Neil and Rush and Me

Neil PeartのドラムとRushの音楽をこよなく愛する大学教員の日記(雑記)帳です。

『実録・連合赤軍』

DVDで『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』(若松孝二監督、2007年)を観る。

実録・連合赤軍 あさま山荘への道程 [DVD]

実録・連合赤軍 あさま山荘への道程 [DVD]

190分にも及ぶ超大作。何もかも、すべてがすごい。ひたすら圧倒された。少なくとも、自分のゼミ生には全員に見せたい気がする。感じ方はそれぞれ違うだろうが、おそらく自分が「今」「ここで」学んでいることの意味を問い直すきっかけになるはずだ。そうでなくても、少なくとも、こういう時代があった、こういう事件が起こったことくらいは、日本の大学生として知っておいてもらいたい。

僕の両親は1967年に結婚し、翌68年に僕が生まれた。72年秋に父は脱サラをして、串カツ屋を始めた。僕自分の記憶が明確なのは、ちょうどその頃からである。大工であった母方の祖父が、自分の仕事の合間を縫って、開店前のお店の内装をやってくれたことを、はっきりと記憶している。その頃の日本に何が起きていたのかを、この映画は圧倒的な迫力で伝えてくれる。

僕が大学院で経済思想を専攻することを知って、父は猛烈に反対した。「思想!? 思想はあかん。危ない。お前の性格やったら、学生運動に走ってしまう」と。僕が大学(学部)に入学した頃(バブル経済絶頂期)は、すでに学生運動は半ばパロディの対象でもあったから(鴻上尚史高橋いさをの戯曲はそういうふうにしか読めなかった)、経済思想研究と学生運動を直結させる父の頭の堅さを疎ましく感じたが、多感な二十代の前半をこのような騒然とした時代状況(しかも隣国中国は文化大革命の真っただ中)で過ごした父がそのように考えたのも無理はないと、今になって共感できる。

「革命的正義」「教育的措置」の名のもとに遂行された壮絶な集団リンチ(総括)。それによって内部崩壊していく連合赤軍。もし自分があのメンバーの中の一人であったなら、自分はどのように行動しただろうか? 想像することそれ自体が恐怖である。自分の弱さ、卑小さを眼前に突きつけられるかのようで。

遠山美枝子役の坂井真紀、永田洋子役の並木愛枝の演技が圧巻である。サブタイトルにもある「あさま山荘事件への道程」こそがこの作品の主題であり、あさま山荘事件それ自体(最後の1時間)の映像はやや冗漫に感じられたが、それでもこの作品の価値は減じない。最初の2時間だけでも十分に満点をあげたい。こんなに心が震えた作品はここしばらく見ていない。音楽(ジム・オルーク)、ナレーション(原田芳雄)も僕の好み。特典のメイキング映像(65分、最後の最後にとんでもない方々が登場する)も見逃せない。

中学・高校時代に世界史の担任だったH田先生、現代文・古文の担任だったF田先生は、しばしば授業中の雑談として学生運動の話をしてくださった。毎回、興味深く聞いていた。「総括」の特別な意味を教えてくれたのはF田先生である。もちろん、実際の経験のない僕なので、本当の意味で「わかる」なんてことはありえないのだが、わからないなりに、「大学には高校と違う特別な何か、高邁で崇高な何かがある」ということを感じた。それが大学に進学することへの憧れを高めてくれた。僕の場合、親類縁者で誰も大学に進学しなかったから、大学を目指すにはそれなりの「覚悟」が必要だったのだ。

大学の大衆化が進み、もはや大学は特別な場所でなくなっている。この事実とかつて自分が胸に抱いた憧れとをどのように折り合わせるのか? この映画を見て、まだ割り切れていない自分を発見した。

何ともまとまりのない文章になってしまったが、あまりにも衝撃が大きくて、まだ半ば放心状態なのである。

ダンベル3セット、腹筋3セット。BGMはこれ。

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