貸し本棚。


なんとなく思いついたアイディアを適当に書き殴ってみる。
disるもパクるも可。


RSSリーダの読み逃し記事をだらだらと読んでて目についたフレーズ。

「知的生活とは絶えず本を買いつづける生活である。したがって知的生活の重要な部分は、本の置き場の確保ということに向かざるをえないのである。つまり空間との格闘になるのだ。そしてこの点における敗者は、知的生活における敗者になることに連なりかねないのである」

http://d.hatena.ne.jp/umedamochio/20061228/p1 より。又引用。


本の保管場所の問題ってのは,本読みのひと,特に20代あたりからは非常に強く感じるところだと思う。読んだ本は捨てればいいだろう,という見解もあるだろうけれど,いざというときに手元にないというのも問題。


過去のブクマを漁ると,この問題に対して試行錯誤を続けたのが「わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる」のDainさん。

1. 本棚に二段、三段と詰め込む(奥が単行本、手前を文庫本にすると両方見える)
2. 床に積む(最初はタワー乱立→そのうち山脈のようになる:いわゆる積ン読ク山)
3. カラーボックスを押入れに積んで、押入れを本棚化する
(中略)
10. イナバの物置を買う
11. 近所に家を借りて本置き場(≠書斎)にすることを考える(が、もったいないのでその金を本代につぎ込む)
12. トランクルームを借りるが、カビさせる(このへんで背が見えるように保管しないと持ってても意味がないことに気づく)
13. まとめて友達に進呈することで、本棚を「間借り」する(勝手に売ったりしない/好きなときに読めることが条件): JOJOの奇妙な冒険、スラムダンク蒼天航路といったマンガはこうやってしのいだ。注意点:貧乏な友に預けてはならない。金に困った奴がJOJO全巻(杜王町篇までの全巻)を売っぱらったため、買いなおすハメになった
14. あることは分かっているが、サルベージがめんどくさいので、同じ本を買いなおすようになる。例:「星の王子さま」は3冊、「カラマーゾフの兄弟」は4冊ある(はず)
15. なじみの古本屋に「売る」のではなく「預ける」ことを提案するが、断られる
16. スキャナで取り込んだ後、売ればいいことを閃く…が、取り込み中に読んでしまい作業が進まない(別名:大掃除症候群)
17. 図書館に寄贈するが逸散する(図書館どうしで本の交換をしているようだ)
18. 死ぬまでにこの山を読みきることはできないと覚る
19. (結婚を機に)ごっそりと売る/譲る/捨てる
20. 図書館を利用するようになる 【←今ここ】

図書館を利用するようになるまでの20ステップ


貸し書庫みたいなビジネスはすでに存在するけれど,そうしたものも完全な解決策にならないということがこのへんを見てると実感させられる。自分も蔵書の大半を実家においてる*1んだけど,手元にないんだったら図書館使った方が早いんですよね。
スキャナ取り込みはOKな人とNGな人がいるけれど,その作業自体が大変で,そんな時間があったら積んでる本読むよ,という。業者に委託してスキャンしてもらうというビジネスは,海外ならありうるが,これは著作権の問題がからむので(日本では)無理。


まあ読書家にもさまざまな人がいて,読んだらすぐ捨てる人とか,売る人とか,買う時点でカバー捨てる人とか,そもそも立ち読みと図書館でほぼ消化する人とか,いろいろいます。ただ,買った本を手放すこと,そもそも「自分の本」をもたないことのリスクは,冒頭の梅田氏のコラムにあるとおり。図書館に寄贈するという手もあるけれど,利用したいときに誰かに借りられてたり,あるいはそもそも自分が引っ越してしまうとかをすれば意味がない。
もちろん大金持ちでやたらでかい家建ててる人や,自宅の他に書庫をもってる人もいる。梅田氏のように広い家のもてる海外に行く人もいる。こういう生き方のできる人はいいけれど,やっぱりほとんどの人はこういう暮らしは難しいのではないか,と思うよ。


で,考えた。自宅でない場所に,比較的安価に本を預けられ,いつでも利用でき,また「背」が見えるサービス。

名付けて「貸し本棚」


基本的には貸し倉庫に近い。預かった本をトランクルームみたいな感じで有料で保管する。利用者は蔵書を郵送し,料金を支払うだけ。
ただポイントとして,本を一冊単位で管理する。ある本をちょっとだけ読みたいときに連絡すると,その本だけを郵送してくれる。もっとも金額的には箱単位で発送した方が安いだろうから,本のリストを送るとそれらの本を送ってくれる,みたいな。

また,自分がどの本を預けてたっけ,といった問題や,「背が見えない」ということについては,本の一冊一冊の書誌データを管理したうえ,背画像の撮影もして,九州大で実験してる仮想書架的なWeb上のインターフェイスで利用できるようにする。背画像は基本的には随時撮影だが,過去に利用者があり撮影済みのものは流用もあり。
利用者は図書館の蔵書検索の要領で本を検索してもいいし,背の見える仮想書架インターフェイスも使える,と。


発想としては「図書館に寄贈すると不都合だというのなら,自分専用の図書館をつくってくれるサービスがあればいいじゃん」。あとはWeb上の本棚サービス*2と貸し書庫の融合でしょうか。
背画像には著作物性のあるものはほとんどないので,撮影もほぼ抵触せず合法的なサービスとして行える。書誌の入力は(同人誌などの特殊な資料を除いて)図書館のノウハウがほぼそのまま利用可。なので非常に余ってる司書有資格の人を起用(マテ

たぶん利用料と運営費のバランスをどう取るか,というところに問題はありそうだけれど,こういうのは一回預けたら継続的な利用が見込めるから,長期的なビジネスとしては十分旨味があるような気がする。ついでに「この本を預けてる人はこんな本も預けてますね」といったおすすめサービスを用意してアフィリエイトかなんかつなげば,いろいろと副収入も見込めるかも。


で,妄想はさらに広がる。


Web上の本棚サービスは,ほかの人がどんな本を読んでるか,というのを見られるのが面白い。自分と似た趣味の人の蔵書を眺めてると,それだけで発見があったりする。
なら,この「貸し本棚」でもそれをしましょうと。もちろん選択制(公開したくない人もいるでしょうから)だが,公開するとやや安くする方向で。


でさらに,ほかの人の書棚を眺めていて,読みたくなる本があったとする。で,近くの図書館にあるかというとない。じゃあ買おうかとするともう絶版。主立った古書店サイトを見ても出物がない。
でもこの人はもってるなあ,いいなあ。


で連絡する。
「じゃあ貸しましょう」。


↑これを仲介するサービスもする(何なら物々交換とかしても可とする)。


現物は「貸し本棚」側にあるのだから,通常は本人のところに送るそれを,別の顧客のところに送るだけ。「貸した」のだから当然送り返してもらわないといけないが,それについては「貸し本棚」としては責任をもたない。要するに,顧客同士のやり取り。*3
送料・手数料などは貸出しを希望した顧客に請求する。決して安くはないと思うが,実際に現在の大学図書館間で行っている本の貸借も,同様の条件でそれなりに利用がある。貴重な資料というのはそれだけ需要があるんだろう。どこでも売ってるような本をわざわざ遠方から借りる人は少ないと思うが,もうどこでも売ってない本なら話は別なわけだ。


これは実質的には,蔵書データを公開している顧客の蔵書を在庫とする,一種の貸本屋に見えるかもしれない。
もし本の配送レンタルとかを事業でやろうとすると,現在は貸与権の問題で著作権料を払わないといけないため,おそらくペイしない。儲けがでるのは一部の有名漫画くらいだろう,とか言われてる。
しかしここでやってるのは「個人間の本の貸借」を仲介してるだけ。個人間であれば非営利だろうから,ここに著作権料は発生しない。
「貸し本棚」がやってるのは「本を預かること」だけ。これ自体は営利的に行われるが,この場合も本の貸借自体にはタッチしないので著作権料は発生しない。
無論,個人の許可を得る必要がある以上,貸本屋に相当するようなサービスは期待できない。手間はかかるし,ベストセラーを借りようとするなら書店で買った方がいい程度の料金がかかる。
とはいえ,資料の入手可能性,という観点からいえば,個人蔵書が網羅的に検索でき,許可さえあればそれを借りて利用できる,ということは研究活動上で非常に有益なことに思える。*4

このへんはビジネスとしてペイするかということより,学術系の図書館が想定してるような研究活動を行ってる利用者へのサービスとして,図書館ができないことを補ってくれそうな期待が大きいかも。


あと,ある程度安定的なサービスとなれば,遠隔地にいる同好の士同士が「この本はおれが買って送っておくから,これは君が買ってね」みたいに共同購入する,といったモデルも構築できるかも。まあ本の買い控えが進んで出版崩壊が進行するかもしれませんが。


まあ全部妄想なんですけどね。こうしたサービスをつなげてペイするモデルが作れるとしたら,個人蔵書の問題が発展的に解決できて面白いんでないかなー。
あ,あと妄想なんで,これの実現をわたしに投げるとかせんでくださいね;


(まあさらに理想をいえば,これと同様の役割が図書館で出来たら,みたいなことも思わないでもないんですけどねー。配送じゃなくて,図書館に本を預けると。寄贈と違っていつでも引き出せると。他の利用者は,貸出しはできないけど館内での閲覧は可能だとか。まあ現実の図書館にそんな空間ないですけど)
(そもそも,図書館のはじまりってのは個人蔵書の寄贈と,本読み同士の共同書庫からなんですよね。文庫っつーか。それを考えると,それほど突飛なアイディアじゃないかもなあ)


[追記]

思いついたら書いてみるメソッドはやはり有効ですね。Hebiさんから過去記事を紹介してもらう。


【海難記】 Wrecked on the Sea:渋谷旭屋書店の閉店から「会費制私立図書館」を夢想する
妄想科學日報 - 会員制図書館/蔵書保管庫の試算

考え方を変えて、初期コストを入会金として会員に負担させ、月々の利用費をランニングコストに回すようにしてみる。この場合、入会金は62万円、月々の費用は15000円もあれば充分だ。月会費がランニングコストを上回るので、それを前提に入会金を50万まで下げてみよう。すると不足は1千万、これを月会費の余剰分で補うと3年ちょっとで解消できる。


んーと,むしろ希望がもてる気が。

ランクルームの相場からして,月20000円くらいでも顧客はありそうな気がする。また直接利用するのではなくネット配送の方式で考えるのなら,都心部にある必要はないので建物代はもっと下がる。また,データベースに登録すること前提のシステムであるから,保管スペースは実は書架である必要はない。段ボールはちょっと嫌だが,プラスティックのコンテナとかに本をつめてスチールの棚に積むイメージ。どの箱のどのへんに入ってるのかが分かれば取り出すのは簡単。
理想をいえば自動書庫(日本ファイリングのAutolibとか金剛のBOOK ROBO)だけど,このあたりまでいくと小さなものでも土地代クラスの価格になる。まあ人件費も馬鹿にならないので,長い目でみればこういうののほうが安くつくんだろうが,事業として成り立たないと難しい。


ただし,管理コストと輸送コストは話にならんほどかかるような。司書2人じゃやりきれないだろうし。登録業務もあるし,サーバの管理コストもかかるなあ。
そのへんの分を,アフィリエイトとか本の貸借りの仲介料とかで補えないかなー,などと思うのだけど。んー,お金のからむ現実的な話は苦手なんで,無理といわれたら無理なんだろうなー。

*1:ほとんどが段ボール積み。おかげで実家の自分の部屋には寝るスペースしかありません。

*2:本棚.orgとか。

*3:ただし,あんまり悪質なのがあれば,蔵書凍結の上訴える。

*4:図書館には国会図書館も含めてどこにもない本が,どこかの人が持っている,ということは実際珍しくない。