Hatena::ブログ(Diary)

DJホームラン

120402

『ドライブ』を観た


2012/04/01の映画の日シネ・リーブル池袋で鑑賞。2012年に映画館で観た13本目の映画。


f:id:muteit:20120402235301j:image:w360


最初に粗筋を簡単に説明したいのですが、これが意外と難しい。不用意な言葉で説明しようとすると、この作品の本質を取りこぼすような気がして仕方ない。強引にジャンルで括るならクライムサスペンス風味のラブストーリーです。


主人公は本業は車の整備工、副業で映画のスタントマンも勤めている男です。卓越したドライビングテクニックを持つ彼には犯罪者を安全な場所まで護送する凄腕の運転手という裏の顔もあります。

この主人公と、彼の自宅アパートメントの同じ階に住みながら服役中の夫の帰りを待つ人妻(とは言ってもまだ20代前半)とのラブストーリーが話しの主軸です。そして、刑務所から出てきた夫と主人公がある強盗事件に巻き込まれる所から、このラブストーリーは過激なクライムサスペンスへと展開していきます。


f:id:muteit:20120402235333j:image:w360


あえて言うなら、非常に映画らしい映画です。派手な飛び道具には頼らず、きちんとした物語を、説得力のある画と、無駄の無い演出で描いています。最近、この手の題材の作品だとアジアの過激なノワールものが目立つんですけど、そしてその手のノワールものも勿論面白いんですけれど、こういったアプローチからでもまだまだ魅力的な作品は撮れるんだな、と再認識しました。


無駄の無い演出とは具体的にはどういう事なのか軽く説明しておくと、台詞には頼らず、役者の表情や、カット割のテンポ、ちらっと画面に映り込むマテリアルによって、物語の機微を表現する所がとても上手いんです。


例えば、ヒロインの元に、夫の弁護士から「あなたのご主人が来週出所する」という電話がかかってくるシーンがあります。

下手な監督ならこういうシーンは「電話のベルが鳴る。ヒロインが受話器を取る。『もしもし?…え、夫が来週出所?!』と驚くヒロインと、その姿を見て戸惑う主人公」みたく演出してしまう事でしょう。だけど、『ドライブ』はそんな不細工な事はしない。


ヒロインはこれから出勤するため髪を整えている。

主人公に車で送ってもらえる、つまりデート気分を味わえる喜びからなのか、少し微笑んでいる。

そこへ電話のベルが鳴る。

だけど、ひとまず髪留めを付け終えるため、ヒロインはまだ受話器を取らない。

そして直後に画面が切り替わる。

主人公がヒロインを職場まで送り届ける夜道のドライブシーン。

先程とはうってかわって思いつめた表情と声のヒロインが絞り出すように呟く。

「…夫の弁護士から電話があって、来週出所だって」

その言葉を無言で受け止める主人公。


言葉にすると長くなります。でも、これが映像になるとシンプルかつスピーディ、そして主人公とヒロインの感情が最小限の手数で画面から雄弁に伝わってくるように出来ています。実に洗練された語り口。


あと、この無駄を削ぎ落とした演出が存分に活かされた暴力シーンもまた素晴らしいんです。

あるシーンでは、細かいカットを自然な手つきで重ねながら、少しずつ不穏な暴力の気配や緊張感を高めていき、ここぞという所で一気にガツンと事を起こす。

またあるシーンでは、凪のような空気の中で唐突に何の予兆も無く不条理な暴力を炸裂させる。

どちらにも言えるのは、テンポと構図、そして音(これが一番重要!)のおかけで、これら暴力シーンには大変な生々しさが漂っているという事です。この感じは北野武の『ソナチネ』辺りに近いかも知れない。


f:id:muteit:20120402235450j:image:w360


暴力シーンがやや過激すぎるきらいはありますし、役者の表情の細かい変化や、画面の細部に施された工夫に注意しないといけないので、万人受けする映画では無いかもしれません。アメリカでは「ワイルド・スピードみたいな映画を期待してたのに!」と訴訟を起こした人もいるそうです

だけど僕は「久しぶりに映画らしい映画を観た」という満足感を抱きました。何て言えば良いんだろう。高校生の時にDVDで北野武作品を観たり、映画館で新作として封切られれた『バッファロー'66』や『トラフィック』や『マグノリア』を観た経験が、僕が本格的に「映画って凄いものだ」と思うようになった発端なんですけど、まだ経験値が低い時に初めてそれらの映画を観て感じた新鮮な衝撃に近いものを、この『ドライブ』から感じたんです。


D

2003 | 03 | 04 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 | 12 |
2004 | 01 | 02 | 03 | 04 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 | 12 |
2005 | 01 | 02 | 03 | 04 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 | 12 |
2006 | 01 | 02 | 03 | 04 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 |
2008 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 | 12 |
2009 | 01 | 02 | 03 | 04 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 | 11 |
2010 | 02 | 07 | 08 | 11 |
2011 | 01 | 02 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 | 12 |
2012 | 01 | 02 | 03 | 04 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 | 12 |
2013 | 01 | 02 | 03 | 04 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 | 12 |
2014 | 01 | 03 | 04 |