はじめての挫折、夢実現への新たな試練 『椿色バラッド』 2巻

椿色バラッド(2) (ブレイドコミックス)

椿色バラッド(2) (ブレイドコミックス)

大正九年五月二日、日本最初のメーデー集会会場へと足を運んだ椿。
そこで己の目的と信念を見失ってしまう出来事に遭遇し・・・
大正年号で換算するとちょうど百年目となる今年。
節目の年である今年にこのような大正時代を舞台とした作品が出ないなんて嘘ですよねっ!
と言わんばかりに登場した大正浪漫溢れる警官目指す女子の奮闘記の2巻目。

1巻が出たのが丁度半年前で、そのときに本作を取り上げた記事を上げたのが3月11日。
そう、東日本大震災の当日です。
そんな因果な巡り合わせもあったこともあり、かなり思い入れの強い本作なのですが、
裏事情があろうとなかろうと楽しめる一作であることは間違いありません。
今回は理想と現実の違いを目の当たりにしてしまったことにより、
一度は挫折を経験することになる展開もあれば、
夢に向かって大きな一歩を踏み出すことになる大きな動きもあり。
方法もわからずに孤軍奮闘していたこれまでとは一転して、
明確化した実現方法を叶えるために更なる奮闘をすることになる今後も期待なのです。
未だ男尊女卑の考えが強く、女学生そのものや袴を穿くことすら快く思われていないご時世。
露骨な偏向報道をされることも珍しくない中、
時代の一歩先をゆく真っ直ぐさに元気になれる本作です。


その現実は、憧れの面しか見えていなかった理想を打ち砕くには十分すぎた。
確かに警察の仕事と言ったら、道案内のような人助けもあれば、
下手人を捕らえる正義の人ってイメージが最も強いもの。
一方で、暴動鎮圧のために力を力で征する行動に出ることもまた然り。
メーデーなんて場に居合わせてしまったら、警官隊との衝突だって起こってしまうってものです。
(実際メーデー自体どんなことが行われてるかよくわからないけど)
人を助ける仕事と憧れを持っていた椿にとって、
人と対立してまで秩序を守ろうとする行為はあまりにも強烈すぎましたね。

こういう一面もあるから、警察を嫌いって人も、怖いって人もいることでしょうし。
挫折を味わって淑女たらんとしている姿は痛々しくてたまりませんでした。
かの子の説得もそうだけど、椿を立ち直らせた最大の決め手と言うのがまた・・・
何故一人だけ火災の中生き延びたのか、あの時小さな腕の中に抱えていたものが何だったのか。
一話目の一番最初に描かれてた過去の伏線が一気にやって来て心が熱い。

最早、椿が警官になることは運命と言ってもいいですね。
急展開を迎える最後で、手段が無くて迷走していた警官への道が、一気に開けることとなることもあって。
前回警察の上役らしい男性の正体とか、わずかにほのめかしていた新たな試みとか。
GHQの指示により、日本で正式に女性警察官が採用されることになるのは、
本作の時系列より更に26年の時を有することとなりますが、
当時もこんな試みなんて実際に施行されてたりなんて考えると楽しいですね。
大正乙女の警官なんて華やかでいいじゃないですか。
とは言っても、そう簡単に採用されるわけでもなく。
今回椿が抜擢されたのは、あくまでも『候補生』として。
本当に夢を叶えるためには、ここから更に実績を作らねばならず・・・

新キャラ兼ライバル出てきたー!
まだ容姿しか出てきていなくて、名前も性格も全く不明なライバル二人。
他にももう一人候補がいるみたいだけど、
これからの競争がどんな形で行われてゆくことになるのか期待です。
自身はそんなつもりじゃなかったのに、
偏向報道記事に写真が使われてしまった若い新聞記者も絡んでくることになるのかな。


一方で、凹んでる椿を何とか立ち直らせようとして奮闘するかの子の成長ぶりが窺える一面も。
当初は他人に声をかけることなんてまず無理だったのが、
かつての自分と同じように萎縮している娘に自ら声をかけて歩み寄る。

元々アクティブな性格の人にとっては当たり前のことかもしれません。
が、それが当たり前としてできない人だっているんです。
自分だってこういう経験はありますし、今だって声をかけづらいことなんていくらでもあります。
だからこそ、大きな成長であるこの小さな変化には感慨深いものがありますよ。
成長しているのは精神的なものだけではありません。
身体的にもかなりの成長が見られます。
それは皆でプティの家に行った際、洋服を着たことによって判明するのですが、

あらまあかの子さん、意外とお胸が大きいのね・・・

当時と現在の価値観の違いなんだろうけど、
みっともないと恥ずかしがる姿が可愛いったらありゃしません。
時代が時代なら、きょぬーの需要は大きいから大人気ですねっ!