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20081214

[]一人での貧乏旅行の心得

 ネットで少しだけ知り合いになった方が、この冬に例の切符を使って放浪してみたいとのことで、俺の知ってる限りの貧乏旅行のスキルなんかを書いてみようと思います。ただし知識は20年前のもので、それっきり更新されていません。調べる手間もかけません。役に立つものはてきとーに使ってください。

 まあ、気ままな一人旅は若いうちにやっとくものだよね、という意見に反対する人は少ないのではないかと思います。仕事を始めると、単純に時間がないですから。でも個人的には気ままな一人旅って、ほんとは40代とか50代のおっさんこそ楽しめると思うんだけどさ。体がハードスケジュールについてこないかもしれないけど。


 青春18きっぷってことで、基本は鉄道での移動になると思います。鉄道での貧乏旅行の場合、昔と今とで、今のほうが決定的に不利なのは、長距離鈍行、なかんずく夜行がなくなっていることでしょうね。大垣鈍行すらシーズン運行になるご時世だってんだから。必然的にどこかに宿泊しなければならないんですが、選択肢としてはいくつかあります。


・駅寝

・格安のビジネスホテル。商人宿や木賃宿と呼ばれるようなもの

・カプセルホテル

・ユースホステル

・完全な野宿


 まあこれくらいでしょうか。それぞれに利点と欠点があるので、自分の経験の範囲で書いてみます。あー、あと最近だと健康ランドって選択肢があるのか。俺のころはなかったんで、利用したことないですね。あと国民宿舎は高いです。


 まず駅寝。文字どおり駅で寝ることです。これのメリットは、とにかく金がかからないこと。どんな駅で寝るか、ということについては、深夜でも閉鎖しない大規模な駅の待合室、あるいは無人駅、ほぼこの二択になるんじゃないでしょうか。ちなみに俺は大規模な駅で寝たことはないです。なんか追い出されそうな気がして。実際のところどうなんですかね。深夜でも旅客営業のある駅なら、待合室も24時間空いてるかもしれないですけど、最近はどうなのかなあ。どっちにしろ落ち着かないと思います。

 対するに無人駅なんですが、装備としてほぼ野宿同等のものが必要となります。待合室という名の小屋があったところで、結局は外気に直接触れてるようなもんですから。扉がないところだって多いし、そもそも足を伸ばして寝れない場合もある。なによりも、どの駅が無人駅なのかは時刻表じゃわからないっていうことですね。俺が旅行に行ってたころには「○○本線全線全駅」という、いまは亡き宮脇俊三氏が監修したタイトルどおりの本があって、無人か有人か、乗降客数はどれくらいかなんてことがわかって、ある程度は使えました(現地で情報と違ってて愕然としたこともありますが)。このあいだwikipedia見てたら、それでもある程度の駅ごとの情報はのってたんですけど、写真があるのも少ないし、あんま使えないって感じですね。まあ、このご時世なんで、ネット上になんらかの情報はあるのかもしれません。

 なお、駅で寝る場合の鉄則ですが、絶対に、地元の人たちに迷惑をかけないこと。必ず終電で現地に到着し、始発で出発する。本来は人が留まるべきではない時間に、本来的ではない用途で公共の場所を占有するわけですから。モラル的には駅寝ダメ、ゼッタイって考える人もけっこう多いはずです。

 あともうひとつ。無人駅で寝る場合、とにかく怖いです。乗降客数が少ない、周囲に人家が少ない、だから無人駅なのであって、駅によっては本当に原野のまんなかみたいな場所にあったりします。慣れれば、まあ俺みたいにもともと一人でいることが苦にならない人ならどうにかなるんですが、でもあれは、絶対に超自然的現象とかある!って信じたくなるし、そうでなくてもクマとか野犬とか出たらどうしよう、ということが頭をよぎらないことはないです。とにかくあれは怖いです。ここで自分襲われたらだれの助けも得られず死ぬってことですから。ラジオはあったほうがいいですよ。音を出すことでなんか呼び寄せるんじゃないかって不安になるんですが、冷静に考えてみれば、ホームに立ってオナニーして線路射しても見てる人がいる可能性はほぼ絶無です。

 あー、あとそうだ。神経質な人は百均で買える小さいほうきを使い捨てのつもりで持ってったほうがいいです。俺はハイサッサと軍手持ってました。あのホコリ除去能力は異常。まず一枚を土とか集めようと割り切って犠牲にし(結局は軍手で集めてるような状態にはなりますが、気分的に違う)、あと2枚か3枚使えば、そんなに気にならないレベルになります。虫は冬場だからあんまり心配しなくてもいいか。

 なお寝袋などの装備ですが、これはそれこそ参考になるサイトはいくらでもあるでしょう。基本的には、行く先の最低気温を調べて、それに合った寝袋を持ってくってことですね。

 まあ、なんにせよ相当の覚悟と度胸がないと、最初の一人旅でこれやると挫折するんじゃないかなあ。装備さえしっかりしてれば夏よりはマシだと思いますけどね。夏の虫はほんともう。思い出したくもねえ。


 次に商人宿の類です。俺のころは、宿泊施設を調べたければ「宿泊表」(っていう雑誌があるんです。いまあるか知らないけど)しか頼るものがなかったのですけど、そのなかで「駅から近くでバカみたいに安い。んでもって素泊まり可」というのがあれば、それがまずもって商人宿の類です。俺のころでは3000円くらいであったけど、いまはどうなのかなあ。自治体の観光協会のサイトとかにもけっこうリンクありますよね、いまは。

 どんな宿に宿泊するのでもかまわないんですが、素泊まりは絶対条件です。んでもって、若い人間で飛び込みだと足元見られるようなこともありますんで(俺はやられたことないけど、話は聞いたことがある)、あらかじめ電話で予約するほうがいいです。「○○を見たんですが、素泊まりで」っていう感じで。ルートは制約されますが、現地で宿がない、という絶望感を味わわなくて済みます。予約の際は「この本には○○円って書いてありますけど、それでよろしいんでしょうか」みたいな確認をお忘れなく。

 宿のランクはさまざまです。「えー、これふつうにホテルじゃん」と思うようなところもあれば、なんだこのつげ義春が描いたみたいなすごい木造家屋は、みたいな感じでトイレとかもうそれだけで怪談じゃね?みたいなところもあります。長野で泊まった宿のすさまじさはいまだに忘れられない。階段とかさ、おまえの本性は梯子なのでとっとと正体を現してください的な。宿のババアがまた高橋留美子作品っぽくて。

 あと、安い宿に限らず、北海道は冬季、燃料代は余分に取られると思ってください。一流ともなりゃ話は別なんだろうけど。

 この手の宿は、人口5万人クラスの地方都市だったらあるんじゃないかな。

 あーあー、忘れてた。チェックインの時間が終電の都合で極端に遅くなるときは、その時間に入ってもいいか必ず聞くこと。


 カプセルホテル。20年前は商人宿よりは若干高い印象でしたね。これは人口50万人クラスの都市でないとない印象です。予約は特に必要ないですが、金曜土曜は何件回っても空きがないとか泣きたくなる状況のときもあります。

 寝るだけだったら、コストパフォーマンスは極めていいですね。清潔ですし。でもサウナとか浴場とか極端に野郎くさいことがあったりする。あれはなんなんたろう。入っただけで妊娠する、みたいな。まあ、なにはともあれ心おきなくオナニーに没頭できるのがいちばんすばらしいところです。ただ、余分な料金払ったところでしょせん実写のAVしか見れないので、自前でちゃんとペンクラとか仕込んでかなきゃだめです。えろまんがにもいろいろありますが、こういうときは気分的にペンクラだと思うのです(極めてどうでもいい情報)。


 ユースホステル。や め た ほ う が い い で す 。俺はもうトラウマもんですね。あー、いまはどうなのかな。当時は宿泊客が集まってレクリエーションだかなんだかやらされたんですよ。みんな集まって宿の主人がギター弾いたりなんかして。ああもう死ねそういうノリ。なんかちらっと、そういうことはやらなくなった、個室も多くなった聞いたような気がしますね。当時はユースは個室なんてほとんどなかったんじゃないかな。どっちにしろ選択しには入ってこないんじゃないかと。


 んで最後に完全な野宿。これは無理です。自転車で旅行したこともあったんですが、安心して野宿できた場所は砂浜だけでした。それも潮の干満の関係があるから、事情に詳しくないならやらないほうがいいらしいですね。公園とか、あと駅前とかまじ最悪ですよ。ホモの人に襲われたりしますから。


 宿泊に関しては以上です。

 あとは、項目立てて説明すんのめんどいから思いついた順にてきとーに。


 一人旅っていうとなんとなくロマンチックに感じられるんですが、実際は退屈との戦いです。なんらかのヒマつぶしのスキルは持ってたほうがいいです。俺の場合は音楽と本でした。まあDSでもなんでもいいんですけど。基本的に、鉄屋さん、わけても乗りの人とか軌道好きとかの人以外は、鉄道に乗ることそのものはそんなに楽しくないですね。特に原野のなかを走ってたりするとどうしようもなく退屈です。ロマンもなにも、なんとなく固いボックスシートで居眠りしてて、気がついたら腹減ってて、駅そば食って、また夜のなかを延々と列車に乗って、の繰り返しになる可能性がある。

 列車で移動することの利点のひとつは、若い旅行者には、じーさんばーさんがよく話しかけてくれることです。ちなみに、女の子は話しかけてくれないし、雪の降る街に行っても忘れていた幼なじみが乗り込んできて運命の再会をすることもないです。

 一人旅っていうのは、本当に一人なので、人によっては世界中から自分が取り残されてる気分にもなるし、孤独であることに全神経が行ってしまって、せっかく旅先にいて自分の知らないものをたくさん見ているというのに、そのことに気がつかないことも多い。コミュニケーションの得手不得手はとうぜんあるでしょうけど、可能な限りは知らない人にも話しかけてみるといいと思います。おもにじーさんばーさんをターゲットに。


 個人的には、列車での移動は控えめにして、街歩きをメインにすることをおすすめします。街ってのは人の生活の集大成なので、けっこう見ているだけでも飽きません。ほんと言うと「変な看板を見つける」とか旅のテーマがあったほうが気分的に楽だし、飽きずにも済むんですけど、それだとなあ。なんのために旅行に出かけてるのかがわからないし。

 自分の感覚を「見る」「聞く」「嗅ぐ」などに集中して歩くことは、実りが多いと思います。そのときは単なる経験、記憶であったとしても、あとになって「そういえばあのとき自分が見たものは」というかたちで鮮やかに蘇ってくることがあります。というか、俺のテキストはそんなものの集大成です。坂本龍一だったかが、娘への手紙で「いまの自分を形作っているもののほとんどは17歳までに吸収したものだ」(年齢はうろ覚え)的なことを言っていたらしいですが、それはあながち嘘ではないと思う。まあ、将来への糧であることを自覚して行動する十代とか気持ち悪いですけどね。


 人とつながる手段は持っておいたほうがいいです。携帯でもPCでも。見ること、聞くこと、外界の刺激を受けること、そうした経験は「人に報告したい」という気持ちを強く喚起します。そのときに、すぐに報告できるツールがあったほうが、悲しくならないです。俺の場合、携帯がまだまだ一般的でなかった時代だったので、ひたすら手紙を書いていました。あまりに膨大な量だったので、もらったほうは読んでいなかったかもしれないですが、それでも俺にとっては「だれかに報告する」ことに意味があった。


 食い物については、結局チェーン店が安いです。牛丼とか。ココイチでポークの500とか。そういうの。20年前はいまほど地方にはチェーン店がなかったんだけど、限界まで金がなくて空腹に陥った俺が飢えをしのいだ方法なんて書いておきます。まず、あんぱんを3個ばかり買います。んで、あんぱんひとくち食って、水をがぶ飲みします。それの繰り返し。腹は異様にふくれて、甘いものを連続して食ったことによって胸やけが発生し、当分なんにも食う気がしなくなります。これでなんとか2日もたせた。もう二度とやりたくねえ。なけなしの金で最後に食った駅そばとか神の食い物かと思いましたよ。


 あとは……書き忘れたことあったかな。保険証のコピーは持ってけ。荷物は極力減らしたほうがいい。タオルなんざ野宿するんでもなければそうそう使わないし。最悪必要になったらコンビニで買えばいい。宿に宿泊するんならなんかのタオルくらいはありますし。歯なんか磨かなくても死なないし。着替えなんざ、このコインランドリーの多い時代、途中で一度でも洗えば半分に減らせる。そうやってみると、野宿のフル装備をするんでなければ、荷物なんてたかが知れてる。身軽なのがいちばんです。それと、鉄道での移動にこだわらないんなら、北海道とか沖縄に行くフリープランは、宿泊費、宿代込みで、オフシーズンの平日だとバカみたいに安いんで、考慮に入れてもいいかも。

 てなわけで、なんか聞きたいことあったらついったーでフォローしててきとーにメッセージ飛ばしてくれるか、あるいは日記ででも聞いてもらえれば、コメント欄になんか答えますんで、お気軽にどうぞ。という、膨大な長さの私信でした。

 いろいろ否定的なことも書きましたけど、可能なら若いうちに絶対に「本当の」一人きりの時間は持つべきだと思う。ふだんオナニーとかちんちんとかばっか書いてるけど、こういうときだけは38歳のおっさんになっておく。若いときの一人旅は、絶対にしたほうがいい。おそらくそこには大した事件もなく、道中は退屈で、通学時間帯に学生が列車に乗り込んでくると自分がなにをやってるのか疑問にもなるだろうし、一人で食べる旅行先の牛丼はおいしくないかもしれないし、つまんないし、いいことなんてないかもしれない。それでも、一人旅は、しておいたほうがいいです。

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