20091228
■[雑文]小説まともに書けない人が、徹底的に添削された
むかしむかし、39歳なのでけっこう昔ですが、えむけーつーさんというわりと困った人格のわりと困った文章書く人がいました。どのへんが困ってるかというと、こどもとかを性的な意味で好きだったり、対人恐怖症だったり、もう自分人間のクズでいいや死ぬよりはとか思って自覚的に開き直ったりするのですごい困った人でした。
困った人は文章書くことで日々のストレス解消をしていたのですが、さらに困ったことには、その人は小説を書きたかったのです。しかし小説を書こうと思っても、すでに文章のスタイルが自分語りという名のストレス解消に特化してしまっていたもので、いまさら小説を書こうと思っても、どう書いていいかさっぱりわからないのでした。
そんなえむけーつーさんだったのですが、あるとき、ひょんなことから同人誌に小説とか書くことになりました。しかし、まともに書いたことない。さあどうする。
このエントリは、そういう人がひとさまの同人誌に小説を提出するまでの苦闘の記録であり、同時に「俺と似たようなタイプの」小説書きたいけど書けない人にとって、なんかプラスになることがあればなー、というエントリでもあります。あとふねくんの同人誌の宣伝(先にゆったら効果薄れるよ?)
さて、小説を書こうということになりました。ふねくんからは、なんかとんでもない長さ書いてもオッケー的な容量制限をいただきました。ならばここはひとつ、がんばってなんかおもしろいもの書かねばなるまい。そう思った俺は、なんか思いついたネタをてきとーに書き始めました。
もともと小説らしきのはいくつか書いてます。といっても、最初にちゃんと書けるようになったのは、らきすたのSSだったりして、つまりごく最近のことです。長くてもせいぜい30KB程度。そんな人が「なんとなく」で書き始めて完成するわけがない。
にもかかわらず、俺は100KB超のなんだかよくわからないものを書き上げました。非常にバランスの悪い、いらないところのいっぱいある、とにかくよくわかんないものです。
さすがにこれではまずい。そこで俺は、うちの奥さまに添削を頼むことにしました。
俺は、文章書きとしては、完全な「お筆先」タイプです。頭ほとんど使わない。指が勝手に文章叩く。出来がいいとすれば、それは無意識で考えていた時間が長くて、あらかじめ自分の内部でテーマらしきものがまとまっていたことに関して、自分のなかに留めておける臨界点を突破してしまい、メルトダウンするように文章があふれてきたときのみです。
まあ、20KB程度までなら、それでごまかせないこともありますまい。また、お筆先であるということは、ノリとか勢い重視というかそれしかないということでもあります。小手先のレトリック的なものは発達していても「きちんとした骨格を持つ文章」というものが書けない。というか、書いたことがない。
さらにいえば、文章のすべてが情緒的です。主観的でもある。これは長年にわたって「俺はこう思う」ということしか書いてこなかった人の弊です。客観性というものに乏しい。
対するに、うちの奥さまは、自分はまったく書かないながらも、小説を読んでいると「なによりも、構成がしっかりしているかどうかが気になる」という、自分が書き手でない人にしては珍しい、構成マニアとでもいうべき人種です。また、日本語の文法的にどうなのか、人称や視点のブレはないのか、ストーリー的にそのエピソードは必要なのか、そんなことばっか考えて、要するに編集者のように小説を読んできた変わった人です。だれもそんなこと頼んでないのに。
そういう人が、ド素人が書いた、情緒にまみれた小説の添削を開始しました。
なにが起こるか。
数ページ読んだうちの奥さまは、いきなり言いました。
「これ、エロゲの立ち絵ないよ。小説だから」
死 ん だ 。
うすうす、なんかおかしいなーとは思ってたんです。俺はどうやら小説を書いていないのではないか。架空のえろげというものが見えないディスプレーのなかで展開されていて、俺はその実況をやってるだけなのではないか。
まさにそうでした。
つまり、三人称であるにもかかわらず、実質的に主人公の表情の描写がない。
ほかにも、全般的に、登場人物たちの表情の描写が少ない。なのに文章はやたらに思い入れが強くて情緒的。
ちなみに、最初に書いた文章をふづきさんに読んでもらったときにも「三人称は難しい」と指摘されました。
よく小説の書きかた的な本とか見ると、一人称こそは難しい、という話が出てきます。確かに複雑なストーリーを作るのに一人称は向いてないんでしょう。なにせ主人公視点でしか描写できませんし、直接体験したこと以外は伝聞でしか情報入手できませんから。
しかし、断言しときます。
ほっとくと、ポエム書いてんだか小説書いてんだかわかんなくなるような傾向がある人、主観的で思い込みの強いようなタイプの人は、一人称で書いたほうがいいです。三人称は使いこなせません。強度に一人称的な文章書く人って、客観的な描写が苦手なことが多いです。しかし三人称ってのは、原則としては「モノローグ使わない」のです。もちろん地の文にモノローグを混ぜ込むことはできますが、へたにそれやると、地の文が、ひたすらなにかを解説しつづけるという、小説ではないものになります。
いやまー、小説は自由な形式なんでなんでもありなんですが、それでは「読んでもらえるもの」には極めてなりづらい。
てゆうわけで、ひとつめ。
「登場人物とかの関係とかよくわかんなくなったり、いろんなキャラクターの心情とか描写するのとか苦手で、自分語りみたいなポエムみたいな文章になっちゃって結局投げ出しちゃうような人は、開き直って一人称で書くべき。あとは勢いでごまかせ」
さらにうちの奥さまは続きを読みます。
そして、10枚くらい進んだところで絶叫します。
「あんたこれ、プロットとか作ったの!? いらないシーン多すぎんだろ!」
「プロットとかよくわかんない」
「は!? プロットなしでこの……なんだ、プリントアウトした結果そうとうな厚さになるもの書いたの!?」
「けっこう書いたよね☆」(やや誇らしげに)
「バカwwwwおまえ長さだけなら猿がてきとうにキーボード叩いたって書けんだよ!」
「猿に文章書けるわけないだろ!! 書けたとしても バ ナ ナ ち ょ う す き とかそれくらいに決まってんだろ!!」
「猿がみんなバナナ好きかなんて猿に聞いてみないとわかんないだろ!!」
「じゃあ猿に聞いてみればいい!」
「猿の知り合いなんていねえよ!!」
というようなひどい言い合いをしました。
さて、100KB超の長さでございます。長い。文庫にして4分の1とかそんなもんですか。その長さをプロット組まずに書いた。ついでにいうと、キャラクター設定すらまともに考えていません。
しかし俺は思うのですが、あんがいこういうことやっちゃう人っているんじゃないでしょうか。なんかこう「うおー」ってなるシーンだけがあって、それが書きたいがためになんかそれっぽい設定だけ考えていきなり書き始めちゃうような人って。もちろんそうした場合、書きたいシーンまで辿り着けずに挫折するケースがほとんどです。俺にもそういう無数の「書きかけ.txt」が存在するわけですが。
んで、今回思ったのです。
いままでプロットなんざ組んだことねえんだから、いきなり組めるはずない。
じゃあ、組むのやめた。
それで完成すんのか?
もちろん、書き上げたとしても、完成もへったくれもない状態でしょう。矛盾だらけだし、一瞬前と言ってること違ったりするし、キャラクターの行動に一貫性はないし。
しかし、それでも断言します。
まず、書き上げたほうがいい。
書いてる人がつじつまあわせとかに汲々となってて、書いてる途中に退屈な小説になんの意味があるかって? そんなもん知りますか。書きあげりゃ完成ですよ完成。世界にひとつしかないあなただけの作品の完成です。
つーわけでふたつめ。
「書きかけのファイルとか断片だけのファイルとかたくさんあるような人。なんとなく思いつきで書き始めちゃうようなタイプの人。どんなクソつまんなくても、単なる作業でも、無味乾燥で苦痛きわまりない作業でもいい。とにかく書き上げれ。どうせできあがったものはだれも読まねえ。せいぜいできあがったものを自分が読み返して自己嫌悪に陥るくらいがデメリットだ。だから、まず、意味わかんなくてもいいから無理やりオチつけてエンドマークつけれ」
というわけで、うちの奥さまの添削は進むわけですが、プリントアウトした紙には「このシーンいらねえ」「だれが言ってるんだかわかんねえ」「おまえ39歳でよくこんなこと書けるな」「おまえ頭弱い女の子好きだな」などという朱がいっぱい入ります。後半小説の内容と関係ねえだろ。
そして読み終わったうちの奥さま曰く。
「いいか。プロット作れ」
「プロットとかよくわかんないです☆」
「わかんねえじゃ始まらないんだよ。いますぐ紙と筆記用具持ってこい」
「はい」
持ってきました。このへん以前にもエントリで書いてますけど。
「いいか。こういう日常ラブコメみたいな作品では、登場人物の動きを緻密に制御しなきゃいけない。どこにだれがいるか管理されてるってことだ。あんたがやってるエロゲとかで、同じ時間帯に同じヒロインが二ヶ所にいたらどうなる?」
「ドッペルゲンガーですね」
「殺すぞ! 日常の話にそんなもん持ち出すな! いまからキャラクターたちのスケジュール表を作れ。朝、午前、午後、夕方、夜くらいでかまわない。そこにこの小説っぽいものの登場人物たちの行動を落とし込んでいくんだ。そうすれば矛盾がわかる。そして、エピソードの重要度が判断できるんだ。ほら、行動選択型のエロゲとかでよくあるだろ、こういうの」
「あー、なるほど」
「それを一本道にするんだ。そしてその表で、同時に、情報を開示する度合ってのを考える。ここらへんは、たぶんすごく技術的なことだ。たとえばヒロインが主人公を好きになっていくだけの話だって、そこには好きになるだけの理由がある。世界はエロゲじゃねえ。エピソードが必要なんだ」
「必要ないだろ。ボーイミーツガール!」
「……疲れる。てゆうかあんた恋愛もの向いてない……。いいから。とにかくそうするの。表作るんだよ」
こうして俺は、表を作り始めました。表を作っている最中の俺の悲鳴などをここに再現したいと思います。
「うおぅ。主人公ばんめし食ってねえ!」
「一日に2回風呂入ってる! てゆうか風呂入ってる必然性ねえ!」
「あれ……この時間帯、ヒロインの女の子、なにやってたんだろう……」
「よく考えたらこの登場人物、まるごといらない……?」
ひどいもんです。ぼろぼろです。
しかし、表にしてみてわかったことがあります。まず、シーンには必ず意味が必要だということ。時系列で登場人物たちの行動を割り振っていくと、これはたぶん、だれでも気づくと思います。というのは、時系列で考えると「この行動があって、次はこうなる。こうなったから、次はこういう行動になる」という線が、いやでも見えてくるんです。その線から外れるものは、原則不要なエピソードということになります。
「不要なエピソードいっぱいあるよ……」
「だからそう言ってんだろ。あんたが書きたいかどうかじゃないんだよ。ストーリーが必要としてるかどうかだ」
うちの奥さまはFF12のレアアイテムかなんかをひたすら追い求めながら、片手間に言いました。
なるほど、確かに表にすると、ストーリーによって要請されているキャラクターの設定、人柄、そういうものもよくわかる。
というわけで、みっつめ。
「なんでもえーから書き倒した作品を、人が読めるものにしたい。そう思う人は、キャラクターの行動表なりプロットなりを作ること。今回はたまたま日常を舞台にしたラブコメもどきだったので行動表になったが、同じことを、時系列でなく表にしてやれば、それがプロット近似のものになる」
本来はそうしたものを構想段階からきっちり練ってやって、お話の設計図を作ってから本編にかかるのが筋なのでしょう。しかし俺はアホなので、それができませんでした。でも、無理やりお話は終えてあるところから「こういう雰囲気にしたい」とか「このシーンはこうしたかった」っていうのが、なにもない状態よりはよく見えるようになっていたのです。そこにテーマらしきもの。つまり「全体を通じてこういうことをいちばん書きたい」というのが見えればなおベストです。
そんで、これは別の人から聞いた話ですけど、とりあえずだーっとテキストで書き倒してしまって、それからプロットを抽出、書き直し、というやりかたを使う人はあんがいいるみたいです。
さて、こうして俺は、元になった文章をいったん全部捨てて、位置からすべてを書き直すことになりました。今回は、こうしてできあがった文章について、三人称だったってこともあって、視点のおかしさとかをさらに追求されることになるのですけど、こういうのは一人称だったら防げる問題です。
あと、こうしてできあがったものをさらに直される過程で何度も言われたのが「説明は最低限で抑えろ」っていうこと。俺はほっとくと建物とか地理関連とかやたらしつこく描写するくせがあり、また、この文章見てもそうなんですが、やたらに副詞使いたがるくせがある。
うちの奥さまいわく「文学とかは知らないけど、ふつうに小説っていったら、登場人物たちがどう行動して、どんな結末に至ったかっていうことを描写するためのものだろ。だったら、文章は最低限の役割を果たしてればいいんだ。それ以上のことはノイズだろ」とのことです。
まあ、このあとには「持ち味ってのは、基本がきっちりできてないと意味がない。たとえばあんたの文章は、確かに描写とかにおいてきれいさとか、一定の雰囲気を感じさせる部分はある。だけどそれって、骨格がきっちりしてないと、生きてこないんだよ。骨格がないと、思い込みの強い人ってだけで終わっちゃう」と続くわけです。
というわけで、このクソ長いエントリをまとめます。俺と似たようなタイプの「小説書きたいけど完成しないで投げちゃう人に送る言葉」ということで。
1:一人称で書いとけ
2:いくらつまんなくても苦痛でもめちゃくちゃでもいいから書き上げろ
3:書きあがったなかからプロットを抽出
4:書き直せ
5:おもしろいかどうかなんて本人にはわかんないから。あとはだれかに読んでもらえ
こんなとこです。5はいま思いついたので付け加えました。こうした計画性のなさが、あとあと自分を苦しめます。
そんで、最後にいっておきたいのですけれども、実は6ばんめに「前回の反省を生かして、次の作品を書け」というのがあると思います。そして、それをする気になるかどうかが、書き続けられる人なのか、そうでない人なのかの、いちばんの分かれ目になるのだとも。
そして以下広告。
こうやって悪戦苦闘してしあげた小説が、ふねくんのとこの同人誌に載ります。俺以外の人もいっぱい参加してるみたいですが、個人的にはふねくんの文章をおすすめしときます。ふねくんっていうと、このエントリなんかが最高なんですが、これ読んで「あー」とか思う人は読んでみて損ねーかなーと。いい文章書きますよ。みずみずしくて。
冬コミ2日目U01aっていうやたらいい場所をゲットできたらしい。んで、告知のサイトはこちら。
まあ、実際のところ、俺、自分の書いたものにはあんまり自信はないです。書いてるときこそ「俺ちょうたのしい。ずっとこのまま書いていたい」とか思ったんだけど、それもまあ、できあがると、どうしてもね。それでも俺にとっては、はじめて人に読んでもらうために書いた作品です。読んでいただければ幸いです。でも感想とかもらったら爆死する。いい感想でも悪い感想でも爆死する。
ああ、この話のオチ。
俺的すごく素敵なハッピーエンド、初恋どうしが思い通じ合って幸せになってよかったね的なエンディングのあとに、うちの奥さまが赤ペンでしっかり書いてありました。
「リア充は死ねばいいよ」
どうしてそういうことするの……。
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