【Ras/Raf/ERK経路について】


ERK and cell death Mechanisms of ERK-induced cell /Cagnol S et al. /FEBS Journal



 ERK1/2 (p44/42 MAPKとして知られており、それぞれ正式にMAPK3とMAPK1と名付けられている) は、細胞外シグナル制御キナーゼ (ERK) の2つのアイソフォームで、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ (MAPKs) ファミリーに属している。 MAPKファミリーにはERK5、c-JUN-NH2末端キナーゼ (JNK1/2/3) 、p38 MAPキナーゼ (p38 a,b,c,d)が含まれる。これらの酵素は連続的なリン酸化カスケードによって活性化させる。そのカスケードは細胞膜から核へシグナルを増幅して伝達する。上部の受容体活性化では、膜結合型GTP の一つであるRasは活性化されるとA-Raf、B-Raf、C-Raf (もしくはRaf1) といったRafキナーゼの一つと会合し複合体になる。それから、Rafはマイトジェンプロテインキナーゼキナーゼ1と2 (MEK1/2 : それぞれMAP2K1やMAP2K2ともして知られる) の2つのセリン残基をリン酸化する。そして、MEK1/2は二重特異性モチーフ (T-E-Y) のスレオニンチロシン残基の直列のリン酸化によってERK1/2を活性化する。最終的に、リン酸化によって活性化されたERKは、重要な生物学的機能を果たす細胞質や核の標的を調節する。
 期間、規模、細胞内の局在によって、ERKの活性化は様々な細胞応答を制御する。例えば、増殖、遊走、分化、細胞死などである。プロテインホスファターゼは、Ras/Raf/ERKシグナル経路で制御されることによって、ネガティブな制御として重要な役割を果たす。リン酸化チロシンホスファターゼはチロシンキナーゼ受容体を標的とする一方で、ホスホセリン/ホスホスレオニンホスファターゼはアダプタープロテインであるSchとMEK1/2を標的とする。二重特異性ホスファターゼ (DUSP : MAPKホスファターゼ (MKP) とも呼ばれる) はMAPKのactivation loop内のスレオニン残基とチロシン残基の両方を脱リン酸化できる。特異的DUSPは細胞内ERKの活性を堅固に調節する。DUSP1/MAP-1、DUSP2/PAC-1、DUSP/MKP-1、DUSP5は主に核である一方、DUSP6/MKP-3、DUSP7/MKP-X、DUSP9/MKP-4は細胞質である。更に、DUSP1,2,4,6はERKの活性化に続いて増加し、Ras/Raf/ERKシグナル経路の刺激を終わらせるためにネガティブフィードバックループに関与する。
 Ras/Raf/ERK経路は、RasやB-Rafの変異が活性化した結果出来た腫瘍では、しばしば調節されなくなる。これらは特に悪性黒色腫甲状腺腫瘍で観測される。多くの研究で、発癌性は細胞生存と関連付けられている。この細胞生存とは、主にBcl-2、Bcl-XL、Mcl-1、IAPといった抗アポトーシスタンパクの活動を促進することやBaDやBimといったアポトーシス促進性タンパクを抑制することである。




・Ras ⇒ Raf ⇒ MEK ⇒ ERK ⇒ mainly proliferative role
・脱リン酸化を行う一部のDUSPはRas/Raf/ERKシグナル経路のフィードバックを行う。
・Ras/Raf/ERK経路が正常に働かなくなると発癌性に関わる。