あれから5年、新たな現視研が動き出す 『げんしけん 二代目の壱』 10巻

げんしけん 二代目の壱(10) (アフタヌーンKC)

げんしけん 二代目の壱(10) (アフタヌーンKC)

笹原達も卒業してちょうど4年の一サイクル回った椎応大学現代視覚文化研究会
5代目会長に荻上を据え、新たなる一年が始まることになるのだが・・・
一度は完結となった本作ですが、5年の時を経て帰ってまいりました。
そうか、もうあれからそんなに経ったんだなぁと感慨深く思うと同時に、
今も昔も変わらぬオタである我が身も全くぶれてないなと思う次第。
世代交代したことでメインキャラの半分近くが入れ替わったものの、
変わらない空気はしっかりと世代交代を果たしており、
年月が経って、そこにいる人間が変わっても、
確かに変わらないものって言うのがあるんですね。
オタが集うサークルなりに複雑な事情持ちありの人間ドラマも繰り広げられるし、
ただのオタを扱った作品でないところも相変わらず安定してます。
様々な活動に費やしたリアルな大学生活的な側面から見ても、
大学卒業してから10年目の今だからこそ、より一層懐かしく思うものもあります。
自分が通ってた大学(ヒントはシュタゲ)のキャンパスも今年度で実質終了・移転してしまうし、
その前にもう一度あの空気を味わいに行きたくなりました。


根本はオタだからこそ、濃いネタも勿論あり。
表紙と開幕の56話のっけからいきなりキン肉マンレディーネタですかぃ・・・

誰もがわかるようなネタをあえて選ばずに、
知らない人を完全においてけぼりのマイロード爆走っぷりはさすがとしか言いようがありません。
本編の中にはそこまで露骨なものはないにしても、
何度か出てくる斑目の部屋の内装は確かに最近のオタらしいものが満載。
らき☆すたあり、けいおん!あり、イカ娘あり。
発言の中にも斑目を『ラララメさん』で名前をミュージカルみたいに〜と化物語もあり。

マニアックなネタを取り扱う中でも
定番どころもちゃんと抑えているとはサービスが行き届いてるなー。
こうした小ネタとして一番見逃せないのがカバー下。

そこには行水スタイルで『開ケナイデヨ』の一言を放つスーの姿が。
・・・って、絶望先生、しかも単行本のカバー下限定ネタかよっ!
よーく見ると影にしっかりと皇帝ペンギンも描かれてるし、芸が細かすぎますって。


現代視覚文化研究会改め腐女子会誕生への道が開けた!?
元々入部が確定事項状態で、荻上俺の嫁状態なスーはともかくとして、
新キャラとして参入した新入部員が三名。
その三人が全員『腐』ってぇんですから大変です。
当初は男っ気ばかりで咲さんが紅一点だった頃と完全に男女比率が反転しちゃってます。
数少ない男の一人が歩くトラブルメーカーの朽木ってのがアレですが・・・
で、この新キャラ三人、全員なかなかの曲者。
ビジュアル的にもキャラ的にも全く媚びてない矢島さんがリアル極まりないです。

対する吉武さんは女版朽木とでも言うべき、無自覚で騒ぎの種を振り撒きそうなタイプ。
この二人だけでも十分すぎるほど濃いですよ。
同じ『腐』でもこんなにも違うのかって感じだけど、
現実問題、オタの世界に足を突っ込んでる女性の特徴ってこんなだと思うんだ。
イベントとかで見ても、無頓着ならとことん無頓着だし、
これでもかってくらいに気合入ったお洒落をしてくるのもいるし。
両極端が逆に現実的とは一つの妙ですね。
そして新入生最強の刺客が波戸さん。
容姿だけなら他の誰よりも別次元の存在で、正統派美人って感じなのですが・・・

だが男だ!
いわゆる男の娘であると同時に、『腐』でもあるってどんだけハイスペックなんですかぃ。
結局のところ今回の収録エピソードはほとんど波戸さん中心に回ってるし、
早速全てにおいて欠かせない存在になっちゃってますよ。
しかも『女』としての自分から『男』としての自分をカップリング対象として見てしまうとか、
容姿だけじゃなくて全てが別次元の存在すぎた。

波戸さん、下の名前は賢二郎、恐ろしい子っ!
女装を一発で言い当てた咲さんもさすがですがね。


勿論既存キャラも負けてはいません。
すっかりコス担当兼ネタキャラになりつつある大野さんはともかくとして、
荻上のスペックが無茶苦茶上がってます。

全体的に髪を下ろした状態がデフォになってるし、
やはり笹原と付き合い始めてそのあたり意識するようになったのかな。
初登場時の飛び降り騒動とはまるで別人のようです。
そう言えば荻上初登場のときに大野さんの明言
『ホモが嫌いな女子などいません!』
が飛び出たんでしたっけ。
所属的には新入生だけど以前から登場していたスーはネタ振り要員として大活躍するように。
メインとして前面に出てきて〜ってことはあまりないのですが、
要所要所での発言がインパクト強いものばかり。
と言うか、西尾維新がお気に入り?
化物語傷物語の発言を引用したり、忍野忍のコスをしてたりするし。
しかしミスターげんしけんと言えば斑目
大学から徒歩数分の立地に住んでいることもあって、
OBなのに相変わらず準レギュラーとして登場しまくってます。
何かもう斑目がいないと物足りないって思えてくるほどですしね。
出番もさることながら、益々萌えキャラ化が進んでいるのもまた然り。
見た目があれとか、そういうのじゃないんですよね。
感性的にヒロイン気質備えすぎですよ。

意外と料理が上手って一面まで判明したし、どこまでもヒロイン街道一直線。
誰もが認める総受けキャラは伊達じゃない!
さすが矢島&吉武の二人に第一印象をして萌えると言わしめただけのことはあります。


各々の人間描写や心理描写も見逃せず。
今回主軸になっている波戸さんの女装を巡る話と、
次に一波瀾ありそうな斑目の恋の行方がどちらも根が深い。
波戸さんがそもそも女装をすることになった経緯が、
ただ単に趣味だったとかそういう単純な理由ではなくて、
腐男子であったが故の弊害によるもので・・・

いきなりこんな黒い話が飛び出してくるとは思わなんだ。
でも逆を言うと、このカミングアウトがあったからこそ、
新入生面子の結束は一層固まったんじゃないかなーと。
このくだりの矢島さんがとにかく人間臭くてよかった。
斑目の想いを巡る方も薄幸ヒロインっぷりがまた。
身を引いて諦めた身でありながらも咲さんのコス写真を今でも持っているのが、
一途と言うか諦めが悪いと言うか。
本人が気付かないうちに件の写真が波戸さんに見られてしまったことが今後どう影響するのか。
まさか本当にハト×マダ展開にはならないとは思うけど・・・
でも波戸さんが将来的に性転換して本当に女になってしまうとか、
腐的な意味じゃなくてガチでホモに目覚めないとも限らないからなー。
着替えの間借りをするためと言う奇妙な関係のこの二人、
今後どういう関係に発展して行くのかが気になります。