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2006-11-25

エイズ問題書き直し 00:41 エイズ問題書き直しのブックマークコメント

あまりの悪文(id:nabeso:20061123)を治す。

 山形浩生さんの意見(山形浩生 の「経済のトリセツ」  Supported by WindowsLiveJournal - アフリカのエイズの新しい分析……それと経済学の何たるか。)の要点というか、エミリー・オスターの論文の(Esquire:Feature Story:Three Things You Don't Know About Aids In Africa)要点は以下の通り。

  1. the major difference lies in transmission rates of the virus(他の性感染症の影響によってウイルス感染の割合が違う)
  2. bias in who is tested(サハラ以降の羅漢率の高さは、検定の問題に過ぎない)。My work suggests that the HIV rates reported by the UN are about three times too high(実際の感染率はUKの報告の三分の一)
  3. , if income and life expectancy in Africa were the same as they are in the United States, we would see the same change in sexual behavior�and the AIDS epidemic would begin to slow.(収入の多寡によって、性行動は異なってくる)

このことを検討するために、まずは一つデータを提供したいと思う

404 Blog Not Found:「どうせ」の経済学から、Life expectancy - Wikipedia, the free encyclopedia引用しておこう。本人かどうかはともかく、山形さんもコメントしていることだし。

少しは頭を使ってくださいよ。生でセックスしたところで、HIV に確実に感染するとは限らないんですよ。(それとも一発やったら百発百中だとでも思ってたんですか?)だから 10 年後に苦しむ確率は、もともとそんなに高くはないのです。

だからなぜいま自殺しないかといえば、いま自殺すれば確実に死ぬのに対して、生で一回やったくらいでは10年後に AIDS で死ぬ確率はきわめて低いからです。

たばこを吸ってる人は30年後に肺ガンで死にやすくなりますが、かれらになぜいま自殺しないかきいてごらんなさいな。

Posted by 山形 at 2006年11月22日 22:<wbr>08

またサハラ以南の人々の寿命ですが、お示しになったグラフで見ても、もともと明らかに エイズとは関係なく他の地域より短かいのはわかるでしょう。それが(おそらくは)ぼくの紹介したような原因で、他の地域より高リスクの活動にいそしむようになったために、さらに短くなっているのです。まさにエミリー・オスターの説明通りです。

それまでは「10年後には生きているかわからん」と考えていた人でも、実際には15年生きたりした人もいたわけです。それが、AIDSのおかげで12年しか生きられなかったり、8年で死んだりするのです。それが寿命の短縮としてあらわれているのです。

Posted by 山形 at 2006年11月22日 22:<wbr>20

404 Blog Not Found:「どうせ」の経済学

 あまり確信が持てないのだが、このexpectancyって普通に訳したら平均余命なんだろうけど、0歳の平均余命=いわゆる平均寿命じゃなかろうか?基準年齢が書いてない上に、酷いところ(サハラ以南)でも45歳前後というそれなりに妥当な値が出ている。これがどう妥当かというと、45歳と言えば、男の場合25で結婚したら、15で結婚した娘の子供の顔が見られる可能性の高い年齢だ*1。実際には、結婚さえ出来る年齢まで生きていたら、悪くても50代半ばまで生きていられるであろう*2幼児死亡率の高い、早婚の地域としてはまずまずである。

 先進諸国と比べて、短いと言われながらも人生設計を立てる気になる寿命だ。山形さんは万が一エイズになっても発症して死ぬのは 10 年以上先だ。その頃に自分が確実に生きていると思えば、エイズ予防のために余計な手間もかけよう。でも、どうせその頃は死んでるだろうと思えばというのは、マラウィなどの平均寿命が30という話*3を、20代の平均余命が10年未満と理解したのではないかと思えてくる話だ。

 収入の多寡によって行動が違うのもある意味当然である。収入のある地域というのは当然、エイズがなくとも手厚い医療恩恵にあるのだ。ワクチン抗生剤、食糧事情etc。なにより予防に対する理解を可能とする教育。これだけ条件を揃えたポピュレーションの平均寿命が低いなんてとてもじゃないが考えられない。

 じゃあ貧乏人がエイズにかかったどういう事になるんだろうか?

 たくさん子供をつくることに合理性があるので子供は欲しい。けれどもエイズは他の性感染症とは違い母子感染のある病気だ。エイズ患者家長に持つ家は、働き手である健康子供を持つことが出来ないではないか。発症までの10年間の間に、子供にもHIVは伝染してしまうからだ。働き手が増えない家庭というのは無意識に選ばれた合理的な行動なのだろうかと私は疑問である。

 しかしアフリカと米国は性行動の側面も、文化的な違いも大きな差はないとオスター(と山形さん)は主張する。アフリカは衛生状態が悪いから、他の性病も蔓延しているので、エイズの人たちはたいがい他の性病も持っている。多くの人の性器粘膜がふつうの性病でただれているからこそ、そこを伝って HIV も伝染しやすく、おかげでエイズ感染が極端に増えてるなんだそうだ。

 えーっと???

 他の性感染症は目に見えて、発症しており明白であっても、それに対する行動は取らないという文化という事なんではないでしょうか?というか目に見えてやばい人とはゴムを付けるというのが、欧米の一般であると言うことだよね?もしくはアフリカではコンドームエイズ対策であるという単純な宣伝のために、他の性病にも有効であるという事実が隠れてしまっているからか。

 オスターの議論はコンドームの着用が男性の問題であるという視点から逃れられていない。避妊にしろ性病予防にしろ性行為の参与者全ての問題のハズだ。なぜ女性側の問題には目が向けられないのだろう?

 母子感染繁殖可能な子供を持てなくなるのに、寿命が短いとき、合理的に妙な発疹のあるペニスを生で受け入れてしまうのだろうか?エイズにならなくても明日の体調に関わってきたりするというのに。もしかしてアフリカの女性HIV感染しないと思ってはいないだろうか。男女比が1:1であることが特徴とされているのに(世界のエイズHIV|サハラ以南アフリカ中東・北アフリカ)。

 文化的・社会的な要因はこれまでも指摘されてきた。アフリカでは相変わらず識字率が低いが、女性の場合はさらに低い。ラジオ放送などで性病についての知識を知ることもあるかもしれないが、残念ながらラジオを所有しているのは男性である。マスメディアに対する接触すら性差があるのだ。伝統的に男女の分業が進んでいるが、それは同時に格差も意味する。女性意見がないとは思わないが、情報に対するアクセシビリティ重要な問題だ。

 経済学を利用して、合理性から考える事自体否定する気はないが、基本的に考慮すべき材料にかけていて、適当統計を並べた杜撰な研究にしか見えない。

 ただし他の性感染症対策がエイズ対策でも有益であることは肯定出来る。是非、感染率の低下のために頑張って頂きたい。問題は、只でさえ医薬品依存的で、加減を知らない人たちに種類を只増やすことが有効かどうかだろう。奥地でもキチンと処方して、耐性菌などを作らないようにする環境もまた必要だ。

 なお私は、アフリカ教育NGOゴロでないことを明記しておく。

 

*1:当然女性はひ孫をみるチャンスすらある

*2:おそらく村の中に元気な60代が結構いる

*3:参考:エイズでアフリカの平均寿命が急落

見物人見物人 2006/11/26 23:12 わたしの見る限り、オスターの議論にはコンドームのことなどひとことも出てきていないので、「オスターの議論はコンドームの着用が男性の問題であるという視点から逃れられていない」などという議論も成り立つ余地がないと思うのですが。また「母子感染で繁殖可能な子供を持てなくなるのに、寿命が短いとき、合理的に妙な発疹のあるペニスを生で受け入れてしまうのだろうか?」などという疑問も、アフリカの地方部における通常の衛生状態を考えたとき、かなりナンセンスではないでしょうか。虫さされ、低い栄養状態などで傷やできものは珍しくありません。加えて、性交の際には暗闇の中だから性器の状態をチェックすることは不可能だということも考慮すれば、おっしゃっていることは思いつきの揚げ足取りでしかないように思慮いたしますが。

はてな?はてな? 2006/11/27 09:44
>生でやったところでエイズにかかる確率はもともと
>そんなに高くないし、万が一エイズになっても発症
>して死ぬのは 10 年以上先だ

昼間しない文化なんだね。それはいいとして着けてる
こともチャックできないんだね、なるほどw

nabesonabeso 2006/11/27 11:07 >見物人さん、はてな?さん
オスターの議論は、欧米とアフリカは同じくらいの割合でゴムをつけていないと仮定するときのものです。
しかし、そもそも他の性病の羅漢率が違うときになぜ同じ程度しかゴムを利用しないのか?という論点を持たず、納得の出来る議論ではありません。
私はあちらの女性と経験がないので、昼間するかどうかやチェックをするのかなどは知りません。しかし男性にしても、只のリスク管理としてゴムを付けたらいいわけです。そして別に確認しなくても、山形さんがよく言うように無意識にリスク管理をすればいいのではないでしょうか。
オスター的な議論によって、根本的な解決策が後回しになることを私は憂慮しているのです。

てかてか 2006/11/27 13:08 他の性病の予防策って何よ?→(答えは…)

まただよまただよ 2006/11/28 07:03
あほ形が議論をずらしましたね。貧困がエイズの原因だ、ということに反論したんじゃないんだが…
「もともと寿命が短いこと」が原因だというのが馬鹿馬鹿しいんだよw

通報通報 2006/11/28 14:36 その場しのぎ山形浩生
http://d.hatena.ne.jp/kingfish/20061127

エミリーの同僚エミリーの同僚 2006/11/28 16:04 >オスターの議論は、欧米とアフリカは同じくらいの割合でゴムをつけていないと仮定するときのものです。

もとの論文をみてみましょう。http://kuznets.fas.harvard.edu/~eoster/hivbehavior.pdf
29ページにおいて、HIVの割合がコンドームの使用確率に与える影響が0であることを統計的に棄却できない、とあります。(これは、nabesoさんの想定と違い、アフリカの中での比較ですが、オスターの元々の議論もアフリカ内部での比較の話ですので、これでいいんだと思います。)
データの不完全性(コンドームを使ったかどうかは、ホントの値を測定しにくい)とかもあるので、断言できないよ、とも言ってますけどね。

あと、所得が性行動に与える効果は、HIVに関する知識や教育のレベルを制御したあとでも有意に残るとのことです(20-21ページ)。

なにをwなにをw 2006/11/28 17:42
>所得が性行動に与える効果は、HIV に関する知識や
>教育のレベルを制御したあとでも有意に残る
そりゃ、そうだろう。そういう常識的なことの確認も
基礎研究としては意味あるだろうけど、さも、斬新な
結果であるかのように扱う君が素敵杉だ

またまた 2006/11/28 18:17
>男だって子供の心配はするでしょうに。
男が感染していた場合と女が感染していた
場合とで母子感染確率って、同じなのか?

大体、所得によってセックス以外の娯楽に
興味を見出したり、感染症への耐性(健康
状態)感染予防に掛ける費用負担が違って
くるのが当たり前だろ。その前に「寿命が
短いことが原因」って、センス悪杉だよ。

>性病予防がエイズ予防にもつながりそうだ
>という点は明確には認識されてこなかった
は〜?常識じゃないのかw

エミリーの同僚エミリーの同僚 2006/11/28 23:47 理論的なフレームワークは6-8ページに示されている通り、単純ですね。斬新だとは思いません。(例えば、おっしゃるとおり、所得は現在と将来の「セックス以外の娯楽」からの効用を増やすものと仮定されています(6ページの(1)式)。)経済学の実証研究は(疫学でも同じですが)、変数の外生性をどう確保するか(少し乱暴ですが、因果関係を明確にする、と言い換えてもいいかもしれません)のほうがよっぽど大事だし、難しい問題です。

寿命の効果(正確には寿命とHIV有病率の相互作用が性行動に与える影響)は、寿命のかわりにマラリアの有病率や妊婦死亡率を取ってきても統計的に有意に出ます。妊婦死亡率は若い女性のみに影響を与えるはずですが、まさにそのような結果になっています(19-20ページ)。僕もエミリー同様センス悪いので、「寿命が短いこと」以外の原因が思いつきません。

ちなみに、論文は主にpositiveな分析ですが、政策的なことも26-28ページに少しだけ書いてます。
1.エイズの薬が手に入り、余命が5年延びる
2.HIVの知識を持つ人が倍増する
3.年間$1000分所得が増える
これらが全体としてどの程度の効果があるのか、また、どういうタイプの人に効果が大きいのか、などです。
(http://kuznets.fas.harvard.edu/~eoster/aids.pdf
には、山形さんが紹介された性病治療の効果が載ってます。)常識だけでは定量的な議論ができませんし、内生的な行動の変化との兼ね合いも考慮しきれません(例えば感染率が下がればセックスがより安全になるので、多くの相手とセックスして、むしろ全体としてHIVの罹患率が上がるかもしれません)。

同僚様へ同僚様へ 2006/11/29 00:35 どうもありがとうございます。
センスが悪いのはエミリーたんではなくてさ、…

所得との相関関係を解釈するのに、「寿命の前に
もっと大きい原因がある」だろうということです。
それを述べずに「原因は寿命である」と言う人が
いたでしょう。他の性病に罹患している、という
原因は述べている。感染予防に掛ける費用の負担
効果が(例えば、所得に対するコンドームを得る
のに掛かる「費用」の割合の関係が)述べられて
いない。『それらの原因を比較して寿命の効果が
大きければ』、常識を覆す斬新な結果として紹介
してもアホだとか、不誠実だとは思いませんけど。

>常識だけでは定量的な議論ができませんし、内
>生的な行動の変化との兼ね合いも考慮しきれま
>せん
研究には意味があると思います。要はその紹介の
され方なんですけど。意味あるところをちゃんと
紹介せずに常識の確認部分を「すごーい!」って
言われても「は〜?」です。

あとあと 2006/11/29 00:49
紹介の仕方で大きく気になったのは、『遊びのセックス
(子共を望まないセックス)で生でする原因』が寿命が
短いことだと言う(私の主観ですが)印象を受けたこと
です。子供を望むのであれば生でするのは当たり前なん
だし、寿命が短ければより多くの子を望むかもしれない。

エミリーの同僚エミリーの同僚 2006/11/29 07:06 >所得との相関関係を解釈するのに、「寿命の前にもっと大きい原因がある」だろうということです。それを述べずに「原因は寿命である」と言う人がいたでしょう。

いましたっけ?それこそただの印象論だと思いますが。エミリーも山形さんも「合理的計算に基づく部分がある」といってるだけです(「ルーカス批判」と言っても結構です)。

あと、細かいことですが、所得との相関だけを観察して、この原因は寿命だ、と言ったわけじゃありません。寿命との相関(正確には、所得を含む各種の変数を制御したあとでの「寿命とHIVの割合の相互作用」と性行動の間の相関です)も直接観察しています。常識の確認かどうかは、人それぞれじゃないでしょうか?

後半のコメントは、可能性としてはいろいろあるでしょうが、エミリーや山形さんの主張とはほぼ無関係です。論文は「ナマでする原因は何か?」を論じてるわけじゃありません。「セックス相手の人数を決める原因は何か?」です。エミリー自身も、既婚者のコンドーム使用には様々な動機があることを認めているからこそ、HIV有病率がコンドーム使用に与える影響を独身の人だけを対象に調べています(ページ29)。

ほほほほ 2006/11/29 08:46 >所得との相関関係を解釈するのに、「寿命の前に
>もっと大きい原因がある」だろうということです。
>感染予防に掛ける費用の負担効果が(例えば、
>所得に対するコンドームを得るのに掛かる「費用」の
>割合の関係が)述べられていない。
はい、山形は述べてましたか?自分のアホさ加減を誤魔
化すいい加減な印象操作ですねえ。wま、いつものこと
だがなw

>エミリーや山形さんの主張とはほぼ無関係です。論文は
>「ナマでする原因は何か?」を論じてるわけじゃありま
>せん。

へえ、じゃあ、これはどうだね。おかしいのはエミリー
ではなくて、山形であることは良く分かったからいいん
じゃねえの?

>もともと寿命が短いからエイズにかかることを気にしない点を重視すべきである!
>生でやったところでエイズにかかる確率はもともとそんなに高くないし、万が一
>エイズになっても発症して死ぬのは 10 年以上先だ。その頃に自分が確実に生きて
>いると思えば、エイズ予防のために余計な手間もかけよう。でも、どうせその頃は
>死んでるだろうと思えば……リスクは知っていても手はうたない!

あれあれ 2006/11/29 09:02
>既婚者のコンドーム使用には様々な動機があることを
大概は出産計画の問題でしょう、感染予防のためにする
場合も少しはあるだろうけどね。独身者のほうが動機の
腑分けの問題が大きいと思うぞ。

nabesonabeso 2006/11/29 18:17 >エミリーの同僚さん
論文の紹介ありがとうございます。ウェブ上に全文載っていることに気づきませんでした。DLして読んでいる最中です。
ざっと読んで思ったのは、山形さんは元の論文を読んでいないだろうということ(読んでいる必要はないのと思いますが)と、山形さんのリンク先にあるオスター本人の要約が荒っぽいなぁということでしょうか。
HIVの感染率とHIVの知識の相互作用が、性行動に有意な影響を与えていなかったり、かなり気になります。

イラン大統領イラン大統領 2006/11/30 16:25 双曲割引のネタに若干引きずられた感あり。

まあまあ 2006/11/30 18:15 エミリー論文では、双曲割引は論文の中心でもなんでもなくて検証の怪しい適当な軽〜いネタなんだよ。その怪しいところに、スポットライトを当てて「すっげー!」ってやっちゃった訳だ。現代思想の数学んときと同じ騙され方、山形さんは。つか、エミリーは騙すつもりはないんだろうけど、山形が勝手に騙されて、それを撒き散らすだけのことだけどね。

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