新生活はドキドキとワクワクがいっぱい 『南鎌倉高校女子自転車部』 1巻

南鎌倉高校女子自転車部1 (BLADE COMICS)

南鎌倉高校女子自転車部1 (BLADE COMICS)

長崎から鎌倉へと引っ越してきたばかりの少女・ひろみ。
知らないことだらけの街で新たに始まる高校生活へと思いを馳せ・・・

元々はカラーイラスト集の同人誌が初出となる本作。
本格的にストーリー形式で連載が開始されて現在に至るわけですが、
「命」が吹き込まれたって感じがしますね。
(制服のデザインが変わった等、微妙な変更点はありますが)
同人誌の頃から美麗なイラストと活き活きとした少女たちが描かれていたけれども、
それだけでは見られない性格や表情の数々ってものが
漫画と言う媒体を経て魅力を余すところ無く引き出してくれています。

かつて『つばめ 陽だまり少女紀行』のように、
地方とそこで生活する少女たちを描いた作風には定評のある松本規之氏ですから、
本作がコミカライズ化されたのも自明の理なのかもしれませんね。
この少しずつ新たな生活を始めた街を知ってゆくのがたまらない。
桜の咲く鎌倉、少し足を伸ばせば心地よい潮の香り漂う海も見える。
東京からそう遠くない近郊でもこんなにも絶景溢れる街があるんですね。
行ってみたいと思っても、遠すぎて難しい作品が多い中、
アクセスが比較的良好ってこともあって、
本格的に聖地巡礼してみたい作品と巡り合えた気がします。
しかもできれば作中と同じ春、桜の時期に。
桜咲く極楽寺駅は是非とも直接見てみたいです。

改めて同人版を見返してみると、夏も捨て難い。
となれば秋と冬も・・・
やっぱり四季全て行かなければ全ての魅力を知ることはできませんね。
極楽寺駅は勿論、夫婦饅頭の店とかも載っているのが嬉しいところです。


ゼロを通り越したマイナスから始める自転車生活。
タイトルにも「自転車」が付くので、
将来的には本格的にスポーツサイクルで鎌倉の各地を廻ることになるんだと思いますが、
今回実はあまり自転車に乗っていません。
全体的に通して見ると普通に入学直後の初々しい女子高生たちによる、
ガールズトーク&ライフが展開されているような感じです。
そもそも主人公のひろみが最初の時点でスポーツサイクルはおろか、
自転車そのものに乗れないと言う有様。

こういう作品ならばいきなり本格的なパーツや乗り方、
道具一式を揃えたりってところから始まるものかと思っていたら、
まさかのママチャリを乗る練習からとは恐れ入った。
何と言う常識に捉われない専門ジャンル作品なんだ・・・
逆を言えば、それだけ初心者でも簡単に始められますよってことなんでしょうか。

確かにこれだったらちょっと乗ってみたいって興味から入れますし。
あえて専門的な内容を避けつつ軽く掠る程度に留めて話に入りやすくする。
成程、こういう導入方法で感情移入させるって手法もあるのか。
見事にハマったわ。
しかし、最近では「東京自転車少女」とか「一路平安!」のように、
比較的近い時期に自転車ものが集中しているのを見ると、
やはり自転車の時代が来ているのかも。
昨年の震災もあって、公共の交通手段を使用しない通勤通学者も増えたみたいですし。


見るもの全てが新鮮な新生活を向かえたばかりの少女たちの輝かしさ。
この初々しさはガールズものの大きな魅力の一つですね。
意外と天然で抜けてるところがあるひろみさん可愛いよ。
見た目によらずけっこう食べるっぽいところが窺えますしね。
朝食持ってきて登校するのはまだいいのだけれども、
食パン丸一枚ずつで挟み込んだサンドイッチを三つですか・・・
どんだけ食うつもりだったんだよ!
食事のときもそうだけど、全体的に目まぐるしく変わる表情がいいですね。
ぽわぽわした感じだったり、小動物っぽかったり、ギャグっぽかったり。

いいなぁ喜怒哀楽がわかりやすくて。
一緒にいて飽きなさそうです。
今回はまだ顔見せ程度でしか登場していないけれど、
ものぐさっぽいお嬢様な冬音とか、
四季先生を除けば唯一のスポーツサイクル経験者っぽい夏海とかが、
これからどんな風にひろみ達と出会い関わってくるのかも注目ですね。

と、こうして見ると本当に初心者ばっかりなんだなぁ・・・
何事も誰もが最初は初心者ですから、
作中のキャラと一緒に始めるのも乙かもしれません。