ナマステじじの旅話(34話)


チェンマイ滞在記(9) 
変り種乗り物のお話(3)
サムロウ
タイ語で「サム」は3、「ロウ」は車輪のことだそうである。
日本で明治から昭和の初めのころまで一般大衆に愛された人力車と、自転車をくっ付けたような乗り物である。人力車を自転車で引っ張る、と形容した方が早いか。
つまり、エンジンつき3輪車、ツクツクは、サムロウの機械化したものでご先祖様はサムロウなのである。
市内に、約500台ぐらいはあるそうだ。
用途は専ら観光用らしく、車で埋まる市内をゆっくりゆっくり大きな西欧人を乗せて車の間を縫って走る。たまに、10台とか15台とかが、それぞれ目印の小さな旗を立てて連なって走っているの見かける。観光の白人団体さんの名所巡りである。町を歩いていて、これらに遭遇すると、ハテ、何のデモか? と目を奪われたものだ。
「戦場にかける橋」と言う映画で有名なカンチャナブリという町に観光に行ったとき、たまたま掴まって客引きに付いてゆくと、彼は、これのドライバーであった。半日付き合ったが、目の前を、お尻を上げて細く痩せてサンダル履きの真っ黒な足が、必死にペダルを踏む。じじばば合わせて120キロほどの荷物だ。何だか可愛そうな、申し訳無いような、変な気分にさせられる。
反面、ゆっくりゆっくり走るから田舎のバラックの町並みだとか、椰子の並木などを具に見られるし、時には道端の子供と手を振りあったりなど、のんびりムードに浸れる利点がある。観光の田舎町だから車は少なかった。

バイクタクシー
田舎に行くと、バイクタクシーなるものがある。文字通りバイクがお客さんを運ぶ。日本では客を乗せて走るバイクは見たことがない。案外、日本でも渋滞の町ではバイクタクシーも急ぐお方には便利かもしれないが日本じゃ許可にならないだろう。
タイの田舎の町では、これの溜まりが場があって、そこに客待ちで待機しているのに頼むのである。
北部に、パイという町があり、バスを降りて7キロ先の温泉に行こうとしたがこの乗り物しか交通手段が無い。仕方がない、ためしに乗ってみるか、と一台しかいないドライバーに交渉してみたら、ちょっと待て、というしぐさをしてどこかに消え、しばらくして仲間を連れて戻ってきた。
われわれの荷物のリュックは、ハンドルとドライバーのお腹の間に置いてくれて、客は振り落とされないようにドライバーの腰のバンドにしっかりつかまる。タイでもヘルメット着用の定めはあるのにここではドライバーも、客もヘルメット無し。田舎で車の往来は少ないし、周囲の景色など眺めながら風に吹かれて走るのも結構乙なものであった。このときは、帰りの予約もしておいた。翌朝、ちゃんと迎えに来ていた。

さて、乗り物関係については、今号で終わりにして次号からは、生き物や、人間などについてのちょっと変った紹介をしたい。