占いと意志決定

ラクルブック

ゲーム会の帰りにツタヤに寄った。飯島直子さんがテレビで紹介したとかで、『魔法の杖』(ISBN:478971859X)という本が売れているらしい。

魔法の杖―THE ORACLE BOOK

ツタヤでも予約が殺到していて、もうその店舗だけで40人くらい予約が入っている、ということなのだった。

書物からお告げ(ORACLE)を得るには、本の適当な所を開いて、そこに書かれてあることを読むのだそうだ。

さきの血液型の話で書いた通り、僕は、占いというのは信じたい人が信じればいいと思っているので、これが売れることに関してはとくに思うところはない(それとは別に、僕は積ん読が多いので、ランダムに見開き2ページ読めば本の機能が果たされるという使い方ができる人には羨ましさを覚えるが…)。

占星術やそのほかの原理にのっとっていなくても、選択肢の中から自分が「選んだ」行為そのものに神秘性があると考えられるのなら、単なるくじ引きでも十分に信ずるに足りる。(まぁだから、原理の正当性はどうだっていいわけだな)

逆にもし、この本に、頭から順に日付が振られていて、1日1ページずつ読み進める「日めくり占い」の体裁になっているのであれば、あまり売れないだろう。

僕は新聞の占い欄を見るときには、自分の星座には無関係に、「じゃぁ今日はこれ」と、完全にランダムに、一番最初に目に入ったものを読むことにしている。そこに書かれてある知恵(「噂話はするな」とか「勇気を持ってチャレンジ」とか、そういうスローガン)は、守ったからといって、大して害になるものではない。

カードとタイル

話は変わるが、一応続いている。先日買ったゲーム「ラッツィア」は「ラー」という旧作のリメイクで、軽く遊べるように手直しがされている。一番の違いは、コンポーネント*1で、「ランダムに1枚めくる」べきタイルが、カードになっている点だ。

これには大きな違いがある。

厚紙製のタイルであれば、袋に入れたり、裏向きにばらばらに積み上げたりして、そこから1枚選んで引いてくることができる。この「引き」のよしあしに、プレイヤーの「運」といった要素を結びつけて、あたかも何かの神秘的な技術であるかのように、ゲームの一要素とすることができる。

これがカードになると、バラバラに積むのは難しいし、袋に入れて1枚引くというわけにもいかない。一つの山(パイル)にして、一番上のカードをめくる、というのが基本的な使い方だ。

しかし、それだとプレイヤーは「選ぶ」ことができない。袋の中からランダムにタイルを1枚取り出すということと、十分にシャッフルされた山から1枚めくる、ということは、数学的には同じだが、プレイヤーの感覚には大きな違いがあるだろう。

カードが山になっているということは、最初のシャッフルが行われた時点で、どの順番でカードが出てくるかが、決まっているということでもある。すでに未来は「決まっている」ことになる。

もっと極端に言うと、山札以外運の要素がないゲームで、全プレイヤーがもっとも合理的で的確な判断をするのならば、カードをシャッフルした時点で、そのゲームの勝者が決まってしまっているわけだ。

…さすがにそれは極端すぎです…

…そんなことを考えながら「ラッツィア」のルールを読むと、この問題に対する素晴らしい解決案が、ルールに実装されていた。

「シャッフルしたカードは2つの山にしてください」(好きなほうの山から選んで取っていい)

結論

結果が大差なくとも、自分で意志決定をした、ということが重要なのかも知れない。

*1:ゲームに使う道具のこと