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2019年01月12日(Sat) 「社会学の窓」から? このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

「なぜアメリカには熱心なキリスト教信者が多いのか。シンプルな答え」(現代ビジネス)

 → https://gendai.ismedia.jp/articles/-/59276

アメリカは、不思議な国である。とくに不思議なのは、キリスト教。なぜあんなにアメリカ人は、キリスト教を熱心に信じるのだろう?

アメリカ人は、3億人。ざっとみて、1億人/1億人/1億人に分かれている。

最初の三分の一は、キリスト教なんかもう関係ないや、という人びと。科学を信じる合理主義者で、ビジネスをやって、禅やヨガニューエイジにも理解のある進歩派だ。

つぎの三分の一は、主流派の人びと。健全な常識人で、教会にもおおむね出席する、穏健なクリスチャンだ。

最後の三分の一は、福音派エヴァンジェリカル)と呼ばれる人びと。聖書は「神の言葉」だと、信じている。進化論天文学は間違っている、と決めつける極端な人びとも、なかにはいる。この福音派が最近、アメリカ政治の台風の目になっている。

そもそも西欧社会は、キリスト教を中心に発展してきたのだった。神学から、哲学が生まれ、哲学から、自然科学が生まれた。文化芸術も生まれた。民主主義資本主義も生まれた。ただ、ヨーロッパの国々では,信仰の熱はとっくに冷めて、キリスト教は歴史の一部(日本の仏教のよう)になっている。アメリカは、例外なのだ。

いちばん冷えきっているのは、フランスだろう。元はカトリックだが、フランス革命で、縁が切れた。教会の建物は立派でも、日曜日はガラガラ。礼拝に行くのはいま、人口の10%足らずだ。フランスは、哲学の国になった。知識人は、信仰を持たないことを誇りにしている。

イギリスは、英国国教会。おとなしい。ピューリタンがかつて大暴れしたのが嘘のようだ。

ドイツは、ルター派。公定教会(経費を税金で払ってもらう)なので、体制化している。ヒトラーに協力した過去をひきずってもいる。イタリアスペインラテンアメリカの国々は、カトリックだが、習俗や伝統の一部みたいになっている。

これらの国と比べると、アメリカキリスト教は元気だ。まじめに信仰している人びとが多い。

ビリー・グラハムみたいな伝道師が大勢いて、万単位が集まるメガチャーチもある。キリスト教系の新興宗教モルモン教エホバの証人クリスチャン・サイエンス、…)もたくさんある。社会的な活動も活発だ。公民権運動でも、キング牧師が大きな役割を果たした。


今なおアメリカだけでキリスト教が活発な理由

なぜアメリカだけ、キリスト教がこんなに盛んなのか。それは、アメリカ人の心にぽっかり、穴が空いているからだ。

ぽっかり空いた、心の穴。それはアメリカ人が、移民だからだ。

アメリカの人びとは、いろいろな事情で、故国を後にした。ヨーロッパにいれば、歴史や文化や伝統があり、地域の共同体もあって、安心して暮らせた。それが失われた。あるはずのものが、なくなった。アメリカは、見知らぬ他人ばかりで、歴史や文化や伝統がない。仲間もいない。寂しいのである。

その穴埋めが、キリスト教だ。聖書を読む。遠いパレスチナで、苦難の歴史を歩んだイスラエルの民の話である。イエス・キリストの教えは、昨日のことのようだ。そして、みなで説教を聞く。

そう言えばアメリカは、約束の地ではないか。イスラエルの民は、さまよう民。自分たち移民のことだ。聖書に、ヨーロッパのことは出て来ない。ヨーロッパはなくて平気。もっと古い歴史につながっているから、大丈夫だ。そう思って、慰められ、勇気づけられる。

だからアメリカ人は、キリスト教にのめりこむ。教会は、故国に置いてきた共同体の代わりだ。

移民した人びとは最初、故国の教会を持ち込むが、人気があるのはアメリカならではの教会。バプティストやメソジストである。いろいろな場所から来た人びとが、兄弟姉妹と呼びあう。教会を移れば、人間関係をリセットし、新しいスタートを切ることができる。


福音派はなぜトランプを支持するのか?

福音派の人びとは、バプティストメソジスト教会のメンバーだ。福音派という名の教会があるわけではない。自分の教会に行くのだが、それでは飽き足らず、体育館の伝道集会に出かけたり、ケーブルTVで宗教チャンネルを視たり、お気に入りの伝道師の著書やCDを買ったりする。

聖書神の言葉」が、福音派の合い言葉だ。「神の言葉」なら、科学者哲学者政治家みたいな、人間の書いた「人の言葉」より格上である。進化論天文学も人の言葉なら、ただの意見にすぎない。たぶん間違っている。いっぽう聖書は、正しいに決まっているのだ。

福音派だと、どんないいことがあるか。まず、情報があふれて混乱したこの世界が、単純になる。聖書が唯一の真理なのだから。

でもこの世界のあらゆる出来事を、どうやって聖書から判断する?そこを伝道師が手伝ってくれる。中絶はいけない。イスラエルを支持しよう。LGBTはいけない。トランプに投票しよう。そんな保守的な結論になっていく。

選挙では、聖書を規準に投票する。だから政治家は、うっかりしたことが言えなくなる。トランプとヒラリーでは、トランプのほうがましに見えた。まだしも正直そうだ。そこで福音派の票は、トランプに集中した。

アメリカはとても重要な国だ。でも日本人には、理解しにくい。キリスト教がわからないと、理解できない仕組みになっている。

じゃあ、キリスト教を補助線にアメリカを解明しようと、『アメリカ』という本を書いた。社会学者の、大澤真幸さんとの対談である。新創刊「河出新書」の一冊で、2018年11月発売。キリスト教と、あとプラグマティズムを二本の補助線に、アメリカの深層に切り込んでいる。

明らかになるのは、経済資本主義)も政治(民主主義)も、自然科学も、家庭も文化芸術も、世俗の生活の隅々にまで、キリスト教が浸透していること。物質生活がそのまま、霊的(スピリチュアル)な生活でもある。そこに、アメリカの秘密がある。344頁と厚めで、読みごたえ十分だ。どうぞお手に取って、じっくりお読み下さい。

アメリカ(河出新書)

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世界がわかる宗教社会学入門 (ちくま文庫)

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ふしぎなキリスト教 (講談社現代新書)

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