『にき鍼灸院』院長ブログ RSSフィード

2018-02-17 「管理柔整師」って何?鍼灸師は、どうすればいいの?

 2018年が開けて初めての滋賀漢方鍼医会の月例会、しばらく私用で休み気味だったダブルライセンス取得のため柔整師の国家試験が目前という会員が久しぶりに出席してきて、盛んに「管理柔整師」「管理柔整師」という言葉を連呼するので、概要についてはその場で聞いて「きつい内容やなぁ」とびっくりもしていましたが、気になったのでネットから調べてみました。新規開業はH30年3月までに? 4月以降は実務経験と研修が必須に! - 整骨院開業・経営のヒント 全柔協

 「えっ!!、そんな大胆なことになっていたの?「と、詳細を読んで二度びっくりしました。要するに2018年4月以降に柔整師が健康保険取り扱いの前提で開業をしようとすると、管理柔整師という資格が別途必要になるということです。管理柔整師そのものは柔整業務に一年以上従事していれば交付されるものですからそれ自体は特別に難しい話ではないものの、ポイントは既卒者にも適応されることであり当然ながら養成学校の学生にも適応されるというところです。追記:さらに2022年までに段階的に修業年限義務が延長され、養成学校の3年間に就労が3年間必要になるということです。コネがないと開業準備のために整骨院へ勤務させてもらえないのは明白で、柔整業務は柔整師だけで行っていく形態に変化することが確定的です。

 2000年に福岡地裁柔道整復師の養成学校新設不認可に対する裁判で、職業選択の自由というところから国が敗訴して養成学校の新設ラッシュを迎えます。それまでは「あはき法」の中に、視覚障害者の職域と経済を守るためにあんま・マッサージ・指圧師の養成学校新設については当分の間禁止するという事項があり、元々は柔整師も同じ法律の中にあったということで養成学校新設要望があっても認められていなかったのでした。この裁判結果から、鍼灸師の養成学校新設ラッシュにもつながってきています。

 この養成学校新設ラッシュはどのような結果をもたらしたのでしょうか?私が今更ながら考察するまでもないのですけど簡単にまとめると、まずは学校経営のために人数確保優先で入学試験のレベルが下がり、当然ながら医学知識を習得するのに学力の満たない人材までもが入学しますから卒業へたどり着けないケースも増えて、全体の「質」が低下しました。また学校は特色を出すために夜学だけでなく社会人が入学しやすいように短縮日程のプログラムを組んだりしますし、その反面で国家試験の突破率は入学者募集の絶対条件ですから削れるだけ実技の時間を削って机の上での学習中心となってしまいました。学生側も全体の質が低いですから実技時間が少ないことに危機感を感じないので、柔整師はほかのアルバイトばかりしていたり鍼灸師も卒業するまで鍼を握ったのは学校の中だけ、ひどいのになると自分の身体への刺鍼練習サエしたことがないといいますから、開いた口がふさがりません。それから養成学校側の理屈ですけど鍼灸と柔整のダブルライセンスが推奨されるようになり、返済しなければならない奨学金がふくれあがるなど問題を知りつつダブルライセンス取得を目指す人は多くなりました。でも、結果は冒頭から書いているとおりです。

 そしてもっと憂慮すべきことは、養成学校が限られていたために施術所数が需要とバランスを保てていたのに、高年齢から入学したり適当な就職先がないためにいきなり開業する人が増えて施術所数が需要を上回り、特に柔整業界は所得を奪い合って業界全体が苦しむことになってしまったことでしょう。これは歯医者の現状を見れば一目瞭然で、コンビニの数より歯医者の方が多いといわれて久しいのですけどそれでも歯医者は増えている、この矛盾の通りです。2000年には既に歯医者が増えすぎて所得が伸びないという問題が表面化していたはずなのに、どうして裁判までしていたのでしょうね。

 ちょっと話がそれますけど、歯医者の養成学校が少なくならないことには理由があります。太平洋戦争後には歯医者というジャンルは非常に嫌われていたというか、「人の口の中を見て仕事をするなんて」といういわれ方さえしていたそうですから、仕方がないので歯医者にでもなろうかと職業選択では最後の最後だったそうです。そこで国民の口腔事情をいち早く改善させねばということで、国が積極的な依頼をして歯医者の学校を作ってもらったという経緯があります。ところが健康保険取り扱いの対象になって高額所得者の部類になってくると、職業選択の人気が高まります。それでもまだ歯医者の施術所数が足りないので若い人は助手として経験を積んでから開業をしていくというスタイルでしたが、施術所数が充足してくると若い人を受け入れる余裕がなくなってしまいました。助手経験がなくても卒業をしたなら仕事をせねばなりませんから、経験不足でもいきなり開業をすることになってますます施術所が増えていき、患者と所得を奪い合うことが続いています。しかし、国が積極的な依頼をして学校を作ってもらった手前「もうやめてくれ」とはいえません。学校経営者も自分たちが収入を得る手段としてきたのですから、簡単にやめてしまうことができないので、まだ歯医者は増えています。

 さらに話がそれてしまいますが、獣医の数が増えないように調整していたことが問題になりましたけど、確かに犬猫病院の獣医については充足しているのですが最も獣医を必要としている畜産現場の獣医はずっと不足したままです。畜産現場は24時間体制でなければなりませんし、口蹄疫鳥インフルエンザなど感染症が発生したなら終息するまで全く休みの取れない現場です。日本の人口は減少サイクルに入ってしまいましたが、世界の人口はまだ増え続けており畜産の増産も求められるのですから、獣医は増やさなくてはならないはずです。無理なことはわかっていての冗談ですけど、歯医者の学校を獣医の学校へ転換するくらいでちょうどなんじゃないでしょうか?

 話を戻しまして、緊急に人材が必要だという事情はあったにしても業界を育成するには、計画が重要だということは明白でした。ところが柔整の養成学校新設の裁判後から各種の医療学校が乱立し、他人事ながら特に悲惨に感じるのは理学療法士です。理学療法は昭和40年代にリハビリの概念が広がったことから派生してきた職種であり、病院勤務の中でも健康保険の温経が大きかったことから黎明期を過ぎると一気に人気の職種となっていました。私が盲学校に在学していた当時、筑波・大阪府・徳島の三つの盲学校だけに理学療法科があり、病院勤務が確実なこととマッサージ師ではなく健康保険の関係から給与の高さが保証されていたので多くの人が越境をして入学を目指しました。

 それが新設ラッシュになると定員が3.8倍、実に毎年14500人が卒業してくるというのですからその数は看護師に迫っています。けれどリハビリ要因がそこまで必要とはされませんし、実際にそれほどのリハビリ室と人員を見ません。どう考えても看護師の方が数が必要ですし、リハビリを24時間体制でやる必要もありません。ということは、理学療法士の資格を取得しても病院へ就職できるのはほんのわずかであり、しかも年数が経過して人件費が高騰すると退職を迫られるのが見え見えです。老人施設でリハビリに携われればまだいい方で、医療関係へ就職できない組も相当数でしょう。あの花形職業は、見る影もありません。作業療法士なども以前の定員の2倍になったということで、入れ替わりの少ないセクションですから就職難でしょう。何のために医療の専門学校で勉強をしたのか、わからないですね。

 さらに老人施設では「みなしPT」の制度を使って柔整師に業務を行わせると人件費が抑えられるのであり、鍼灸整骨院といいながらも鍼灸師にマッサージをさせることでここでも人件費が抑えられていて、本来の免許とは違う職場へ追いやられながらなんとか仕事を得ているのが現状です。うーん、なんでこんな現状を新卒者たちは受け入れてしまうのでしょう?

 管理柔整師まで話を戻して、じょうほうからすれば雇用保険が証明になるといいながらもガバナンスのしっかりしていない面が鍼灸もそうですが柔整でも未だにあるので不安定ですし、老人施設などでの勤務は柔整業務と見なされるのかも未確定ということなので、これを回避するために既卒者は自宅の一部などを使ってとりあえず開業届を出せば、まだ救われる道があります。ただし、保健所からの現地検査にパスできるのか保険請求の組合加入の義務や経費など、ハードルはたやすいとは思えません。

 問題は在学生で、2018年3月の新卒者こそ7日間という短期間で管理柔整師が取得できるとありますけど、そんな都合のいい話はないでしょう。あるとすれば「資格条件を与えてやるから金を出せ」と、粗悪な業者が勧誘してくるのでは?(追記:しかも5月末日までの特例処置ということですから、よほどコネがない限りは実質的に新卒者に管理柔整師の資格は与えられないということです)それから在校生の危篤利益だけは養成学校としては守ろうとしたはずですけど、それをばっさり切ってしまえるところが柔整業界の政治力に見えます。2019年以降の卒業者にはもっとひどくて、管理柔整師の資格を得られるようにする代わりにきわめて低賃金での労働を求めたりひどいと修行費として逆にお金を取られるケースが発生してくることなど今までの不正請求体質からすれば十分考えられることであり、今まで便利に雇用されてきてそれを当たり前にも思ってきた鍼灸師にもしわ寄せが来ることも明白です。さらに新しく入学した学生に「実は卒業するだけでは保険取り扱いができない」という説明が入学後にになると、訴訟問題に発展しかねません。

 部外者からですけど、これほどばっさりと新規参入のハードルをあげてしまうということは、健康保険取り扱いが崖っぷちなのだろうと容易に想像できます。いままで不正請求率はどの医療関係の中でも突出してきましたし、数年前に暴力団も絡んだ不正請求事件では実態のない施術所からの健康保険請求がなされていて、柔整業界がそれらを把握できていなかったという事実は衝撃的でした。しかも組合数が多すぎて、歯医者と違って自浄作用が全くというほど働きませんでした。これらの事件は不正請求率が高くても健康保険に占める金額ベースが低くて関心を集めていなかっただけだったのですけど、見逃してはならない事実だと認識されるようになりました。そこで開業権は免許そのものにあるのですから保険取り扱いをしなければいくらでも新規参入はできるといいながらも、柔整業では業界が牛耳っている保険取り扱いがなければ実質的には経営が成り立たないので新規参入を制限する方向へと動いたのでしょう。

 次に考えられることは不正請求の徹底追放で、不正請求が発覚したなら組合から除名され復帰の道はないということになるのでは?現役学生は健康保険取り扱いが得られると期待して入学してきたのに、その権利をばっさり切ってしまうのですから既得者保護が柔整業界としては第一なのでしょう。法律を厳密に解釈すれば、骨折の応急処置と脱臼の制服にのみ柔整業務からの健康保険取り扱いが認められているのであって、肩こりや腰痛など形式的に書き込めるものが流通しており交通事故にまで流用されていますけど、ここを切り込まれてしまうと通常の柔整業務だけでは経営が成り立たなくなってしまいますから、不正請求を徹底追放して現在の形式での保険取り扱いだけは継続できるようにと、守りに入ったように思います。

 さて他人の話ばかり書いてきましたけど、我々鍼灸業界の話です。先ほども少し書きましたが、近年の就職先としては鍼灸整骨院がかなりを占めてきたものの、求人数が2018年の春から既に激減しており、将来的には柔整業務がこじんまりすることでほとんど期待できなくなってしまうでしょう。鍼灸業界が安易に就職先として受け皿に考えてきたことそのものが間違いで、鍼灸整骨院といっても受診者数の四分の一も鍼灸は受けていないことが調査で判明しており、大半は柔整業務の手伝いか免許がなくてもマッサージです。あんま・マッサージ・指圧師の免許を持っていなければ本物ではないのですから、受ける側がいい迷惑ですし法律違反であり健康保険取り扱いからはもっと重大な違反です。あるいは介護保険へと業務拡大と書けば聞こえはいいですが、治療行為はできませんけどこの分野は特に医療の専門学校を卒業しなくても従事でき資格も取れるのですから、何をやっていることやらです。

 やはり鍼灸独自の技術で独立して施術を行うことにつきます。独立開業ができれば鍼灸業界は決してくらいことばかりではなく、明るい未来を自分で引き寄せることができます。調査では国民の鍼灸受診率が4%程度ということで年々下がってきているのですけど、西洋医学の受診率が60%程度であり、逆に言えば固定ファンをつかめれば残り56%というものすごい潜在需要があります。日本の人口は減少サイクルに入ったといいながらも、この数字は現在の施術所数ではとても足りない数字です。

 日本鍼灸の特徴は多様性ということで、「医道の日本」の名刺交換会を読んでいると実に様々な流派や研修会が存在しており、それぞれが効果を出しているというのですから鍼灸という技術が秘めている力はものすごいものがあります。医者以外の医療資格は扱える分野が限られているだけでなく、技術面も限られたものですから新規開拓が難しいといえるのですけど、鍼灸はその限りではないのですから残り56%の潜在需要を開拓すればいいのです。

 ただし、受診率が下がり続けているのですから鍼灸も現状のやり方では先細りのみです。まずは養成学校のカリキュラムが改正されて実技時間が四倍になるのですけど、それでも全体からすれば4%であり医学部の25%や看護の15%からすれば圧倒的に足りていません。おそらく看護学生は長期休暇中に実習とアルバイトを兼ねて病院で働きますから、医学部以上の実習をこなしているでしょう。最低でもこのレベルに実技実習が追いつかないと、卒後すぐ役立つレベルの鍼灸師にはなり得ません。「伝統的医術」と自ら名乗るなら、今の恥ずかしいレベルの実技実習はすぐもう一段の改善をすべきです。

 そして受診率が伸びない最大の理由は、「鍼は身体に刺されるのだから怖い」というイメージを振り払えないことです。鍼=注射針の親戚で絶対に痛い、お灸=熱くてやけどになる、それは違いますよと言葉で説明してもイメージは強烈なので素人は信じてくれません。多くは注射針と同じに思っているかテレビで見かけた中国針の「あんな太いものを」というイメージなのです。体験者が「鍼灸は大丈夫」と話してくれても、信じる人は皆無で切羽詰まらないと来院してくれません。であれば発想をひっくり返して、切羽詰まって来院してくれた体験者を絶対的なファンにしてリピーターにしてしまうことが一番の近道です。

 「にき鍼灸院」の場合には脈診による診察・診断と、オリジナルていしんによる刺さらない鍼という組み合わせでほぼ間違いなくリピーターになってもらえています。最低でも痛くなく刺鍼できなければ、その鍼灸院は繁盛しないでしょう。刺すことにこだわっているのは鍼灸師側だけで、素人さんは鍼灸治療は受けたくても鍼を刺して欲しいとはこれっぽっちも思っていません。私は刺すことにこだわっていなかったなら、いつの間にか本当に刺さらない鍼だけで治療をしていたというだけの話ですが・・・。

 「管理柔整師」というキーワードだけで、随分あれこれ情報とイメージがふくれあがりました。健康保険取り扱いは職種と技術レベルによっては絶対条件なのでしょうけど、技術レベルさえあればこだわる必要はないというのが私の実寒です。

 平成元年に開業をしたとき、鍼灸治療の料金は病院の保険取り扱いの一時払いからすれば高かったので「待ち時間のない予約はコストパフォーマンスからすれば非常にお得」と説明していたのであり、それは間違いでなかったと今でも確信しています。西洋医学では治らない・治せない症状の方が多くそれが回復できるので健康保険取り扱いのない鍼灸院が生き残ってきたのですが、現在では病院の窓口で支払う料金の方が高くなって文字通り鍼灸の方がお得になっています。加えて来院経験者はほぼリピーターになってくれますから、「どうして受診率が4%なの?」という感じです。

 日本は人口減少のサイクルに入っているのですけど鍼灸を希望の光がまぶしい職業とするためには、研修会に必ず参加して技術研鑽を怠らないことが最初の条件です。付け加えるなら痛みや厚さなど我慢が絶対に伴わない施術方法であり、検査機器に負けない独自診察法での精密な診察と診断を脈診を中心とする四診法で確立することでしょう。江戸時代までの漢方医なら当たり前にできていたことなのですから、ちょっと発想を変えて努力も少し余計に頑張れば医療技術習得のできるレベルの人たちなら到達が困難な領域ではないはずです。医療は生涯勉強が続く分野だと覚悟を決めてから飛び込んできてほしいものです。