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20120208

[]知らないじーさんと話してた

 毎週月曜の深夜はコンビニにとって戦争である。そうでない店もあるかもしれないが、うちの店にとってはそうだ。なにせ新商品が入荷する。特殊な展開なんかもよくやるから、その準備にも手間がかかる。事前に準備をしていたって、モノが大量に入ってくるという事実の前には屈さざるを得ない。

 そんなわけで火曜日の朝になってようやくすべてを終えて、買い物でも行くことにした。俺はたまに異常に前向きなので、100個発注したデザートが何個売れるか楽しみでしかたない。売れないという可能性は考えない。やれるだけのことはやった。清々しい朝だと思ったらなんかとんでもねえ土砂降りだった。あのね、空から降ってくる雨は、幼女神さまのおしっこなんだよ。

 その雨のなか最寄りの安売り店舗(車で30分くらい)に行くのだが、あの店はどうやったらあのレベルの国産牛をグラム398円で売ることが可能なのだろうか。しかし俺が買うのはカナダ産のグラム98円の豚バラだからあまり関係ない。あと文房具の棚の前で物欲に負けそうになって、ぺんてるの8色セットのサインペンとか買いそうになったが、自分の物欲を飼い慣らすために、8ミリ罫線のノートを買うことで我慢してやった。ざまあみろ。

 そんなこんなで、たまねぎも買ったし、そうね、鶏もも肉も買ったので今日はシチューなんか作ってみましょうかと思いつつ、帰りがけにドトールに寄った。なんか最近の俺はことあるごとにドトールに立ち寄っており、もはや常連の域ではないかと思うが、店員に「こんにちは」なんて声をかけたりすることは死んでもしない。

 ドトールで註文するものはエスプレッソのMサイズだ。店員の顔を知ってるほど通っていても絶対に話しかけない俺も俺だが、俺がエスプレッソを註文するたびに「こちら量の少ない小さめのカップのコーヒーになっておりますがよろしいですか」と質問する店員もたいがいどうかと思う。量が極端に多いマグカップ山盛りのエスプレッソとか来てもそれはそれで困るって。

 そんなわけで、エスプレッソと灰皿と水を入れたコップを持って喫煙席に座ると、早速ネットブックを取り出してついったーにつないで「ドトールなう」とかやるわけだが、この日は思いついたのでついでにエントリも書いてみることにした。自分のことをアクセス乞食だとかブクマ乞食だとは思わないが、それなりにアクセスが伸びるエントリがあったりすると「よし。仕事に役立つエントリを求めて来た人に、ひっでえ内容のエントリをぜひ読んでいただこう!」とかいう気分にもなったりするので、自分の意志で動く人形少女の関節に継ぎ目があったら勃起するよね!みたいなエントリを書こうと思いついたのだ。「そうか、コンビニにしろ本屋にしろ、意外に頭使って陳列してるんだな」と思ってエントリを読んだ人が「んじゃ、最新のエントリもちらっと見てみるか」と思って開いた瞬間「女の子の関節に継ぎ目あって潤滑油として僕の赤ちゃんミルクを注ぎ込んだら素敵ですよね!」っていう文言を見かけたときのがっかり感。3行読んだらタブ閉じて二度とこのブログを読みに来ない。そう思うと楽しくてしかたありません。

 というわけで、ものすごい楽しい気分で「いくら意志があろうとも、かわいい外見をしていようとも、関節に継ぎ目あったらその女の子は人間じゃない。じっくり見れば見るほど人間じゃない。その事実を自分に刻み.comように関節をなでていると泣きながら勃起するようなじわじわするような愛情が僕を包むのです」とか書いてたら、喫煙席の反対側にいるじーさんがなんかゆってた。

「とつぜんごめんね旦那さん、ちょっといいかな」

 声は聞こえていたが、自分に話しかけているものとは思わない。なぜならば関節少女について書いている俺の魂は十代の疾駆する暗闇の深淵からこの明るい世界を見上げて悔し涙を流すことすらできずに懊悩するこの

「ちょっとね、お話聞きたいんだよね、いいかな旦那さん」

 さすがに二回声があると、そちらのほうを見る。つーかそもそも喫煙席にはそのじーさんと俺しかいない。

 俺か。俺なのか。俺いますごく忙しいよ。なんでベランルージュには継ぎ目なかったの。ちょっと俺その点についてあのゲームには疑義がね

「いやあ、見てるとすごいじゃない。こう、キーボードをたたーんってね」

「うっせえよじじいいま俺悪いけど半勃起だよ!? 半勃起で俺の魂をキーボードにね」

 とは言えません。俺はだいたい読書とかアニメ鑑賞とかエロゲとか邪魔されるとものすごく不機嫌になるタイプなのですが、見知らぬ人相手に不機嫌な顔を見せるわけにもいきません。

 じーさんといえば、やたら人好きのする笑顔でにこにことこちらを眺めている。年齢は六十代半ばといったところか。顔はわりとでかく、そのでかい顔に精気のある笑顔を浮かべている。もう仕事はしていないのだろうが、老後の時間を持て余しているということもなさそうな、それなりに充実している時間を送っている人の顔だ。服装はカジュアルだが、おそらくそれなりに仕立てのしっかりしたものを着ている。

「僕ね、このあいだからパソコンを習い始めて、さっきで二回目だったんだけどね、もうとうていできる気がしなくてね。それで旦那さん見たら、こう、キーボードも見ないですらすら打ってるじゃない。どうやったらそんなになるのかなあと思ってねえ」

 捕まった。

 そう思った。

 ちなみに、まったく知らない人だ。それにしても、生まれてこのかた人から道を聞かれたことすらない俺に、よく話しかけたもんだなこのじーさん。年とると人間なんでもできるのかもしれない。

「いや、慣れですよ」

 とりあえずそう答えた。

「慣れっていうけどねえ……もう僕だってこの年だから、慣れられる日が来るのかなあってねえ。今日はね、ペイントっていうの? それでマウ、マウ……マウスで絵を描いたんですよ。こう、エンピツっていうのがあってね、あと消しゴム。消しゴムで線を消す。そういうのをね、やったんですよ」

「いや、慣れだと思いますよ。私だって仕事で強制的にやらされたから覚えたようなもんでね」

 嘘です。十代の横溢する自意識にワープロ専用機を与えられたので文章を書くようになりました。そのあとはインターネッツデビューして充満する自意識が僕をして日記サイトとか作らせました。いまはついったーで薄毛も治って快適な日々を過ごしています。くっそこのじじい俺より髪ある。

「いやだってなんだって、毎日やらされてりゃ慣れますよ。だから、毎日やることじゃないですかね。パソコン教室の先生もそういうことを言ってませんでしたか?」

「いやいや、まだそこまで行かないですよ。初日はね、電源の入れかたを教わって、それでね、あのトランプのゲームあるでしょ。そ、そ、ソシリア?」

 惜しい。

 まあ余計なツッコミはいらんでしょう。

「そのゲームでね、あれうまくいかないんだなあ、もう何百回とやってるんだけど、3回くらいしかうまくいかない。そうなると、この野郎ってね、かあっと頭に血がのぼって何度でも繰り返すわけだ。それで、かかあにいい加減にしなさいあんたって言われて、ふと我に返ったのよ。これ役に立つのかなあってねえ……」

 あちゃあ、これやりこみ系じーさんか。年輩の人でよくいるよねえ、このタイプ。

 話を聞いてくうちに、いろいろわかってきた。どうやらじーさんは、昔は仕事でワープロ専用機を使っていたらしいが、それもここ15年は使っていないということ。機種は書院で、いまでも完動状態(!)だが、印刷だけはうまくできない。それで修理をしようとしたが、部品がないと断られた。どうしようかと思っているところに、友人から「パソコンなら捗るよ」といわれて、一念発起、初心者向けのパソコン教室に通いはじめたらしい。

「3月からね、地元の役員をやるんですよ。そうすると連絡とかね、いろいろ作らなきゃいけないんだけど、この時代に手書きってのもなんだしねえ、それに僕もこの年だからねえ、息子とかに書き残しておきたいこともある」

 そういうのこそ手書きでやれよ!と思うが、わざわざ言う必要もない。あんたはデスクトップに「遺書.txt」でも残すつもりか。というか最近万年筆が欲しくなってきたところへ、ネット上の某知人がけっこういい万年筆を入手し充実した万年筆ライフを送っていることに関して非常にクソうらやましく思っていた俺の頭には「万年筆で書け、遺書は万年筆で書け」という言葉が踊っていたが、口にできることでもない。

「文章を書くの自体は簡単ですよ。それ専用のソフト……えーと、道具みたいなのが、パソコンの中に入ってるんですよ。近いうちに教室でやると思いますよ。ただね、文字の飾り付けとか、そういうのが面倒ですね。ワープロ専用機の経験はおありなんですよね?」

「そうなんだよ。これをクリックして、なんだかいろんな模様が出てさ、スタートボタン、タスクバー? もうどれがどれだか横文字だらけでわかりゃしねえ。ワープロみたいに電源入れてすぐに書けるんならねえ」

「そのワープロでも、罫線とか表はめんどくさかった記憶はないですか?」

「そう……そういやそうだったな。でもなあ、友達がなあ、そんなもん簡単だってにやにや笑いながら言うんだよ。僕ね、趣味でテニスやってて、このあとも7時から行くんだけどさ、そこでそいつと会うとまた自慢するんだよなあ。わざわざ文字の色赤くしたりしてさ、だれも頼んでやしねえのに、時候の挨拶なんかをはがきで渡してくる。それ見るとまたこの野郎ってね、あいつ馬鹿にしてんだよ」

 そしてよもやの現物登場。

 見ると、まあ年賀状ソフトかなんかで組んだっぽい感じのものだが、文面がひでえ。同じ趣味を持ってたまに顔見せてるだろう相手に「寒くなってきたが、体調には問題ないか。お互い若くはない。自愛していきましょう」みたいなことを書いてあるのはいい。最後にこう書いてあった。

「慣れればパソコンでこんなこともできる。がんばって追いついてこい」

 蛇足にもほどがある。

 おとなげなさすぎんだろこのじーさんども……。その友達とやらが、テニスの同好会かなんかで直接はがきを手渡して「おまえもまあがんばれ」みたいな得意顔して、目の前にいるじーさんが「なんだおまえちょっと1年くらい早く始めたからって偉そうな顔しやがって。いまに見てろよ」みたいなことを言ってるのが目に浮かぶ。

 まあ、なんか悪くはない。

「旦那さんのそれは、ノートパソコンってやつだよね。最初からパソコンだったの?」

「いや、私も最初はワープロからですね。途中で仕事の都合でパソコンに移行しましたが」

「慣れるまで大変じゃなかった? 仕事だから覚えたのかね」

「まあ、そんなもんですね」

 ごめん。俺がPCに慣れた理由は、エロゲ起動するのに必死こいてコンベンショナルメモリ空ける必要があったからだし、エディタの背景にごとPのCGを表示したかったからだ。

「パソコンってルールがあるんですよ。たとえば……うーん、そうだなあ……電車の自動券売機ありますよね。あれ経由する電車だとか、欲しい切符の金額だとかを押して選ぶじゃないですか。でも、券売機でできることは切符を買うことだけですよね」

「そりゃまあ、そうだねえ」

「あれが自宅にあると考えてください。自宅にいながら切符を買える。ところが買えるものは切符だけじゃない。別のボタンを押すとジュースも出てくる。さらに別の操作方法で、電子レンジの役目も果たしてくれる。なんだってできる。となると、操作方法は複雑になると思いませんか?」

「ほうほう」

「その電子レンジの機能の呼び出しかた、切符購入機能の呼び出しかた、それぞれにルールがあって、そのルールを覚えてしまえばどうってことないんです。ただし、そのルールは、パソコンの初心者は、かつて一度も触れたことがない。だから、大変に見える」

「となると……」

 じーさんは少し考えこんで、続けた。

「ペイントってのが電子レンジで、ソシリアは切符購入ってことか。じゃあ、なんだ、冷蔵庫の機能を呼び出すみたいに、ほかの機能も使えるってことか」

「そうですね。その機能のうちのひとつが、たとえば年賀状を作る、と。そういうことになります」

 やだ、このじーさん筋いい……ソリティアだけどね……。

「……僕ね、ずっと化学関係の仕事をやってたんですよ。バケガクのほうね。測定のための機器ってのをいろいろ扱うんだけども。それと……最近はだれもやらないのかなあ、アマチュア無線もやってたんだけどね。パソコンってのは、そういういろんな機械をひとつにまとめたもの、と思っていいのかね」

「だいたいはあってます。まあセンサーとかついてるわけじゃないですから、できることに限りはありますが、その機能を呼び出すための学習ってのを教室で主にやると思ってもらえれば」

 あー、このカンのよさはそのせいか。理系畑で機械いじり好きな人なのね。


 とまあ、1時間ばかりこんな調子でしゃべってました。なんかこう、説明したいことがうまく伝わったので、それなりに満足が行くものがありました。しかし90分で5000円ってのは相場より安いんですかね、高いんですかね。入学金も払ったんだから、絶対に元取らねえと、なんて息巻いてましたが。負けず嫌いで頭に血がのぼりやすいタイプだって言ってたから、そこそこはがんばれるんじゃないかね。

 あと例のはがきをよこした友達が「インターネットは絶対に光ファイバーじゃなきゃだめだ」って言ってたらしいけど、その友達の言うことあんまり信用しねえほうがいいぞ。うちケーブルだけど充分に速いから。ラグで即死するようなネトゲやるんなら話は別だけどさ。

 まあなんだ、じーさん、がんばれ。アマチュア無線やってたころに、北海道の人間と深夜の3時に酔っ払いながらどうでもいいことしゃべってたのとか楽しかったなあなんて言ってたけど、そういう場所もネットにはあるからさ。あと最後まで納得してくれなかったけど、キーボード打つ速度とPC使いこなす能力は別物だからなー。

20120205

[]コンビニの店長が見た本屋の陳列

 「本を手にとりたくなる売場の演出について

 めっちゃおもしろかったっすよー。

 やー、本屋で働きたかったんですよね。コンビニで社員として働いてて、んでちょっと上司とケンカして辞めた過去があるんですけど、働かなきゃ食ってけないしなー、なにしよっかなーと思って、まっさきに思いついたのがやっぱり本屋で。んで面接行ったんですけどぜんぜんうまくいかなくてですね、あーこりゃもうだめだーゲーセンでも行くかーと思ってスーツ姿のまま入ったゲーセンで虹色町の奇跡やってシャルロッテの水浴びシーンでギャラリーできてああいまこの瞬間俺ロリコンだと思わてるんだろうなーそのとおりなんだけどでも妖精さんのほうが好きなんですよー?とか思ったのもいまではいい思い出じゃねえよ記憶から消してえよ。

 すいませんのっけから話逸れた。

 いまコンビニの仕事やってますけど、やっぱり雑誌の陳列には尋常じゃないこだわりがありまして、んで俺、雑誌の陳列に関しては持論があるんですよね。あれ「賞味期限一日のナマモノ商材」なんですよ。一日経ったらもう廃棄。実際にはそこまで極端な話ではもちろんないんですが、そう考えたほうがいい、ということです。まあ雑誌の場合、返本ありますからリスクないんでそういうことも言ってられるって話もありますが。

 賞味期限一日っていうのは、結局のところみんな発売日に買うんですな、雑誌って。女性誌は比較的その傾向が弱いですけど、それ以外はたいていそう。それで、毎日新商品が入荷する、と考えればいい。そうすると基本は多フェース陳列になりますんで、たとえば……うーん、そうだな、週刊ポストが8冊入荷するとするじゃないですか、そしたら8フェース取りますね。考えかたとしては、です。実際には雑誌什器の段数の問題があって、きれいに見せるためには縦1列にしたほうがいいんで、6段だったら6フェースにしますが。

 女性誌では発売日売りの傾向は弱いっていっても、そこは、たとえば小悪魔アゲハみたいないま売れてる雑誌ありますよね、ああいうのは発売日にガーッとと多フェース展開したら、そりゃ売れます。女性誌って種類多いですからね、ふつうのお店はそれやりません。そこをあえてやる。

 ここで重要なのは「うちはそういう陳列のしかたしてる店ですよー」っていうのが、お客さんに周知徹底されるまで続けるってことです。そうすると、面陳列してる雑誌はほぼ今日が発売日の雑誌ってことになりますから、お客さんが雑誌売場を通過するときに「今日なんか発売の雑誌あったっけかなー」って眺めながら歩いてくれる。

 雑誌って売れなくなってるって言われてますし、実際、テレビ雑誌なんて昔にくらべるとずいぶんと売れなくなりましたけど、やりようですから。なんか売上作れるとこないかなーと思ってる関係者の方は、一度ためしてみてください。客層にもよりますが、多フェースが効きやすいのは、一にヤンマガとかあのへんの青年コミック誌、次にウォーカー系の雑誌、あとは女性誌です。あと陳列はきれいになー。本部の用意してくれた返本リストになんか頼ってちゃだめだおー。もっと早いタイミングでびしばし返本しちまえ。ただしViViとかCanCamとかあのへんの雑誌はしつこく売場に残しておくんだ。あとワンピースみたいな化物コミックスはレジ前展開なー。万引き防止ってのもそうだけど、D+1で大量入荷する常温保存可能な新商品と考えればだんぜんレジ前っすよ。売れますぜー。


 というわけでですね、俺はそういうやりかたで雑誌の売上はけっこう伸ばしてきたぜ、という自負があるわけです。証拠になる数字を出せるわけじゃないんで「言ってるだけだろ?」って思われてもしゃーないですが、そこはまあ信用していただくとして。

 ただこれ、コンビニなんですよね。冒頭に挙げたリンク先は本屋さんの話です。

 俺はあくまでコンビニやってる人間としてリンク先のまとめを読んだわけなんですが、いやあ、それでもおもしろいですよ。冒頭で受動的なお客さんと能動的なお客さんって話題が出てきますが、これってコンビニでもわりと不変のテーマでして。客をもっとも受動的なものだと考えるのが、たとえば某7の字がつくチェーン店の偉い人ですな。あのチェーン、またぞろ店舗数を爆増させる計画たててるみたいですが、コンビニの歴史って「需要がないところに需要を創造してきた」って側面がかなりありまして。代表的なのは冷やし麺みたいなもんですかね。あれ20年前にあんなに売れる商材じゃなかったですから。おでんなんかもそうですな。コンビニでおでんを買う、という習慣そのものを「創造」したのは7の字がつくあのチェーンです。なんだかんだいってリーディングカンパニーですな。それじゃ恒例のやつ行ってみたいと思います。


 爆発しねえかなああのチェーン!!!


 ふう……ぜんぜんすっきりしねえ。もうおにぎりの100円セールやめてくれよ……。

 でまあ、それはそれとしてですね、こう考えると、あのチェーンって、客を徹底的に「受動的」なものと考えてるんですね。提供されないと需要に気づかない。そういう考えです。提供される。それで人は初めて気づく。「ああ、こんなものが欲しかったんだ」と。

 ただ、漠然と陳列してたってだれも気づいてくれないわけで、ここで陳列の話になるわけです。まあ、広告宣伝プランディングタイアップとかそういう話はとりあえず忘れておいてください。

 話を陳列に絞りますが、なるほど、本屋さんには公式ってのはないんだな、というのが上記のまとめを読んでよくわかりましたね。コンビニですと、あります。2フェースと3フェースのときの効率ですとか、1段展開したとき、1フェースのときと比較してどんだけ売上が変化するかっていうのは、だいたいのチェーンがノウハウとして持ってるんじゃないでしょうか。まあアテにはならないっすけどね!

 コンビニにあって本屋にそれがないのは、ひとつにはチェーンの規模でしょうね。それと、コンビニは、おそらくは本屋と比較して立地による売れかたの違いが小さい。結局人がコンビニに来る目的のかなりの部分は「はらへった」とか「のどかわいた」が多くて、その限りにおいて、そこまで極端な差って出ないと思うんですよ。

 これは、本ってのがかなり趣味性の強い商品だってこともありますね。そしてアイテム数がべらぼうに多い。じゃあどうすんのってことになったときに、個展ごとに商圏に最適化した戦略を取らざるを得ず、それって公式化できんの?となったら、そうまではできないでしょうよ、という話になる。高校の通学路にある本屋でビジネス書押しまくってなんかいいことあんの?って話ですよね。

 そうなると、本屋の客は、コンビニなんかと比較すると、すべてが「能動的」な客と言い切っていいかもしれない。能動的な客相手に多面展開とかいらないでしょ、それより品揃えでしょ、という話になるのかもしんない。

 俺自身は、コンビニ経営者としては多フェース展開の信奉者なんですよね。ただこれ、以前にもどこかで書いたと思いますけど、多フェース展開をやるには絶対の条件があって「売り込んでる商品以外の部分で、客を失望させない」という強い意志を売場に反映させる必要があります。多フェース=アイテム数削減ではないです。まあ、このへんの話は上記のまとめにも出てきますが、たとえば俺が、入口入ってすぐの棚で、スナックの新商品を単品で1本ぶち抜いて作ったとするじゃないですか。これ、単品を売りまくることが目的「じゃない」んですよね。いや、そりゃ単品でも売れますが、そうじゃないです。あれは「この店はスナックを売る意志のある店です」という店の意志表示なんですな。だから、通常の売場できっちりと「押さえた」品揃えをしとかなきゃいけない。そうでないと待ってるのは客の失望です。

 コンビニで買うスナックなんて、本と比較すれば商品どうしの差異なんてあってないようなもんじゃないですか。カルビーののり塩買おうと思ってた人が、湖池屋に心変わりすることなんていくらでもありうることなんだから。しかし、そうした差異の小さい商品群のなかでも、品揃えってのはきっちり考えていかないといけない。

 こう考えると、本屋における多面展開ってのは、店の意志表示としては大いに必要なんだろうな、と思いますね。特設スペースみたいなのがあったとして「なぜそれを、いま、ここに置くのか」という客の疑問にできるだけ応えうるような。あるときはそれは話題の新刊だったりするでしょうし、別のときにはアニメ化作品、さらに別のときには「学園もの」でまとめてみました的な、企画っぽいかたちになるかもしれない。それはライトユーザーにとっての取っ掛かりにもなるでしょうし、俺みたいなどっちかっていうと本読みの人種ですよね、そういう人たちに「この店、わかってんなー」と思わせることにもなるかもしれない。そして、それがフックになったうえでの品揃えですわね。それができれば「信頼される本屋」になるんじゃないかな、と。

 そう、本屋って、コンビニよりも明確に「店への信頼」が客の行動を左右するのかもしれない。少なくとも客としての俺はそうですね。


 さて、ここから先は蛇足。

 実際に、リンク先の人たちみたいに考えぬいて売場を作ってる本屋って、あんまり見たことないんですよね実は……。近場で一軒、信頼してる本屋さんはありますけど。

 俺はもともと横浜が地元なんですけど、かつて河合塾のそばにあったまんがの森、あそこは陳列すごかったなあ……。平積みもそうなんですけど、ふつうの棚ですよね。背表紙で陳列してある棚。あそこの陳列順がもう、客の購買行動を先読みしてるとしか思えないような「くそっわかってやがる!」っていう陳列になってた。俺は「どこかに隙はないか」って探すやな客だったんですけど、やー、なかなか見つけられなかったですね。

 あと横浜だとメロンブックス。品揃え的にぎっちぎちに詰まってるせいか、既刊で目的のものがあるときは探すの大変ですけど、よく衝動買いさせてくれますね。衝動買いさせてくれる本屋は大好きです。女子中制服図鑑を衝動買いさせてくれたことはずっと忘れません。

 本の衝動買い、大好きなんですよね。俺はアマゾンを極力利用しない派なんですが、田舎に住んでるとなかなかそうも言っていられない。それでも可能な限り本屋で買いたいのは「なんかないかな」っていう気分が強くあるからです。まあ「なんかないかな」っていう気分の前に、ネットの知人が俺の好きそうなものを紹介してくれて、それはそれで楽しいんですけども、本屋で現物を見て「わーこれほしー」と思って買っちまって、すぐにそのへんのドトールやらマックやらで本を開いて読み始める。あの感じが大好きなんです。

 これは、俺にとっての「本を入手する」ということの原体験がアマゾンにはないからかもしれない。おっさんですからね。でもねー、本屋で衝動買いさせられたい人ってけっこういると思うんだよなー。いてほしいよなー。業態なりの制約ってのがあるのは百も承知で、望まずにはいられない。たとえば(いつ出るのかもうだれにもわからない)「紅」の新刊を買いに行った俺が、隣に「これこそロリラノベの最高峰! 7さいはもうおとなだよ☆」っていうPOPついて俺の知らないロリラノベあったら絶対買う。おいたんちっさいおんなのこすきだよ。

20120127

[]「ものべの」体験版

 んーと公式はこちらです。

 リンク先18禁ゲームの公式サイトなので18歳未満は行っちゃだめです。

 体験版の感想はわざわざここで書くのはやめようかなーと思ってたんですけど、ちょっと気が触れたような良作だったんで、紹介したくなった次第です。


 お話の内容その他は公式サイトで確認してください。ひとくちでいうと伝奇要素ありの和風ファンタジーですが、なんていうんだろ、ふつうの現代日本の生活になんの説明もなく妖怪が共存してたりするあたりで、えーと……こういうのなんて言いましたっけ、ほら、あるじゃないですか。なんとか……なんとか……いいや、なんでも。

 似たような作品観の世界として、たとえば池上永一の「風車祭」を挙げておきましょうか。石垣島を舞台にしたふつうの現代ものなんですが、そこに伝統的な沖縄の信仰世界が二重写しになっているコメディタッチの長編小説です。登場人物はふつうに「マブイ」を落とすし、六本足の豚は出てくるし、そこでは信仰の世界が「ふつうに」存在してることをだれも疑わない。

 こういうのって、ファンタジー要素の設定の強度が大事だと思うわけです。その点「風車祭」は、かなり戯画化されているとはいえ、かつては存在していたであろう信仰の断片を流用してきてるので、強度の点では心配ない。それになにより、あの作品では「沖縄」というのが最大のファンタジー要素として機能してるってのもあります。

 で、この「ものべの」です。体験版やった別の人が元ネタをウィキペから探してきてましたが、舞台は高知県の山奥です。登場する信仰なんかも現実に存在するものを流用してるっぽい。このへんの設定の強度は相当のもんだと思います。

 最近俺は、ちょっとした好奇心で神道とか神社について、本を10冊近く読んで調べたりして遊んでたんですが、調べたものをお話に活用するっていうのは、おそらくちょっとしたコツがいるんですよね。ましてその内容が「世界観」とも呼べるようなものに反映するとなると、これは相当の技術と知識の厚みを要する。これが「最初からそういう世界です」っていうんなら、読んでるこっちにもそれ相応の覚悟めいたものがあるんですが、この作品はそうじゃないです。あくまで「現代日本」の「高知県」のどこかのお話です。そこに妖怪が存在する日常を出現させる。これ、並大抵の力技じゃないです。なぜなら「妖怪が日常生活の体系に組み込まれている社会」を再構成しなければならず、かつそれは「現代日本」でなければならないから。

 この処理が抜群にうまい。いや、これはほんと驚きましたね。

 これを実現するために使われているのが、ひとつには妖怪や地域信仰に対する知識ですし、もうひとつ、日常描写のリアリティです。俺が驚いたのは、地元の年寄りたちが使う方言ですね。あと唐傘の妖怪の飛車角も方言でしたが、文字で方言を書くのってけっこう難しいと思うんですよ。俺自身、1970年代の函館の浜言葉の使い手ではありますけども、その「自分が使える」言葉ですらも、うまいこと文字で再現するのはかなり難しいと感じる。

 ほか、すっかり美麗な背景に慣れてしまった「近年のエロゲユーザー」である俺が、あらためて驚くような背景、細かい効果音なんかもリアリティの立ち上げには大きく貢献してます。

 それと「田舎」というものを表現するための無垢の視点を持った、夏葉というキャラクターの存在ですね。「都会しか知らない」「子供」の驚きを通じて、読む人がこの作品世界にスムーズに導入されやすいようにできてる。


 テキストは達者でした。うまいテキストって開始数分でわかるものなんですが、この作品はまた、作品世界への導入、キャラクターの立ち上げ、ズレの表現、あらゆる部分でとにかく速度がすごかった。文章のひとつひとつの比重が高い。それが説得力のある絵に乗っかってるんだから、おもしろくないはずがないです。

 あと音楽な。音楽もいいんですわ。理想のBGMって、意識しないときには聞こえなくて、気がついたときにはよく聞こえる、みたいなものだと俺は思ってるんですが、まさにそんな感じでした。この体験版の直前まで、2003年度のそこそこ有名な作品をやってたんですけど、そのへんと比較すると洗練の度合が違いすぎて驚く。あまりにあちこち隙がなく洗練されてたんで、これは直前にやった作品との9年の時差が俺の判断を狂わせてるのではないか、なんて疑ったくらいですが、体験版をやったほかの人たちもたいがい「なにこれ」って呆れるレベルみたいなんで、まあ、この作品のレベルそのものが高いってことなんだと思います。


 いやー、ほんとはねー「俺がおもしろいっつってんだからおもしろいに決まってんだろいますぐ体験版やれよ!」で済ませたいくらいなんですけども、それだけじゃエントリになんないんで、いろいろ理屈つけてるだけって感じです。

 あともうひとつ、確かにおもしろい、レベルも高いのはまちがいないんだけど、題材的にそこまで万人受けするものなのかっていうと、決してそうは思えないあたりですね。体験版やった限りでは特に薄暗い感じはしないんですが、このあとずっと同じ雰囲気で続くかっていうと、ちょっとダークな雰囲気入ってくんじゃないかな、という気はしますし、なによりメインのヒロインになるであろう夏葉が、えーと……これ……お嬢ちゃん何歳?

 伝奇要素もですよね。俺ライトな伝奇要素はわりかし大好物ってのがあるんですけど、これけっこう人選ぶだろうしなあ……。あとなにより、過去に俺が体験版で絶賛してきた作品って決して売れてるわけじゃないってのもあります。

 というわけで、この作品はですね、


1:ヒロインが規格外にちっさい(というか子供)

2:妖怪とかふつうにいる

3:おそらくはストーリー性がかなり強い

4:消費するものはキャラクターではない

5:攻略ヒロイン少ない


 あたりが気にならない人には絶対のおすすめじゃないかなーと思いますが、それ以外の人にはさほどおすすめできないかもしれない。ただなー、おもしろいんだよなー。本気でおしろかったんだよなー。

 というわけで、また一時的にテンション上がってるだけかもしれない俺に騙されてちったーつきあってやってもいいかーと思う方はこちらへどうぞ。

 あとひよこストライクようやく発売になりましたね……。


※追記

 メーカー公式ページに立ち絵画像集が掲載されてました。こいつぁ春から縁起がいいぜ……。


※追記2

 まあたまにはガス欠になってふつうにもなります……。