2012-01-29
「今日と明日の間で」
この有名なダンサーのことを、全く知らなかった。
映画館の壁に貼られたポスターが
あまりに美しかったので、なんの予備知識も無く
吸い寄せられるように映画館に入った。
伝統的なバレエの世界で踊り続けた彼が、
コンテンポラリーダンスへ挑戦した軌跡を追っている。
現代美術の作品展示スペースを舞台空間にした
中村恩恵振り付け「時の庭」
小野寺修二振り付け「空間に落ちた男」
シディ・ラルビ・シェルカウイ振り付け「アポクリフ」
椎名林檎書き下ろしのソロ「Between Today and Tomorrow」
そして、かつてモーリス・ベジャールに指導された過去の映像や、
本人と、共演したダンサーたちのインタビューなど
バックステージが挿入される。
この一本の映画で彼の虜になるには、十分だ。
積み重ねて行く鍛錬と精神の持続は、
こんな肢体を作り上げて行くのかと、
舞踏する姿のあまりの美しさに息をのむ。
舞踏の神様は、彼を選び祝福し、
さらなる試練を与え続けるのだろう。
2012-01-27
「無言歌」
映画 |
2012年の最初に観た映画は、ワン・ビン監督の「無言歌」(2010年/109分)
香港・フランス・ベルギー合作の、決して中国で上演されることの無い、若い中国人監督の作品だ。
私の頭の中で、常にもっと知りたい、謎だらけのもどかしい隣国、中国。
「文化大革命」より数年前の「反右派闘争」のお話。
1956年、毛沢東は、「百花斎放・百家争鳴」を提唱。共産党への批判を歓迎すると言った。
その数ヶ月後、一転「反右派闘争」が始まり、国の将来のために発言した人々をことごとく弾圧して行く。
映画は、労働教育農場という名の見渡す限り砂漠のような荒野を、ひたすら開墾し、
土豪に収容された人々を淡々と描いて行く。
あまりに寒く、ひもじい日々が、人々の命を次々に奪って行く。
土豪の中の暗闇と差し込む光、
濃い青空と砂漠に吹きすさぶ風、
映像はあくまで美しい。
他者や自分に対する尊厳を守り抜こうとする者と、
人間としての一線を越えてしまう者。
監督は、2003年から2007年の3年間,
実際に収容所に送られた生き残りの人や家族を取材し続けた。
映画の中の過酷なシーンは、全て真実であるらしい。
私は、映画館のシートにへばりついて、最後迄必死に観た。
後は、現実の世界で、必死に生き抜く迄だ。
2011-08-25
「イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ」
映画 |
LAの古着屋の主人ティアリーが、ビデオ撮影が趣味で、
ひょんなことから、ストリートのグラフィティーアートの撮影をすることから始まる。
警察の目を盗んでビルの壁面に作品を描くアーティスト達。
キンコーズで、超特大コピーを切り貼りして(普通に地味な作業です)、
深夜素早く壁をよじ登り貼付ける姿は
違法行為でありながら、微笑ましい青春映画のようだ。
映画の中盤、ティアリーは、イギリスのストリートアーティスト界のスター
バンクシーに遂に出会う。
撮影の膨大なテープは、エンドレスでただただ増幅すると思われたとき、
ティエリーは、尊敬して止まないバンクシーから、編集して映画にしろと言われる。
でも、出来上がった作品が、あまりにひどいので、
「もう、ビデオを撮るのは、いい加減でやめにして、自分でARTをやってみろ」
と言われて、アーティストに転じることになる。
ここから、映画の主人公が、
ビデオを撮っていたティエリー自身に取って代わる!
かつて80年代、バスキアやキースヘリングがストリートからスターになったように、
ティエリーが映していた彼らも、オークションで高値で売られるアーティストに時代は変貌していた。
すべてのノウハウを長年見続けていた男は、
コンセプト無きまま、(なんだかウォーホールの偽物みたいな作品)で
見事エキシビジョンを成功させて
有名アーティストの仲間入りを果たしてしまう!!
一枚の絵も描いたことの無い男が、
一夜にして、億万長者のアーティストに転じてしまう、
嘘のような本当の話。
アート市場の滑稽さを皮肉たっぷりに描いた
アーティストが監督したリアルな映画だ。
あっけにとられ、笑いながら、最後はなんだか哀しくなる。
よい作品を生み出すこと、よい作品に出会い感動すること、
そんなシンプルなことを、あらためて問わずにはいられない。







