NAKAMOTO PERSONAL

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鉄は熱いうちに打ってこそ

「【正論】規範意識は就学前に植え付けよ 神戸大学特命教授・西村和雄」(産経新聞)
 → http://sankei.jp.msn.com/life/news/131203/edc13120303080000-n1.htm

 文部科学省の有識者会議「道徳教育の充実に関する懇談会」は、小中学校の「道徳の時間」を教科に格上げするという報告書案を提示した。今年2月に出された教育再生実行会議の提言に沿ったものである。


 ≪鉄は熱いうちに打ってこそ≫

 国内外の青少年の意識などを調査している財団法人「日本青少年研究所」が、日本、米国、中国の高校生を対象に行った1996年の国際調査によると、先生や親に対して反抗することが本人の自由だと答えた高校生は日本が一番多く、教師について「尊敬できる」と答えたのは日本が最も少なかった。道徳心の醸成は日本社会にとっても喫緊の課題である。道徳教育がより効果を上げる方法を考えてみたい。

 もし、大人の犯罪者に道徳の授業を受けさせたとしたら効果があるであろうか。それで、犯罪が少なくなるということはないであろう。大人になってからでは遅すぎるのである。

 大学生や高校生に道徳の授業をしたらどうであろうか。やらないよりましであるが、多くは期待できない。

 中学生ではどうであろうか。高校生よりましだが、小学生に対するほどの効果はないであろう。

 結局、道徳の授業が最も効果を上げるのは、小学生や就学前児童である。

 一般的には、道徳心は考え抜いて身につくものではない。無意識に記憶しているものが、何かの折に、意識下に上がって判断や行動を左右する。いわば、子供の時に親や先生から繰り返し言われていたことが、規範意識になり、その規範が基礎となって、倫理観や道徳心が熟成される。

 われわれは2012年2月に、インターネットによるアンケートで、ルールを守る、あいさつをする、他人に親切にする、勉強をする、親の言うことを聞く、嘘をついてはいけない、ありがとうと言う、大きな声を出す-の8つの言葉について、「子どものころに周りの大人からよく言われたかどうか」を尋ねた。


 ≪学習や仕事での成果も左右≫

 それぞれについて、イエスと答えた人とノーと答えた人の学歴と平均所得を調べた。イエスと答えた人の学歴と平均所得が、ノーと答えた人よりも有意に高かったのは、「嘘をついてはいけない」「他人に親切にする」「ルールを守る」「勉強をする」-の4つであった。これらは基本的モラルといってよさそうである。

 さらに、基本的モラルの4つをすべてしつけられた人のグループを、その1つから3つを受けた人のグループ、1つも受けていない人のグループと比較したところ、平均所得が60万円あるいは80万円高いという結果を得た。

 次に、「急いでいる場合は、行列の途中に割り込んでもよい」などの9つの行為や態度に対して、どう思うかを尋ねたところ、4つのモラルをすべてしつけられたグループは、他のグループより倫理的な判断を行っていることが有意に示された。

 このように、幼児期に、当たり前のしつけを受ければ、より高い倫理観を持ち、学習や仕事でより多くの成果を上げられるようになる。

 われわれのこの結果は、00年にノーベル経済学賞を受賞したジェームズ・ヘックマン・シカゴ大学教授による、就学前教育が生産性を最も高めるという研究結果とも合致している。


 ≪道徳教科化の基盤づくりに≫

 アメリカのミシガン州において、低所得層の子供を対象に、就学前教育の影響を追跡した、「ペリー就学前計画」と呼ばれる1960年代初めからの調査がある。子供たちが3歳の時、2つのグループに分け、1つのグループの子供にのみ就学前教育を施し、他のグループの子供たちと、その後、約40年にわたり比較してみたものである。

 この計画のデータを分析したヘックマン教授によると、就学前教育を受けたグループは、受けなかったグループに比べて成人後の学歴、月収などが有意に高かった。自制心や粘り強さなど、「IQテストでは測れない非認知的能力」が人生の成功に重要であり、それには幼児期の教育が役立っていると結論付けている。

 就学前教育は、自制心、信頼性、忍耐力などの非認知的能力を伸ばすのに効果があり、それが、学校の成績、会社での仕事ぶりに良い影響を与えたのであろう。

 われわれが調査した規範に関していえば、幼児には記憶に残るまで繰り返していうことが大切である。記憶していなければ、成人してからそれがモラルとして働くことはない。

 英国の小学校では、6つの規範を「黄金律」と呼んで、徹底して教えている。日本でも昔なら、親でなければ親類の誰かが言ってくれたと思われる当たり前の規範を、就学前教育や小学校教育の中で徹底させておくなら、その後の道徳教育がより効果的になるであろう。

道徳教育に反対する各紙社説。
「社説『道徳』教育 教科化にこだわるな」(朝日新聞)
 → http://www.asahi.com/articles/TKY201311300393.html
「社説[道徳の教科化]価値観植え付け危うい」(沖縄タイムス
 → http://article.okinawatimes.co.jp/article/2013-11-12_56460
「道徳の教科化 価値観の強制を危惧する」(新潟日報
 → http://www.niigata-nippo.co.jp/opinion/editorial/20131110077638.html
「【道徳教育】やはり教科化はなじまぬ」(高知新聞)
 → http://www.kochinews.co.jp/?&nwSrl=311291&nwIW=1&nwVt=knd


孤軍奮闘の産経。
「【主張】道徳の教科書 「人物」で興味ひく工夫を」(産経新聞)
 → http://sankei.jp.msn.com/life/news/131120/edc13112003120000-n1.htm
「【主張】道徳の教科化 今度は逃げずに実現せよ」(産経新聞)
 → http://sankei.jp.msn.com/life/news/131019/edc13101903300000-n1.htm



温故知新。

会津藩『幼年者心得之廉書』

  • 毎朝早く起きて、顔や手を洗い、歯を磨き、髪の毛を整え、衣服を正しく着て、父母に朝のご挨拶をしなさい。そして、年齢に応じて部屋の中を掃除し、いつお客様がお出でになってもよいようにしなさい。
  • 父母及び目上の方への食事の給仕、それからお茶や煙草の準備をしてあげなさい。父母が揃って一緒に食事をする時は、両親が箸を取らないうちは子供が先に食事をしてはいけません。理由があって、どうしても早く食べなければならない時は、その理由を言って許しを得てから食事をしなさい。
  • お父さんやお母さんが家の玄関を出入りなさったり、あるいは目上の方がお客様として玄関にみえられた時、お帰りになる時は、お客様の送り迎えをしなければいけません。
  • 子供が外出をする時は、お父さんやお母さんに行き先を告げ、家に帰ったならば只今戻りましたと、挨拶をしなさい。すべて何事も先ず父母におうかがいをし、自分勝手なことをすることは許されません。
  • お父さんやお母さん、それから目上の方と話をする場合は立ちながらものを言ったり、立ったままでものを聞くことはいけません。また、いくら寒いからといって自分の手を懐の中に入れたり、暑いからといって扇を使ったり、衣服を脱いだり、衣服の裾をたぐり上げたり、そのほか汚れたものをお父さんやお母さんの目につく所に置くようなことをしてはいけません。
  • お父さんやお母さん、ならびに目上の人の方々から用事を言いつけられた時は、謹んでその用件を承り、そのことを怠らないでやりなさい。なお、自分を呼んでおられる時は、速やかに返事をしてかけつけなさい。どのようなことがあっても、その命令に背いたり、親を親とも思わないような返事をしてはいけません。
  • お父さんやお母さんが寒さを心配して。衣服の重ね着をおすすめになったら、自分では寒くないと思っても衣服を身につけなさい。なお、新たに衣服を用意して下さった時は、自分では気に入らないと思っても、謹んで頂きなさい。
  • お父さんやお母さんが常におられる畳の上には、ほんのちょっとしたことでも上がってはいけません。また、道の真ん中は偉い人の通るところですから、子供は道の端を歩きなさい。そして、門の敷居は踏んではいけないし、中央を通ってもいけません。ましてや藩主や家老がお通りになる門はなおさらのことです。
  • 先生またはお父さんお母さんと付き合いがある人と途中で出会った時は、道の端に控えてお礼をしなさい。決して軽々しく行き先など聞いてはいけません。もし、一緒に歩かなければならない時は、後ろについて歩きなさい。
  • 他人の悪口を言ったり、他人を理由もないのに笑ったりしてはいけません。あるいは、ふざけて高い所に登ったり、川や水の深い所で危険なことをして遊んではいけません。
  • すべて、先ず学ぶことから始めなさい。そして、学習に際しては姿勢を正し、素直な気持ちになり、相手を心から尊敬して教わりなさい。
  • 服装や姿かたちというものは、その人となりを示すものであるから、武士であるか、町人であるかがすぐにわかるように、武士は武士らしく衣服を整えなさい。決して他人から非難されるようなことのないようにしなさい。もちろん、どのように親しい間柄であっても、言葉遣いを崩してはいけません。自分より下の者や品のない人間と、同じように見られるようなことをしてはなりません。また、他の藩の人達に通じないような、下品な言葉遣いをしてはいけません。
  • 自分が人に贈り物をする時でも、父がよろしく申しておりました、と言い添え、また、贈り物を頂いた場合が、丁寧にお礼を述べながら父母もさぞかし喜びます、と言い添えるようにしなければなりません。すべてに対して父母をまず表に立てて、子が勝手に処理するのではないことを、相手にわかってもらえるようにしなければなりません。
  • もしも、お父さんやお母さんのお手伝いをする時は、少しでも力を出すのを惜しんではいけません。まめに働きなさい。
  • 身分の高い人や目上の人が来た時には、席を立って出迎え、帰る時にも見送りをしなければなりません。それにお客様の前では、身分の低い人はもとより、犬猫にいたるまで決して叱り飛ばしてはいけません。また、目上の人の前で、ものを吐いたり、しゃっくりやげっぷ、くしゃみやあくび、わき見、背伸び、物に寄りかかるなど、失礼な態度に見えるような仕草をしてはいけません。
  • 年上の人から何かを聞かれたならば、自分から先に答えないで、その場におられる方を見回して、どなたか適当な方がおいでになっていたら、その方に答えてもらいなさい。自分から先に、知ったかぶりをして答えてはいけません。
  • みんなで集まってわいわいお酒を飲んだり、仕事もしないで、女の人と遊ぶいかがわしい場所に出かけるのを楽しみにしてはいけません。特に男は、年が若い頃は女の子と二人だけで遊びたい本能をおさえることは、なかなか難しいとされています。だからといってそのような遊びを経験し、癖ともなれば、それこそ一生を誤り、大変不名誉な人生を送ることになりかねません。だから、幼い頃から男と女の区別をしっかりし、女と遊ぶ話などしないことが大切なのです。あるいは、下品な言葉を発して周りの人を笑わせたり、軽はずみな行いをしてはいけません。なお、喧嘩は自分で我慢が出来ないから起こるものであって、何事も辛抱強く我慢して喧嘩をしないように、いつも心がけなさい。


また、会津の子供達には掟があった。「什(じゅう)の掟」である。

什の掟

一、年長者の言うことに背いてはなりませぬ
二、年長者にはお辞儀をせねばなりませぬ
三、うそを言うてはなりませぬ
四、卑怯な振る舞いをしてはなりませぬ
五、弱い者をいじめてはなりませぬ
六、戸外で物を食べてはなりませぬ
七、戸外で婦人と言葉を交えてはなりませぬ

ならぬことはならぬものです。

『會津藩校日新館』 http://www.nisshinkan.jp/


『2013年12月01日(Sun) .. and More Honesty in Japan』 http://d.hatena.ne.jp/nakamoto_h/20131201
『2013年11月14日(Thu) 道徳に就いて』 http://d.hatena.ne.jp/nakamoto_h/20131114
『2013年10月30日(Wed) 一日一言「かしこき聖旨」』 http://d.hatena.ne.jp/nakamoto_h/20131030
『2013年10月15日(Tue) The Soul of Japan』 http://d.hatena.ne.jp/nakamoto_h/20131015
『2009年03月23日(Mon) 道徳教育に就いて』 http://d.hatena.ne.jp/nakamoto_h/20090323

はじめての道徳教科書

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日本人の美徳を育てた「修身」の教科書 (PHP新書)

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ぜひ、一度お読みください。修身 復刻

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