CLANNAD劇場版

(ネタバレを多分に含みます.ご注意ください.ついでにCLANNADのストーリを知っている前提で書きます)


CLANNADは個人的にあまり好きではありません.
まぁエロゲ自体好みでない人間*1ですから仕方がないのかもしれませんが,特にCLANNADは酷かった.例えば

ついでに、CLANNADの話もしますが、「母子ともに危険です」「中絶しましょう」「覚悟しておいてください」とまで言ってるのに、自宅出産するなんて自殺に等しい行為ですし、させる医師や病院なんていないでしょう?
あのシーンで渚が死んだとき(2週目以降渚は死なずに生き残りますが)、「おいおい、これは責任問題になりかねんな。自宅出産を許可した医師は間接的に殺人を…医療ミス!?」って思いました(医療じゃないから、”医療ミス”とは呼ばないか)
大体そんなに危なかったら、どんなに当事者が無理を言ったって、入院→帝王切開だろうよと。
無理やりな自宅出産を止める法律があるかは知らないが、少なくともWikiには「妊婦、胎児ともに順調であれば自宅出産も不可能ではない」という記述があります。
BSアニメ夜話「時をかける少女」 - WebLab.ota

なんて感想を書いたことがありますが,あのシーンは酷かった.
他にも,主人公があんなに父親を殺したいほど憎んでいる理由*2も,あまりに説得(納得)力を欠いていたし,殺したいほど憎んでいる割にはそれほど主人公の人格に影響なさそうだったり,最後の父親との和解も,「???」いっぱいだったし,そもそも和解が必要だったのかもわからないし……
すべては「麻枝准だからな」と言われるかもしれないがw


そんなCLANNADの劇場版です.(劇場版 CLANNAD −クラナド− OFFICIAL SITE
それを早くもみて来たらしいPikavippiä jo Tänään | Laita hakemus matkaan hetiさんのレビューがこちら
http://respect-maeda.com/repo/clannad.html


やばい.すげー見に行きたくなってしまった.
もちろん私は出崎ファンですから,出崎さんの作ったものならAIRだろうとなんだろうと楽しめてしまいますが,このレビューを読む限り,今回の劇場版は完全に原作は超越しています.*3
原作の不備をちゃんと修正してくれています.これならまともに見れる……


(以下は私がすばらしいと思ったところを挙げる)

話は原作の渚→アフターの汐を潔く扱っている。また、主人公と父との確執に対しては、原作よりも素晴らしい回収を行っている。(この部分は原作がひどるぎるということもあるが)
(中略)

  • 主人公の朋也は幼い頃から不思議な夢を見ていた。
  • その夢の世界では朋也は一人孤独に生きていたが、誰か別の生命の気配を感じて、それを捜し求めていた。

この夢が,後々ちゃんと解りやすい伏線になっている.(まぁこれは原作もそうだったけど)

  • また朋也は、バスケのスポーツ推薦で高校に入学が決定した折に、妻を失って荒れているお父さんが酔っ払って買ってきた菓子折りの特上寿司を「いらない」と言ったために、父に腕の腱を切られバスケができなくなる。そのため、父を憎み、少し荒れた生活をしていた。

この辺は原作どうりだっけ?まったく覚えてない.

  • この後回想で、朋也と渚が同棲を始めたこと、渚がまた一年留年したこと、一年留年したけれどちゃんと卒業したこと、朋也が電気工として働き始めて、渚はファミレスでパートをしていたこと、また渚との暮らしは沢山の人が家に来たりしてとても賑やかだったことが駆け足で示される。
  • そうこうして、渚に朋也との子供ができる。しかし、昔から体の弱かった渚は、子供を生むと母体が危なかった。
  • しかし、渚は生むことを選んだ。
  • そうして、渚の子供である汐を生んで渚は死んでしまう。

この出産は普通に病院で行ったようです.これでまた一つ正しいストーリになった.
あと同棲・留年・卒業といったエピソードを省略して,わかり易いストーリー展開にしたのも素晴らしい.(原作だと一回終わって,もう一回始まるから冗長だと感じないのかも知れないが,一本の映画として完成させるために省略したのだろう)

  • それから五年後。朋也は渚の死によってひたすら塞ぎこんでいた。曰く「あの夢は見なくなったが、現実という悪夢が永遠と続く」。

これも素晴らしい伏線.ベタでいいね.

  • そんなある日、朋也の父が家に訪ねてくる。
  • 父は「汐に会え。がんばれ」と朋也に言うが、「お前に言われる筋合いは無い」とはねられる。しかし、父はめげずに「お前はこのままでは私と同じになってしまう。妻を失って自分ひとりで悲しみに暮れて、お前を放ってしまった私のように」と言って、渾身の土下座をして朋也に謝罪する。(お父さんかっこいい!)朋也はその夜号泣する。

原作では,お父さんは痴呆の人みたいに,わけのわからん対応ばかりして理解に苦しんだが(息子を他人として接しようとしたり,変てこな塞ぎこみ方をしていた.あんな風に自閉する人っているんだろうか?),この辺りもわかりやすく,親子(家族)間をテーマにしたストーリらしい展開.

  • 次の日、仕事の先輩や友人達に強引に旅行に連れて行かれる。
  • 塞ぎこんでいる朋也は憤慨して、なぜこんなことを行うのか先輩に問う。この旅行を企画して、先輩や友人達にお願いしたのは朋也の父であったが、先輩は「お前も大人になれば分かる」とお茶を濁す
  • 駅に着いた朋也を待っていたのは、古河夫妻に抱かれた汐だった。
  • 汐は朋也を確認すると、急いで走って向かってくる。その慌てぶりに危険を感じた朋也も汐に向かって走り出す。
  • 汐は案の定転倒しそうになるが、間一髪で朋也のスライディングが間に合い、汐を受け止める。
  • そのとき、あの時見た夢の続きを感じて、汐との未来を感じて、物語は終わる。

素晴らしく感動的でベタな展開!!素晴らしくわかり易い伏線回収!!
しかし,これだけベタベタにしてもおそらく出崎統の作家性・鬼才を感じずにはいられないだろうことは,出崎ファンはみな知っている.


ハーモニー,画面分割,三回パン,三回ズーム,光の扱いなどの独特な演出が.
梶原一騎を彷彿とさせるような,突然のストーリー展開が.(しかし説明しなければならないところは丁寧に解りやすく描写してくれるという緩急を使いこなすセンス)
あぁ,見に行きたい…

*1:ギャルゲ嫌いな人間がギャルゲを楽しむための方法 『桃華月憚』 その1 - WebLab.ota

*2:そもそもいきなり理由もほとんど語らずに殺意むき出しの主人公を一人称視点で描写すること自体がおかしい

*3:出崎なら当たり前だぜとかちょっと思うけどw