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あずき残雪 雪解け

2016-11-29

片渕須直監督の「航空史の研究」

| 23:19

映画「この世界の片隅に」が評判を呼んでいる片渕須直監督の趣味?が「航空史の研究」(Wikipediaの記述)なのですが、どういう内容なのかがほとんど知られていない様子なので、手持ちの資料をご紹介したいと思います。大きい画像を見るには、リンク先で「オリジナルサイズの表示」としてください。

学研 太平洋戦史シリーズ42「帝国海軍 一式陸攻」(2003年8月)

記事を3本書いています。目次はこちら。

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アニメ監督にもかかわらず、CGや作図は他の人に任せ、「解説」「考証・解説」「調査・リスト制作」といった仕事をしているのが面白いところです。CGでは交戦シーンだけでなく、機中の食事シーンやトイレをピックアップしています。「生産2446機の全バリエーション」記事(全40ページ)から1ページを抜き出してみましたが、

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資料や図面から、こうやって年代や事象別に延々と調べ上げるのが、元からのスタイルであることがよくわかります。「昭和」が省かれているのは、もちろん書く必要が無かったからでしょうが、何となく後日の「この世界の片隅に」との縁を感じてしまいますね。

そしてこちらは「製造番号リスト」(全8ページ)の扉です。

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こういうレベルであらゆる「考証」を積み重ねた結果が「この世界の片隅に」に結実したのだと思います。もう1冊はこれです。

学研 太平洋戦史シリーズ40「烈風と烈風改」(2003年2月)

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こちらは目次だけ。やはり、3記事で30ページ近く執筆しています。

どちらの本も絶版となっていますが、ミリタリー好きの方は探して読んでみてください。今なら再版すれば売れそうですが(笑)。

最後に余計なお世話ですが、こういう趣味は何らかの政治思想と結びついたものでないであろうということは、映画を見た方ならわかっていただけると思います。ミリタリーには特に興味もなく、ACE COMBAT 04を買ったもののへたくそで全く操縦できなかった(のでムービーも見ていない)私のレポートでした。

2016-11-20

「この世界の片隅に」とこの世界

| 12:14

【1回目】

片渕監督作品なので、ものすごく警戒して離れたスタンスで見てしまいました。これは通り一遍の映画を作る人でないことに絶大な信頼を持っているということと、まあ当然1回だけ見に行くわけではないからです。

1回目で気にかかったことは、一つはすずさんが最初から最後まで、あまり変わらないように感じられたことと、実は義姉の径子さんとリンさんが重要な役回りだったことです。それから、原作では日常を戦争が覆っていく印象だったのが、映画では案外戦時中も普通に、時には楽しそうに過ごしているように響いてきました。

原作を読み直してみると、どれも実は原作通りで、結局自分が読み飛ばしてしまっていたところなのでした。ということで少しスタンスを詰めて2回目に。

【すずさん】

すずさんという自己主張のない人が、激変する環境の中で自分の居場所を見つけていくのが、題名通りこの作品の主題となっています。しかし、この過程がとても緩やかで、連載マンガではこのペースでよいのでしょうが、映画では普通はもうちょっとメリハリを付けるのだと思います。「アリーテ姫」で魔法が解けてお姫様の服を脱ぎ捨てるような転換点を設ければ、初見の客にもわかりやすかったはずですが、そのようにはなりませんでした。ちょっと小津安二郎監督の映画を思い浮かべてしまいました。2回目でようやくそのテンポがわかってきた感じです。

【径子さんとリンさん】

世間の言いなりに生きている、当時としては「普通の女性」がすずさんだとすれば、自分から何かを求めていく女性が径子さん、一方で選択の余地無しに過酷な運命にさらされているのがリンさんで、三者の対比が映像になるとはっきりするのですね。原作を斜め読みしている段階では、径子さんはただの口うるさい小姑としか思っていませんでした。「アリーテ姫」でも三者の生き方の対比が描かれていたことを思い出しました。

そして、最後に登場する戦災孤児が、この三者全てに対する救済になっているのが恐ろしいところで、ここは人前では思い出すのもはばかられます…。

ちなみに女性のリンさんの立場にあたる男性が、軍人ということになるのでしょうか。どちらも凛々しく描かれています。

【嫁】

日常生活が詳しく描かれていたので、この時代には好き嫌い以前に嫁がいないと生活していけないことがよくわかりました。下部構造が上部構造を規定するのです。人が結婚しなくなったのは、ガスコンロや炊飯器や、コンビニのせいでもあるのです。

【戦争】

この映画の評で「戦争が日常を破壊していく」と書かれているのをよく目にしますが、自分が感じたのは「戦争が日常になっていく」でした。東日本大震災で、停電や断水や、ガソリンが無いこととか、空間放射線量を気にしながら生きることが「日常」になってしまった経験と重なりました。そんな中でも泣き叫ぶわけでもなく、へらへらと笑って過ごしていくものなんですね。

登場人物たちは空襲や戦死に麻痺してしまっているようにも見えますが、当時は病気も治らなく、兄弟の一人は子供のうちに死んでしまうような環境だったし、戦争もそんな避けられない死の一つと納得していたのかもしれません。この作品には戦争による被害に泣いたり、反戦を声高に叫ぶ人が全く出てこないですが、これが現代人のバイアスをかけない、当時の本当の姿だったのかもしれません。これは映像になって衝撃的でした。

【この世界】

少なくとも日本ではしばらく戦争は起きていませんが、一定の間隔で大地震や火山噴火が突然起きて多数の人が死ぬことを、多くの人が仕方ないと思っています。誰もが過酷な競争とストレスにさらされ、何万人もの人が自殺していくことや、輸送のために毎年何千人もの人が交通事故死してしまうことは、後の人々から見ると戦争と同じレベルで異常なことなのかもしれません。もしかすると人間に寿命があることすら…。本当に渦中にいる人には、それが何かわからないのです。でもこんな世界で、どこかに片隅を見つけて生きていくしかないのですね。

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2016-11-19

サザエさん(フジテレビ) 2016年12月放送予定

| 19:15

サザエさん」の雪室さん脚本作品です。

ああ、もう1年が終わる…。

「この世界の片隅に」に水玉のヨーコちゃん

| 19:01

この世界の片隅に」2回目です。地元ではやっていないので高速道路で流山に。今日から上映回数が減ってしまうのですが、席は半分以上埋まっていました。だんだん地方でも認知されてきたかも!

感想は明日にでもと思っていますが、ちょっと面白い発見がありました。

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最後の最後に出てくる、とても重要だけどキャストすらない戦争孤児がいるのです。この子は原作でも名前が付いていなくて名無しさんだと思っていたのですが、絵コンテでは「ヨーコ」という名前が付いているのです。

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腕にすがるヨーコと言えば、「あずきちゃん」第17話の榊原ヨーコしか無いでしょう。しかもこの話は「この世界の片隅に」の片渕監督が絵コンテを担当していて、たぶんこの水玉模様の服はこの話しか使っていなかったような気がするので、きっと片渕さんの好みです。勇之助の右手は頭の後で存在しているのでしょうか?

この世界の片隅に」の水玉模様は、映画を見た方はわかると思います。単なる偶然なのか、どこかがつながっているのかはわかりませんが、何だか気になってしまいました。

真面目に考えると、「ヨーコ」は「日本人少女ヨーコの戦争体験記」から取ったような気もしますが。

りんすりんす 2016/11/20 18:13 ZoaZoa日記
20161117
「この世界の片隅に」の化学

こちらの方の考察も面白かったです。
キャラ名=元素記号由来説からのヨーコ=陽子説です。

mycophobiamycophobia 2016/11/20 19:45 このリンク先すごいですね!
こうの史代理学部というのは知ってましたが、こんなことになっていたとは。

2016-11-13

とりあえず名前は確認

| 01:02

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MOVIX宇都宮まで行ってきましたが、観客は10人強といったところ。2時間はあっという間。そんなに泣くような作品でもないような気がしました。原作は読んでいるのですが、1回目はいつも、作品と自分の距離感がつかめていなくて、少し反芻してからもう一度見に行かないと…。

大会大会 2016/11/19 19:07 砂糖が150円くらいになったらどうしよう、とかいうセリフを聞きながら、450円のジンジャーレモネードを飲み干して、複雑な気持ちになりました。

買うかどうか迷いましたよ。映画館の飲み物は高いから(^^;

mycophobiamycophobia 2016/11/19 21:46 ついに我らがカントクがメジャーになる日がやって来たかもですね。

この時代の貨幣価値はいつもよくわからないです。むしろ時代劇の両の方がピンときます。同じ円なのが難しいのでしょうか。でも日本って、円になってから一度もデノミしていないのですね。

2016-11-10

見ないで書く「この世界の片隅に」の感想

| 22:58

今週末公開の劇場作品「この世界の片隅に」はものすご〜く楽しみにしているのですが、見るときっと感想が書けなくなるので、今のうちに言いたいことを言ってしまおう!という企画です。

片渕須直監督はしばしば、「映画は観客の頭の中で完成する」と言っています。しかし、これは一般論として言っていると思ったら大間違いなのです。片渕さんは確実に、「観客の頭の中で完成させる」ことを意識して作っています。「アリーテ姫」(2000年)で既にその意図はびしびしと感じました。そして「マイマイ新子と千年の魔法」(2009年)で、それは一つの完成形として示されたと思います。

通常の映画は、作り手の考えた空想に、観客の側が乗り込むことで完成します。現実では決してありえない体験を、観客は主人公になりきって楽しんだり、恐怖したりします。これはもちろん、最高のエンターテインメントです。「楽しかった」「怖かった」「アクションが最高」。見終わった後、感想を述べるのも概して簡単です。(簡単でない映画もたくさんありますが…)

しかし、片渕さんの映画は観ると自分に跳ね返ってきます。感じるのは自分の忘れていた記憶だったり、体験だったり、ふだんは意識しない人生観だったり、考えなさいと言われていないのに考えてしまうのは、ほとんど催眠術のレベルです。計算して作ってあるはずなのに、映像自体は淡々としていて押しつけがましさがありません。

その結果、映画を見終わった後、謎の感動をしているのに理由がわからない、感想が書けないという、おかしなことになるわけです。自分の深層心理というのは、最も語りにくいことですからね…。片渕さんはすっかりこの「謎の技術」を身につけてしまったようで、「この世界の片隅に」も事前試写を見た方の感想を見ると同じことになっているようです。

ではこの「謎の技術」と、片渕さんの売りの「徹底的な考証」は関係があるのでしょうか? あるような気もするし、実は全く別のことのような気もするし、よくわかりません。ただ、考証がすばらしいからよい映画だというほめ方は、何か的外れに感じます。防府に一度も行ったことがなく、昭和30年に生まれてもいなかった自分にも「マイマイ新子」はすばらしく感じられましたので。

片渕さんを知ったのは「あずきちゃん」(1995〜97年)の中の飛び抜けた演出家としてでした。「あずきちゃん」も自分に返ってくることの多い作品だったので、決して偶然ではなかったと思います。そんなわけで、最後に片渕コンテあずきキャプチャ集を。

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あとちょっとだけ余計な心配ですが、第二次大戦中にアメリカが非戦闘員に向けて攻撃していたことは、日本人なら誰でも知っているし、今となっては当時の行動を非難する人もいないでしょうが、おそらく多くのアメリカ人にとってはショッキングなことだと思うんです。原爆降伏を迫るためにやむを得なかったという理屈はありますが、市街地への空襲は言い逃れできないですから。これから海外に広まっていく中で、そこに変な色を付けて見られないといいなと思っています。