NAKAMOTO PERSONAL

空にある星を一つ欲しいと思いませんか? 思わない? そんなら、君と話をしない。

後の十三夜

名月の 大きく出たり 屋根の上

── 子規 

「一生に一度だけ!11月5日に171年ぶりの『ミラクルムーン』を見よう」(NAVER まとめ
 → http://matome.naver.jp/odai/2141505143257519701
「【今宵は月を見よう】本日11月5日は一生に一度 171年ぶりの『ミラクルムーン』の日! 月の南中は22時16分頃」(ロケットニュース24)
 → http://rocketnews24.com/2014/11/05/506203/
「【朗報】今日は171年ぶりの「ミラクルムーン」で『幻の十三夜』」(DMMニュース)
 → http://dmm-news.com/article/896651/
「今宵は171年ぶりのミラクルムーン!Twitterには幻想的な写真が続々投稿される」(IRORIO)
 → http://irorio.jp/aimiyayuichi/20141105/175654/

 さあ皆さん どうぞこちらへ! いろんなタバコが取り揃えてあります どれからなりとおためし下さい

『ある夜倉庫のかげで聞いた話』

 「お月様が出ているね」
 「あいつはブリキ製です」
 「なに ブリキ製だって?」
 「ええどうせ旦那 ニッケルメッキですよ」 (自分が聞いたのはこれだけ)


『月とシガレット』

 ある晩 ムーヴィから帰りに石を投げた
 その石が 煙突の上で唄をうたっていたお月様に当たった お月様の端がかけてしまった お月様は赤くなって怒った
「さあ元にかえせ!」
「どうもすみません」
「すまないよ」
「後生(ごしょう)ですから」
「いや元にかえせ」
 お月様は許しそうになかった けれどもとうとう巻タバコ一本でかんにんして貰った


『A PUZZLE』

──ツキヨノバンニチョウガトンボニナッタ
──え?
──トンボノハナカンダカイ
──なんだって?
──ハナカミデサカナヲツッタカイ
──なに なんだって?
──ワカラナイノガネウチダトサ


『月をあげる人』

ある夜おそく公園のベンチにもたれていると うしろの木立に人声がした
「おくれたね」
「大いそぎでやろう」
カラカラと滑車の音がして 東から赤い月が昇り出した
「OK!」
そこで月は止まった それから歯車のゆるゆるかみ合う音がして 月もゆっくり動きはじめた
自分は木立のほうへとんで出たが 白い砂利道の上には只の月の光が落ちて きこえるものは樅の梢をよそがす夜風の音ばかりだった


『見てきたことを云う人』

「きみはあの月も 星も あんなものが本当にあると思ってるのかい」
 とある夜ある人が云った
「うん そうだよ」
 自分がうなずくと
「ところがだまされているんだ あの天は実は黒いボール紙で そこに月や星形のブリキが貼りつけてあるだけさ」
「じゃ月や星はどういうわけで動くんかい」
 自分が問いかえすと
「そこがきみ からくりさ」
 その人はこう云ってカラカラと笑った 気がつくとたれもいなかったので オヤと思って上を仰ぐと 縄梯子の端がスルスルと星空へ消えて行った


『月夜のプロージット』

 時計が十一時を打った時 おとぎばなしの本をよんでいた男が 思い出したように立ち上がって 窓を開けた そしてそこに青い光がいっぱい降っているのを見ると半身をつき出しながらどなった
 「おいやろうぜ」
 すると隣の窓から返事がした
 「OK!」
 やがて青い電気に照らされた舞台のように青いバルコニーに 円テーブルが持ち出された 二つの影がそのまわりに立って 互いに差し上げた片手の先でカチッと音をさせた
 A votre santé!
 双方のグラスには いつのまにか水のようなものがはいっていた それを一息に呑むと 一方が云った
 「だんだんうまくなるじゃないか」
 他方が答えた
 「そうさ 十三夜だもの」

── 稲垣足穂『一千一秒物語』

そうさ、今夜は十三夜。
“後の十三夜”だもの。

 ではグッドナイト! お寝みなさい 今晩のあなたの夢はきっといつもと違うでしょう


一千一秒物語』(松岡正剛の千夜千冊) http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya0879.html

一千一秒物語

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第三半球物語

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