな。全て絶望の闇に呑まれ、大量のバッドエナジーがウルフルン達を通して空に浮かぶピエーロの元に集まります。
みゆき「みんなが―――――わたし達の世界が―――――!!」
ポップ「(地球に迫るピエーロのタマゴ……。ミラクルジュエルに変化したキャンディ……。わからないことだらけでござるが、)」
「ついに始まるのでござる!最後の戦いが!!」
みゆき「最後の―――――――――みんな、いくよ!!」
「「「「うん!!!!」」」」
「“プリキュア・スマイルチャージ”!!!!!」
「Go!!Go!!Let’s go!!」
「キラキラ輝く未来の光、キュアハッピー!」
「太陽サンサン熱血パワー、キュアサニー!」
「ピカピカぴかリンじゃんけんぽん、キュアピース!」
「勇気リンリン直球勝負、キュアマーチ!」
「シンシンと降り積もる清き心、キュアビューティ!」
「「「「「5つの光が導く未来、輝け!スマイルプリキュア!!!!!」」」」」
ウルフルン「こっちもいくぜええ!!!」
そう言ってウルフルンが取り出したのは、ジョーカーに渡された最後の黒っ鼻。
「「「黒っ鼻よ!!!我らに最強の力を!!!」」」
それは以前、ビューティとの戦いでジョーカーが黒っ鼻を取り込んだ時のように、三幹部はより凶暴性の増した悍ましい姿に変貌しました。
ウルフルン「キュアハッピー!これが最後だ!!てめぇは絶対にオレが潰す!!!来い!」
ハッピー「はぁ!!」
ウルフルン「オララララララララアアアアアアアアア!!!!」
空に飛び上がるウルフルンを追って高くジャンプするハッピー。そのままパンチとキックの応酬で激しいバトルを繰り広げます。
アカオーニ「オニ!!お前らはオレ様が始末するオニ!!」
巨大化した体に、巨大化した金棒を振り回すアカオーニ。サニーとピースが迎え撃ちますが、巨体の割に素早い動きについていけずに重い金棒の一撃をもらってしまいます。
サニー「あぐ!!」
ピース「きゃあ!!」
マジョリーナ「「「「「ハハハハハハ!!!イクワヨ!!!」」」」」
何十という数に分身したマジョリーナ。ものすごい勢いで分身を爆発させ、マーチとビューティを攻撃します。
マーチ「あぁ!!」
ビューティ「く――――!!」
ハッピー「つ、強い……」
空中でそのまま攻撃を止めない両者。
ウルフルン「当たり前だぁ!こちとら本気なんだよぉ!!!」
ハッピー「うわああああああああ!!!」
繰り出されるパンチは、パワーもスピードも、黒っ鼻と一体化したウルフルンの方がハッピーより優っていました。
アカオーニ「オニイイイイイ!!!」
サニー「うおあああ!!!」
ピース「きゃああ!!!」
隙を突いてその巨体に渾身の一撃を入れるサニーとピース。しかし、鋼の肉体と化したアカオーニの体は、二人のパンチを弾き飛ばします。
マーチ「はああああああ!!!」
ビューティ「たあああああ!!!」
マジョリーナ「フフフフフ」
倒しても倒しても消えない分身。本体がどれかも見破れずに徐々に消耗していくマーチとビューティ。マジョリーナは、食べられたりんごの芯で出来た緑の剣を、ビューティに振り下ろします。
ビューティ「うく――――――ああ!!!!」
本気で挑むのはプリキュアではなく三幹部。命を賭けてまで、負けられない理由があるその覚悟に、ハッピーたちは押されていました。
ウルフルン「ハハハ!この程度か?キュアハッピー?」
ハッピー「強い……。でも負けるわけにはいかない!」
呼吸を整えて心を落ち着かせます。拳を握り締め、体の隅々にまで力を浸透させるハッピー。
ハッピー「気合いだ!!気合いだ!!!気合いだあああああああ!!!」
ウルフルン「へ!」
「“プリキュア・ハッピー・シャワー”!!!!」
ウルフルン「オラアアアアアアアアアア!!!!」
繰り出されたハッピーの必殺技は、しかし、後から打ち込んだウルフルンの極大のビームが押し返し、そのままハッピーはウルフルンの攻撃に飲み込まれてしまいます。
ハッピー「え――――――――きゃああああああああああ!!!!」
アカオーニ「来いオニ!!!」
サニー「“プリキュア・サニー・ファイヤー”!!!」
ピース「“プリキュア・ピース・サンダー”!!!」
こちらも二人合わせて繰り出した炎と雷の一撃。アカオーニはそれを避けようともせずに、そのまま二人の攻撃を体を受け止めます。
アカオーニ「ふん!!」
力を込めたアカオーニは、そのまま二人の攻撃を霧散させ、無効化させてしまいます。
サニー「は――――!?」
アカオーニ「オレ様の勝ちオニ!!!」
ビューティ「“プリキュア・ビューティ・ブリザード”!!!!」
マーチ「“プリキュア・マーチ・シュート”!!!!」
マジョリーナ「そんな!!?」
マーチとビューティが繰り出した吹雪と風圧のシュートは、分身したマジョリーナを片っ端から消滅させました。がしかし。
キャンディ「クルー!!」
一人のマジョリーナの前に飛び出したキャンディ。マーチ・シュートで狙いが定まっているため、風のボールがキャンディへ向かって止まりません。
「「キャンディ!!!!」」
マーチ「ぐああああ!!!」
ビューティ「きゃあああ!!!」
キャンディを守ろうと、身を挺して自分自身の攻撃を受ける2人。
ビューティ「キャンディ―――――え……。」
腕に抱いたキャンディを見たビューティは愕然とします。そこにいたのはただの水晶玉だったのです。
マジョリーナ「簡単に騙されるのね。」
マーチ「―――!?」
驚く二人にマジョリーナは、空に上げた巨大な魔法弾を振り落とします。
マジョリーナ「たわいもない。」
「「きゃあああああああああああああああああ!!!」」
ポップ「皆の衆――――――――!!!!!!!」
そうして5人は三幹部の前に倒れました。
ウルフルン「ウルッフッフッフ」
アカオーニ「プリキュア…」
マジョリーナ「あたし達の勝ちだね!」
勝ち誇る三幹部に、ハッピーたちは痛みを堪えて体を震わせながらも立ち上がります。
サニー「プリキュアは、絶対に……」
ピース「負けない……」
マーチ「諦めない……」
ビューティ「夢や希望を……」
ハッピー「絶対に捨てない!!」
ウルフルン「無駄だ。見ろ。」
顎でウルフルンが指したものは、さっきより近づいて巨大に見えるピエーロのタマゴでした。もう街の上からはタマゴの形もわからずその表面のゴツゴツとした殻が空一面を覆い尽くしていました。
ウルフルン「ピエーロ様はもう、すぐそこまで来てるぜ!」
ポップ「ピエーロのたまご……」
アカオーニ「ピエーロ様の復活ももうすぐオニ!」
マジョリーナ「しかも今度は、前よりさらに強くなって復活するのさ」
ウルフルン「お前らに勝ち目はねぇんだよ!!」
ハッピー「それでも、わたしたちは諦めない!!」
サニー「ウチらの背中には」
ピース「世界のみんなの」
マーチ「未来がかかってる!」
ビューティ「だから、絶対に負けるわけにはいかないんです!」
ハッピー「わたしたちにできること、全部、全部、ぜーーーんぶ!!やらなきゃ―――!!」
「みんな、いくよ!!」
「うん!!」
天まで羽ばたく天馬の翼。白きペガサスは純情の印。その輝きを受けて、5人は純白の衣を纏う。
「“プリキュア・プリンセス・フォーム”!!!!!」
ウルフルン「オレ達もいくぞ!!」
「「「バッドエナジー・フルパワー!!!!!」」」
三幹部の体から溢れ出す膨大なバッドエナジー。それを空中で一点に凝縮し、不気味なドラゴンの形をした絶望の塊を出現させました。
「届け!!希望の光。」
天馬に跨り、それぞれのキャンドルに火を灯す。
「はばたけ!!未来へ!!」
描く星の繋がりはペガサスの星座に。その聖なる力を宿して。
「“プリキュア・レインボー・バースト”!!!!!」
「“バッドエンド・バースト”!!!!!!!!!」
ペガサスから放たれた聖なる光。
ドラゴンから放たれた汚れた闇。
二つの光は互いにぶつかり激しくせめぎ合います。
「「「「「はああああああああああああああああああああ!!!!!!」」」」」
「「「どおおおおおりゃあああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!1」」」
そうして勝負は一瞬のうちにつきました。
5人の奇跡の光が、闇に呑み込まれてしまったのです。
「「「「「うわあああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」」」」」
ウルフルン「てめぇらごときじゃ今のオレ達には絶対敵わねぇ!!」
ピース「つ、強い……。」
サニー「とんでもない執念や……。」
ビューティ「その強さ…、いったいどこから……」
アカオーニ「へ!お前達にはわからないオニ!!」
マジョリーナ「あたし達が何度も味わった、あの悔しさ、寂しさ、痛み!!」
語るマジョリーナは辛い過去を思い出すように吐き捨てました。
ハッピー「痛み―――――?」
マジョリーナ「あたし達は絵本の中じゃいつも嫌われ者。」
白雪姫に嫉妬し、毒りんごで永遠の眠りにつかせた悪い魔女。
アカオーニ「怖がられて、嫌われて……」
本当は心優しいのに、その怖い風貌で人々から忌み嫌われてきた赤鬼。
ウルフルン「誰からも相手にされない。」
孤独に誰にも味方されずに、ひたすら悪役を演じ続けなければならない狼。
ウルフルン「そんな時だ、オレ達の前にジョーカーが現れたのは……。」
それまでは物語の登場人物でしかなかった三人。しかし、ある道化師が三人を唆し、恨み妬みの心だけを宿してこの世界に呼び出してしまいました。
ジョーカー『痛いデショウ?苦しいデショウ?悔しいデショウ?いけないのはこのくだらない世界デス。こんな居心地の悪い世界は全部壊しましょう!』
ジョーカー『ンフ、ピエーロ様が力をくれます。世界から未来を奪ってバッドエンドにしまショウ!そうすれば……アナタ達の住みやすい世界になりますよぉ〜〜〜〜』
ハッピー「そんなことが……」
ウルフルン「憎いんだよ!ヘラヘラと楽しそうにしてるヤツも、未来が明るいとか能天気なこと言ってるてめぇらも!!!ぜんぶなあ!!!」
アカオーニ「疎まれ、蔑まれ、誰からも相手にされない……。その悔しさや寂しさ、お前たちなんかにはわからないオニ!!」
マジョリーナ「だからあたし達はピエーロ様と一緒に、この世界全てを壊すのよ!!ムカつくこのくだらない世界を全部ね!!!」
ハッピー「……。」
怒鳴り散らす三幹部の言葉。それは世界に対する不満か、己の運命に対する嫉妬か。
日の光を決して浴びることはなかった。どんなに頑張っても主役にはなれない。一番にはなれない。誰にも見てもらえない。
それが悪役。悪い狼。悪い鬼。悪い魔女。
その想いが、嘆きが、ハッピー達の拳をゆっくりと解きました。
ウルフルン「なんだ?」
アカオーニ「なんで戦おうとしないオニ!?」
ピース「わたしも、学校で同じようなことがあった。」
コンクールに向けて頑張って絵を描いたけど、努力は報われなかった。
サニー「あんたらが絵本の中で感じたこと、わからんでもない……。」
ウルフルン「なんだ……てめぇら……ふざけてんのかあああああああああああああ!!!!」
その言葉が余りにも耳障りで、頭が痛くなるほど鬱陶しくて、ウルフルンは拳をハッピーに繰り出します。
ウルフルン「くたばれええええええええ!!!このくだらねぇ世界と共に!!!!」
ハッピー「あなた達のことを知ってしまったら――――――、わたし達どうしたらいいのか……」
繰り出される攻撃を反撃もせずに5人は受け続けました。
ウルフルン「同情か?バカにしやがって!!!」
サニー「バカになんかしてへん!」
ピース「あなた達の感じた痛みが、少しだけわかったから……」
アカオーニ「はいいいい!?」
ビューティ「私達は、私達の世界を守りたい!!だけどそのために貴方達と戦うのは、違うと思います!!!」
マーチ「なんで……なんで……こんなことになっちゃったの……」
悲しみにくれるのはそ、自分がの立場だった時どうしていたか。
誰にも認められなかったから逃げ出したのか。
誰にも相手にされなかったから傷付けるのか。
ウルフルン「ムカつく!!ムカつく!!!ムカつくううううううううううう!!!!」
ハッピー「―――――。」
ウルフルン「てめぇらなんかに何がわかるってんだ!!!?」
同情して欲しかったわけじゃない。
手を差し伸べて欲しかったわけでもない。
アカオーニ「毎日幸せで、何の不自由もないお前たちに!!」
一緒に涙を流して欲しかったわけじゃない。
言い訳を聞いて欲しかったわけじゃない。
ただ。
ただ。
ハッピー「わたしたちは……わたしたちは、あなた達が感じた嫌な思いを少しでも和らげたい……」
ウルフルン「なに……」
友だちがくれた大切なものを傷つけられた時。
一生懸命描いた絵が台無しになった時。
アカオーニ「――――。」
今までずっと一緒だった大切な家族を失いそうになった時。
自分の進むべき道に迷い葛藤した時。
マジョリーナ「―――――。」
大切な人との想い出を忘れていた時。
それでも、彼女たちは立派に前へ向いて歩いた。
光輝く希望の未来へ。
ウルフルン「本気……なのか――――――」
一瞬。その心の淀みが薄れた瞬間。
ウルフルン「ぐああああああああ!!!お前達を見てると頭がおかしくなっちまう!!!!」
アカオーニ「オレがオレで無くなるオニ!!!」
マジョリーナ「そうなる前に、全部ぶっ壊してやる!!!」
溢れ出すバッドエナジーはもはや本人達の意思とは無関係に暴走を始めました。
黒っ鼻に取り込まれ、その自我も、命も失いつつある体で、恐怖に怯え、嘆きながら、三幹部はその身を黒く染めてハッピー達に襲いかかります。
「グオオオオオオオオオオオオオアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!」
ハッピー「その怒りを、どうか静めて」
一瞬。光が世界を包みました。
ウルフルン「あ?」
アカオーニ「お?」
マジョリーナ「え?」
真っ白な空間に浮かぶウルフルン、アカオーニ、マジョリーナ。黒っ鼻で変貌した体は元に戻り、そして温かな光に包まれていました。
ハッピー「――――。」
ウルフルン「なんだ……そうなってやがる!?」
そこにいたのは大きく翼を広げた大きな大きなキュアハッピー。穏やかなその微笑みが自分達に向けられているのに気づき、3人は途惑います。
「「「うぉぁ!」」」
そっと大きなハッピーはその手に3人を優しく包み、自分の胸に当てて穏やかに語りかけます。
ハッピー『わたしは、絵本の中の皆が大好き』
ウルフルン「はぁ!?」
アカオーニ「何言ってるオニ?」
ハッピー『本当は狼さんも鬼さんも魔女さんも、とっても優しいんだよね……。絵本がたくさんの希望や夢を与えてくれるのは、みんながいてくれたおかげだもん。』
『ありがとう。』
そっと微笑みかけるハッピーに、顔が緩む3人。
ウルフルン「あ、ありがとうだと……」
アカオーニ「そんなことを言われたのは初めてオニ……」
マジョリーナ「そんな風に想ってくれる人もいるのかい……」
ハッピー『良かったら、わたしと友だちになって欲しいな。』
じんわり視界がぼやけるウルフルン。まさか自分の目に涙が浮かんでいるとは、本人は思いもよりません。
ウルフルン「―――――」
アカオーニ「―――――」
マジョリーナ「―――――」
ハッピー『みんなで一緒に遊ぼう。きっと、とっても楽しいから』
ウルフルン「――――――本当にいいのか?こんな…オレ達なのに……」
アカオーニ「オニ……オニ……。」
マジョリーナ「うぅ―――――。」
温かなその温もりは、何よりも強い浄化の力。3人の体からバッドエナジーが抜け、ウルフルン、アカオーニ、マジョリーナは本当の姿に戻りました。
ピース「これって―――――――」
そこにいたのは小さな3匹の妖精でした。
ビューティ「ウルフルンさん達はメルヘンランドの妖精さんだったんですね!」
ポップ「皆の衆―――――!!あ、ウルルン、オニニン、マジョリン!ソナタらでござったか!!」
ミラクルジュエルを抱えて追いかけてきたポップ。
ポップ「長く辛い旅でござったな――――――。おかえりでござる……」
ウルルン「ただいま」
オニニン「ただいま」
マジョリン「ただいま」
・・・・
浄化された最後の黒っ鼻。そこから出てきた最後のキュアデコル。ロイヤルクィーン復活のための最後の鍵。
ハッピー「最後のデコル!」
しかし、ハッピーがその手に取ろうとした瞬間。黒い影がデコルを奪い去ってしまいます。
ジョーカー「ンフフフフフ。使えない連中でしたが、時間稼ぎにはなりました」
弄ぶように最後のデコルを掲げて甲高い声で冷たくあしらうジョーカー。
ハッピー「ジョーカー!!!」
ハッピー達の前に、最後に残った強敵が不気味な笑みを浮かべて立ち塞がります。
ジョーカー「お疲れ様デシタ。皆さんが戦っている間に、世界中の人たちからバッドエナジーを全て搾り取りマシタ。今記念すべき最後の目盛りが刻まれます。」
そうして18のカウントは一周し、再び針は真上を刻みます。それと共に震える大地と空。
ポップ「まずいでござる!ピエーロが復活してしまうでござる!!」
ジョーカー「ンフフ。その手土産に、まずはアナタ方の命を貰いマス。」
ジョーカーは、浄化したハズの三幹部のバッドエナジーをその手に握り締めていました。
ジョーカー「三幹部から出たこの醜い心――――いいえ、これは世界中の誰しもが持つ悲しみ、孤独、憎しみの心。この世界の絶望とデコルを―――――――混ぜ合わせて――――――」
デコルの力と最強のバッドエナジー。それを使ってジョーカーは5枚のカードを作り出しました。
ジョーカー「はい、出来上がり。」
それを地面へと打ち付けると途端にカードは人の姿となり、その形をキュアハッピー、キュアサニー、キュアピース、キュアマーチ、キュアビューティへと変えていきます。
漆黒の闇の光を放った彼女達は、ハッピー達とうり二つな姿をしていました。しかし、その目は冷たく、一切の希望を捨てた何も映らない瞳でした。
ハッピー「バッドエンド……プリキュア……」
それは絶望のみで作られた悪しき心。悲しき体……。
ジョーカー「そうデス。果たして、アナタ方の希望の力で、この絶望のプリキュアに勝てるでしょうかぁ?」
同じ姿をした希望と絶望がここにぶつかり合う。
圧倒的な絶望の力に押される5人。
希望の光は未来に届くのか……。もう一人の自分との壮絶バトル!!
次回、「最悪の結末!?バッドエンドプリキュア!!」
最後に追い詰められたその時――――――ついに奇跡の光が5人を包む。
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