20090306
■[雑文]コンビニの現場から景気の影響について考える
つーわけで、性懲りもなく、現場で考えてみました。
バブルだの不景気だのいうものと、とんと縁のない商売をやっている。まあ、コンビニってやつなのだけれど、俺がコンビニで社員としての仕事を始めたのが18歳のころで、21歳からは店長をやっていた。だいたい20年はこの業種でメシを食っていることになる。ということは、バブルの崩壊とやらが1991年だから、俺は実感としてバブルの最末期を知っていることになる。
で、なんか影響があったのか、というと、別にない。もともコンビニは、あまりに店舗の改廃が速い(できてすぐに潰れたコンビニ、と考えて思い当たらない人のほうが珍しいくらいだと思う。また逆に、20年間同じ場所にあるコンビニ、というのもなかなか想像するのが難しいはずだ)ため、景気などの大きな影響よりも、近隣に競合店を建てられるかどうかのほうが、はるかに売上に影響がある。短期的には、近隣で大きなビルの工事があったりすると、それだけで売上が10万単位で跳ね上がったりするため、実質的な景気の影響というものは特に見えづらい。
それに、考えてほしい。不景気だろうがなんだろうが、人は腹が減る。あとはどうやって腹を埋めるか、という問題になるのだけれど、自宅で作らない人は、これは不思議なまでに「絶対に」作らない。作らない人が節約を考えたときにどうするかといえば「どうやって安い弁当、店を見つけるか」に尽きる。その気になれば、もやしと少量の豚バラパックを買ってメシでも炊けば、腹を埋めるだけなら相当に安く上げられるのだけれど、作らない人は、本当に追い込まれないとそれをしない。その場合でも作るのは袋のインスタントラーメンだったりするのだけれど。
てゆうわけで、コンビニが景気の影響を受けるにしても、それは近隣に弁当屋などの異種競合がある場合のみだ。コンビニは、さまざまな小売業態のなかでも、もっとも少ない商圏人口で店舗が成立する(一説には3000人ともいわれている。まあ、ある程度の通過人口があることが前提だろうけど)商売の一つなので、スーパーが成立しない、マックも牛丼屋も成立しない、そんな田舎の片隅にひっそりある店が、隙間産業的に高い売上を誇っている例がよくある。てゆうわけで、弁当屋とか食品スーパーの競合ができにくい場所では、依然としてコンビニの優位は変わらない。腹が減って、さらに自分で作りたくない場合は、コンビニに行くしかない、そういう場所がいまでも多いわけだ。
四方山話的に付け加えると、いまやコンビニの敵はコンビニではない。昔、それこそ20年前だったら人口に比してコンビニが少なかったから、細密に見ていけば、出店の余地のある場所はいくらでもあった。ところがいまは、どこに店を出しても、必ず潰し合いになる。以前に、どこぞのチェーンのお気楽な会長が、日本には4万軒のコンビニが成立する余地があるなんて言ってたけど、そんなのはもう夢物語になった。だいたい24時間営業のジャスコ来たらコンビニなんざ吹っ飛ぶわね。大店法が変わってもう、ああいうイオンタウンみたいなのはできなくなったみたいだけどさ。それでも西友みたいな、昔からの駅前立地商売やってた店が、そんなに大きくない敷地で24時間営業やってる例もけっこうあるわけで、つまりまあ、業態的には限界に来てるわけさ、コンビニってのも。
少し話が逸れた。元に戻す。コンビニは景気の影響を比較的受けにくい。そして俺の実感としても、より大きく影響したのは、近隣に競合ができるかのほうだった。まあ、そういうこと。
んでまー、それだけならわざわざ文章にしない。ふだん、自分の仕事について書くのにそんなに熱心ではない俺が、あえてこんなエントリを書く理由。
それは、ついにコンビニにも景気の影響が明白に押し寄せてきたから、だ。
20年間の経験で、これは初めてだ。バブルの影響も、その崩壊の影響も、ほとんど現場では感じとれなかったというのに、今回は、確実に「これはいかん」という手ごたえがある。ただし個人的には、これが「本当に」不景気の影響なのかどうか、ということについては、俺は懐疑的だ。どうもイメージ先行で消費者のほうがそれに乗せられている気配がある。
本当に不景気なのか、といえば、そりゃ世のなか不景気なのだろう。だけど、本当に食うに困ってるほどの人はいるのか、というのが俺の疑問だ。うちの近所は明確に低学歴地域で、かつは低所得地帯なのだけれど、なんだかんだで、ハーゲンダッツ買ってくんだよ。それもドルチェ。あんなもん家族全員で食ったら、そのぶんでエッセルスーパーカップをどんだけ買えるんだって話。さらにいえば、本当に食うに困ったらアイスなんか買ってる場合じゃねえ、もっと効率よくカロリー取れよって話だし。実際俺は、横浜は某所にあるドヤ街のすぐ近くにあるコンビニのことをよく知ってて、全盛時にはドヤ街の消費をほぼ一手で引き受けてたような感じになってる店だったんだけど、特徴的なのは、とにかく白飯とバナナと大福。これがアホみたいに売れるんだよね。あと牛乳。特に白飯は、その店1店で、横浜全体の売上を左右すると言われてたほど(まあ、これはカロリー云々の問題というよりは、炊飯器持ってないけど米の飯食いたい人にはほかに選択がなかったってのも大きいんだろうけど)。
本当に貧乏で、金銭的にやばい人たちがいるところでは、安くてカロリーを摂取することができるものが売れる。しかし、現実はまだそのようにはなっていない。だからまだ、本当のどん底にはなってないんだろうな、と思う。いまの印象では、まだ「本当に不景気」というよりは「テレビが不景気って言ってるから不景気っぽいよね。ちょっと収入減ったし」くらいのイメージ。
さて。じゃあ。いったいなにをもってして、俺は景気の影響がコンビニまで押し寄せてきたと言ってるのか。そのことを以下に書こうと思う。
まず、新商品が目に見えて売れなくなってきた。この傾向は去年の半ばくらいからはあったんだけど、今年は特にひどい。そう思いません?>コンビニ関係者の方。なんか、袋スナックとかカップ麺関係、今年に入ってから、ほんっと売れないですよね。もちろん大型商品は従来どおり売れるんだけれど、特に目玉商品のない週に「とりあえずおすすめ」的に展開してるような新商品がほんと売れない。じゃあかわりになにが、っていうと、100円菓子が売れてる。これはうちのライバルにあたるチェーンがやたら気合入れてラインナップ増やしてるから、必然的に消費者の目が「100円菓子」というものに向きやすくなってるっていう理由はあると思うんだ。いろんなものの売上がかつかつななかで、100円菓子だけ前年比がおかしいんですよ。伸びまくり。100円菓子の売上は、内容がバッティングしてる煎餅類などの米菓、もちろんポテチなどの袋スナックと食い合ったりするんですが、今年に入ってからは、ほぼ一方的に100円菓子が売れてます。
これってつまりどういうことかっていうと、確かに100円菓子の価格優位性っていうのはあるんですが、それ以上に、消費者のほうが保守的になってるっていうことのあらわれだと思います。つまり、新商品というのは、たとえば「じゃがりこ」のようにもとが超人気商品で「その新味」ということになると、ある程度の味の保証はあるんですが、まったくの新商品ってなんの保証もないんですよね。それがうまいのかまずいのか。どんな食感なのか。もちろん店側では「これは素晴らしい新商品」みたいな煽りかたしますけど、そんなものがあてにならないことは消費者のほうだってよく知ってるわけです。100円菓子はその点、中身は明白なわけです。たとえば100円菓子のポテチなんかだと正直味は微妙なんですけど、そのへんは含み済みで買うのが「安い」ということでしょう。だれも100円菓子のギザギザポテチに「アラポテト」の味を求めてはいないんですよ。
ここまで客の購買動向が保守的になっているということは、つまり「損はしたくない」ということですよね。無駄なものを買ってがっかりしたくはない。大げさな話ですけど「まだわからない未来に賭ける」よりは「すでに知ってるけどハズレのない現在」を選択するという話でもあります。
これがひとつ。
もうひとつ。
催事ものが笑えるくらい売れない。具体的にはバレンタインデーのことなんですが、今年はまあ、曜日まわりが悪くて義理チョコ需要が発生しにくいっていうのも確かに理由のひとつではあるんですが、それにしたって売れない。ひどいもんすよ。半額処理の山積みで泣きそう。ほか、節分だとかひな祭り、そのへん軒並み悪いですね。催事っていうのは、商圏に特別な変化がない限りはもともと似たような数値で毎年推移するものなんですが、今年は催事という催事が軒並みハズレ。理由はなんだっていう話になったときに、うちの奥様がぼそっと言ったんですよね。「ひょっとして景気じゃね?」って。これが、今回のテキストを書く気になった直接の理由です。
ただ、この催事ものの弱さについては、不景気そのものよりは「不景気っていうニュース」になんとなく煽られてるだけかなっていう感じがします。
というのは、客が金を持っていないときに真っ先に影響を受ける数字は、一人当たりの買い上げ金額のはずなんです。本来は。まあ客単価なんていったりするんですが、そっちはほとんど前年と変わっていない。まあ客単価については、売場の作りこみ、新商品の売れ行きなんかでけっこう変わったりするんですけど、上述のように、新商品は売れないです。その状況でなお客単価を落としてないってことは、みんな一定金額はコンビニで使っているということであって、催事ものの弱さが直に、客の可処分所得の減少に原因している、というのはちょっと短絡なようにも思えるのです。
とまあ、ここまでずらずら書いてきました。
どんなかたちであれ、景気の影響っていうのをコンビニの現場で感じるのって、ほんと珍しいんですよ。ただまー客単価に露骨な影響が出ていないことから、まだ工夫のしかたによっては売上は維持できるレベルだな、と判断しています。
コンビニが景気の影響を受けにくいのは、早い話がベタに生活に密着してるからなんですよね。かといって、もともとの利用層がそこまで価格に鋭敏じゃない。それでかえってスーパーほどの景気の影響は受けない。
ただねー、今回のこの変化っていうのは、景気云々よりもう少し本質的なものなんじゃないか、という気はしています。というのは、今回のこの不況で、企業の一部が新商品の開発を抑制しはじめてます。いままでコンビニっていうのは、小売のアンテナショップ的な側面があって、メーカーが「コンビニ限定」っていうかたちで新商品を開発して、コンビニがそれを売る。メーカーはその売上を今後の新商品開発の目安にする、という関係が成立してたんですが、その構造そのものが消滅する、ということです。
年輩の方には思い出していただきたいんですが、20年前のコンビニで、ここまで新商品をゴリ押しで展開してたかってことです。18年くらい前だったかな、俺はすでにレジ前でカップ麺の新商品とかを箱積みの大量展開で売ってたんですが、その当時は「そういう売りかたは邪道だ」とよく言われていたものです。でもいまや、箱積みなんて売りかたとして珍しくもなんともないし、新商品で棚の上から下まで同じ商品で埋め尽くしてあるような光景って見たことがある人も少なくないと思うんです。数字もまたそれを裏付けていて、かつては週に15個も売れればヒット商品だなんていわれていた袋のスナックでも、いまや新商品なら100個くらい売る商品だって珍しくありません。もちろん、それ相応の目立つ展開をしたうえで、のことですが。
そんで、そういう新商品中心の売りかたをやめたコンビニはどこに行くのだろう、という話なんですが。これはもう、俺ごときにはわかりません。業界最大手の例のチェーン様なんかは、系列のスーパーと自社開発商品を共有することで価格競争に出ようとしていますし、業界二番目のチェーンなんかは、生鮮品を置いて「小回りの効くスーパー」というところに活路を見出そうとしている。
「コンビニエンスストア」という現行のパッケージは、過去30年なりの淘汰を経てきて、非常に完成度の高いシステムだといえる。
実際は、一消費者として身近にあったら超便利、っていうのは、オリジン弁当とコンビニとツタヤとドトールのハイブリッドみたいな店なんですけど、この業態だと、商圏人口を相当に必要とするって話でボツになってるんですよね。
いろんなチェーンがいろんなかたちを模索してますが、まだ現行のコンビニと比較して、決定的に「強い」形態は生み出せていない。唯一の例外がSHOP99(現在はローソンストア100に統合中)ですが、これとても、利益率が低いっていう致命傷があって、ある程度の客数を集めないと維持できない。
さて。コンビニの明日は。俺も現場で考えます。
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