ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ250→→→パラグラフ77:不在なる神と相喰む犬狼:(死亡・14)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。


邪悪な存在がなにがしか周囲一帯の木立に息を潜めている。
この感覚を信じ、休息は後回しにして夜明けまで動き続けることに決めた。
歩きながら野草を取り、小動物を捕まえて生暖かい肉を喰らいながら進む。
夜明けの曙光が森を照らし出す頃、林間地に抜けだした。
毛皮のように濡れ光る巨大な丸石が、ぼんやりした黒い輪郭となり、空き地の外れにそびえる松の根元に転がっている。
広場に歩みだすと神経質なカラスの警告が響き渡った。
おざなりなその鳴き声に耳を傾け……
ぞわりと丸石が蠢き、輪郭を崩すさまに目を見張った。見る間に動悸が早鐘を打つ。
こいつはただの巨石などではない。
二階建ての家屋ほどもある体躯をもてあまし、今まさに眠りを妨げられた……クロクマの輪郭だったのだ。
ふたたび鎮まるのを待って慎重に足音を殺し、林間地の外周を回りこむ。
そのときだった。
ガサ、と激しい葉擦れが背中をゆすり、驚いて振り向く。


―― 視野いっぱいに広がる赤い腔、涎をこぼす猟犬アカタズの顎とを覗きこんでいた。
低い咆哮を漏らし、伸び上がったアカタズの鋭い牙が、俺の喉を狙って電撃のように突き刺さる――


前門のクロクマ、後門の戦闘犬だと!?
かろうじて首を振り致命傷を避けるが、アカタズの牙はざっくりと頬骨の下を切り裂いた。
野犬の勢いをそのまま利して躯をひねり、ブリッジの要領で投げ飛ばす。
背筋が恐怖で凍りついた。
―― 傾いた視野に、一斉に飛び掛ってくるアカタズの群れが映ったからだ。
こいつはただの囮。獲物の注意をそらし、群れ全体で俺を食いちぎる気だッ!!
野生化し、爛々と血に飢えた目は、この俺を食料としてしか見ていない。
ようやくにして思い出す。
元来アカタズはバサゴニア軍が好んで訓練し戦場で用いる戦闘犬。その最大の特質は、群れを組んで狩を行う性質なのだ。
カイ・マントに爪を立てられ、数匹分の体重を上乗せされて引きずり倒された。
起き上がるゆとりさえ今はない。
腕に、肩に、太腿に……無慈悲な肉食獣の牙がめりこんでくるッッ!!



  動物コントロールを身につけていて、プリンシパリンの階級に達していれば、77へ。
  動物コントロールを身につけていないか、プリンシパリンに達していなければ、254へ。


選択肢を目にした刹那、記憶をよみがえらせる。
この項目は「獣をカイ・マスターの支配下に従属させる」教えの向上だったはず。
種類を問わず動物を操り、意のままに従わせる。
ならば、今ここでこそ。
このアカタズを従わせずしてなんとするか――
すばやく次のパラフラフへ飛ぶ。
途端。
ガチガチと鳴り響く牙の音が薄ら寒く耳の中で反響し、灼熱の激痛が両手両足を噛み千切った。
アカタズの牙が、肉の奥深くまで埋まり、引き剥がせないッ!
体力点を5点失う。
……冗談だろう?
動物コントロールによる支配が跳ね返される……ッッ!!
大地に釘付け、磔刑に処されたままソマースウォード さえ自由にはならない。
プリンシパリンに達していてこの結果。
初見の狼であったなら、首まで食いちぎられていたかもしれない。
教えの力を限界まで振り絞って命じるが、生暖かい血の味で呼び覚まされたアカタズの獣性が支配力を断ち切ってしまう。


もはや、残された手は一つしかない――


通過パラグラフ:250→242→77(ダメージ) 治癒術の効果:+1点   現在の体力点:30点
(つづく)