不甲斐なき90分と、絶望からの生還【2013 J1 #31 湘南1-2鹿島】

凝縮された感情の起伏。その高低差。振れ幅の大きさ。過去に経験がない。あっという間だったけど、ものすごく長かった。

91分、遠藤航。1-1。
92分、大迫勇也。2-1。

この2行の間に、要された時間はわずかだった。きっと1分にも満たないくらい。でも、その間に脳内を駆け巡った思いと絶望感。茫然自失とはまさにこのこと、という状態に陥りながら、それでも正確な形で脳裏に顕在化した自身の立場。描き出してしまった最悪のシナリオ。勝ち点差。残り試合数。扉が閉ざされる。春の鳥栖で走り始めて、ここまで積み上げてきたものが、この場所で終わる。そう思ってしまった。サポーター失格、とか言われちゃうかもしれないけどね。“諦めるな”とか。“まだ時間はある”とか。そういう切り替えをする前に、それができないままに、フリーズしてしまった。現地に身を置いていたからこそ、かもしれない。刻んできた平塚での90分、その内容とプロセスを経て、悪い結末を予感してしまっていたから。そして実際に、その通りになってしまったから。

その2行の間で、俺たちの立ち位置は天地ほどに変わった。同時刻キックオフのマリノスがどんな状況にあるのかは知らない。彼らが負けることを願いつつも、その可能性は決して大きくはないという意識はある。首位のクラブだから。現時点でリーグトップの数字を残しているクラブだから。そう考えると。マリノスが勝つという仮定をすると。鹿島が引き分けに終われば、勝ち点差は8に開く。得失点差での劣勢を踏まえれば、実質的に勝ち点差は9。残り3試合。トリコロールを追い抜くためには、彼らの全敗が絶対条件になる。俺たちの戴冠が、限りなく不可能に近づいてしまう。

背番号9が、あの状況では信じられないような冷静さでゴールネットを揺らした。生還した。本当にそんな感覚だった。

試合終了のホイッスルを聞いて、そしてマリノスの敗戦を知った。広島も、浦和もポイントを落とした。首位と勝ち点3差。残り3試合。可能性は残せた。試合前と比べれば、むしろ希望は大きくなった。

  

所詮はゴール裏からの景色。しかもこんな距離での観戦だから、戦術云々とか、そんな視点ではなくて。感想として、感覚として。

不甲斐ない試合だった。勝ってもなお、不満は強い。

前半途中で数的優位に立ったにも関わらず、悪い意味でそれを全く感じられない内容。もはや人数以前の問題かな。自分たちのMAXを出さずに、相手に合わせてしまう悪癖が顔を出した。ベルマーレが弱いという意味ではなくてね。ベルマーレは3選手が出停で、しかも10人。1点ビハインド。陥った状況下で、限られた駒の中で、やれることをほぼやりきったんじゃないかな。選手交代をする度に流れを掴んでいった。ステボの高さでポイントを作って、遠藤航を1列前に上げてボール奪取率を高め、ギャップを突く古橋の動きでかき回す。鹿島は、そんなホームチームとは対照的な内容に終始したね。

2010年の平塚での対戦では、終了間際に同点弾を浴びた。今回もその記憶がよぎる展開だった。“なんとなく”“フワッと”した感じのまま、90分を過ごしちゃったから、悪い予感はあった。冒頭に書いた通り。

  

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1位:横浜F・マリノス 勝ち点59 磐田A、新潟H、川崎A
2位:浦和レッズ 勝ち点58 川崎H、鳥栖A、C大阪H
3位:サンフレッチェ広島 勝ち点57 C大阪A、湘南H、鹿島A
4位:鹿島アントラーズ 勝ち点56 鳥栖H、C大阪A、広島H

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3戦全勝が唯一かつ絶対の条件。その前提を実現できるかどうかは自分たち次第。そのうえで、3チームがポイントを落としてくれるか。

勝ち点を65に伸ばした時、見える景色はどんなものだろう。俺は、優勝の可能性を残して迎えるラスト3試合が楽しみで仕方ない。この感覚、久しぶりだしね。
天皇杯を含めて残り7つ。目前の試合に全力で向き合って、積み上げて、全部勝とう。