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2009-10-02

「友だちの作り方」に「マリア様がみてる」の魅力の片鱗を見た

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友だちの作り方 (HJ文庫)

友だちの作り方 (HJ文庫)

no title

引っ込み思案でアガリ性の少女・椛(もみじ)は、生まれてこのかた友達が出来たことがない。しかし、学校の屋上にいた不思議少女柚木と出会ったことで、椛は人生初の友達を獲得!友達と過ごす幸せな日々がずっと続くかと思いきや、ある日突然、柚木は椛に別れを告げ、姿を消してしまう。

予想以上に面白かったのでレビューを書く.

ネタバレするんでよろしく.

表現の可愛らしさ

この本は非常にマリみてっぽい.

といっても「女学園である」とか「スール制度っぽいものがある」という意味マリみてっぽいと言っているのではない.

なんというか流れている空気とか言葉の選び方とか物語の構成(ミステリ的な部分?)とか,そして読み終わったときの多幸感……そんなものがマリみてっぽい.

(といっても百合モノだし,共学だけど男は空気だし,主人公の二人の少女リリアン外部受験組み*1みたいな境遇で,柚木にいたってはメンタルな部分まで乃梨子ちゃんとかなりシンクロしているけども)

比喩の可愛らしさ

「比喩の可愛らしさ」からマリみてっぽさを説明する.

マリア様がみてるの魅力の一つが比喩の可愛らしさだ.

たとえば,今野緒雪の天才的発明とも言える「茶色い電気

多数決もとらずとも,茶色い電気になった.暗くてよくは見えなかったけれど,たぶん祐巳祥子さまだけが小さく笑ったはずだった.

くもりガラスの向こう側 P157-P158」

であるとか,他にも,

失望させてしまっただろうか,思うと胸がキュッと締め付けられた.(中略)放っておくと訳もなく涙があふれてきそうな不思議な心境になった.幼い頃,人混みでお母さんの姿を見失いそうになった,あの時の気持ちに似ていたかもしれない.

マリア様がみてる P109」

といったものがある.

「友だちの作り方」にも同様に可愛い比喩がこの作品にはたくさん出てくる.例えば,

屋上の扉の前には,一回だけでんぐり返しが出来るぐらいの広さを有する踊り場があり,扉の横には窓が一つある.

「友だちの作り方 P16」

(は!いけないいけない.首がししおどし)

柚木は眠気からくる前後の運動の事を,自分の中で勝手にそう呼んだ.

「友だちの作り方 P186」

あたりの表現はかなり良い.めちゃくちゃ可愛い.こーゆーところで細かくこの二人の少女の可愛さを表現してくるのは憎いぐらいだ.

学園物で,かわいらしい空気感を意識しているからか,以下のように似ているような比喩さえも見つけることが出来た.

椛の弁解は,どんどんデクレッシェンドしていき,最後のほうはピアノピアニッシモになっていた.

「友だちの作り方 P62」

桂さんの声は,ピアニシモかフォルテシモに急激に変わった.

マリア様がみてる P126」

反復した表現の可愛らしさ

さらに,この作品特有の可愛らしい表現として「反復した表現」ってのもある.

椛は目を強く瞑って,首から上を力いっぱい左右に振った.ブンブンと振った.

(駄目よ.駄目だ.駄目なんだ.だから駄目なんだ.そんなんじゃ駄目だ.椛,貴方はどうしたい?)

「友だちの作り方 P18」

椛は何を言われているのかよく分からなかったので,聞き返したが,

「いやいや,なんでもない.なんでもない.それでそれで,他には?」

「友だちの作り方 P122」

といった感じで繰り返し同じ言葉を続ける表現をよく使う.

これは,カレイドスターのそらの口癖である「さてさてさて」みたいな感じで可愛らしくもあるし,強調したいところで的確に使ってくる印象があって非常に上手いとも思う.

で,この「反復」は物語が盛り上がってくるとさらに活躍しだす.

椛は動けなかった.何も言えなかった.

柚木は,自分プリンの最後の一片を口に運ぶと,容器を下に置いた.

柚木は,中腰の状態で椛に近づいた.

柚木は,自分の両手でスプーンと容器を持つ椛の両手を握り,地面に下げた.

柚木は,椛の顔に自分の顔を近づけた.

柚木は,椛の目を覗き,そして,こう呟いた――


「さよなら」

「友だちの作り方 P126-P127」

これは,友だちになりかけた(片方が友だちだと思い込んでいた)二人が別離するシーン.

こーゆー形で「柚木は」と繰り返すことで,「二人」いつも一緒に行動していたのに「柚木」は「柚木」であることを表している.端的に言えば「友だち」になれなかったことを表している.そして,それと対比するように,作品の最後では,

二人は,楽しそうに会話を続けながら,学校に続く坂道を登っていく.

二人は,笑顔で逢い坂を上っていく.

二人は,一緒に上がっていく.

と「二人は」と繰り返し終わる.このあたりはかなり好き.

二人を可愛らしく,また印象に残るように反復した表現を何度も使い,物語が劇的に動き出す部分で使って,物語を締めるのにも使う.

所感

正直ドラマ自体はそんなに面白くないけど,主人公の二人の少女は可愛く書けてるし,こーゆー文章の装飾部分とか味付けとかはかなり良い.

(たぶん,作者は別にドラマを語りたいわけじゃないんだろう.「如何に二人を可愛くできるか!?」そこに全力投球してる感じ)

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友だちの作り方 | シリーズ紹介 | HJ文庫公式Webサイト

*1マリみてでは,外部の中学からリリアンに入学してきた人たちのことを指す