自民党の長老支配

先日谷垣さんのオウンゴールについて書いたが、オウンゴールの失点は自民党総裁改選で早くも現実になった。民主党おろしのためにあれほど「解散」を叫んで来た谷垣総裁がいざ自民党総裁改選の段階で早くも片腕の石原幹事長に候補者の座を奪われた。石原さんは悪びれることもなく立候補したが、これは長老という影の権力者の指しがねである。とっくに第一線から身を退いたと思われる長老たちは影でちゃんと駒を動かしていたのである。別に谷垣さんの肩を担ぐ気はないし、彼が総理の器かどうかは別として、かって経験したことのない野党時代の自民党総裁として民主党政権の打倒に打ち込んできた谷垣さんにとっては心外無念なことだったろう。でもこれが何十年も政権を支配し続けてきた自民党の本質でありそれは今後も変わることはないのだろう。

ここで忘れてはならぬことがある。消費増税の引上げ法案は民自公三党の合意によって衆議院で成立したものであるにもかかわらず、それを不可とする理由で提出された首相問責決議案は参議院自民党議員全員の賛成で可決されたことである。いま総裁選挙で元首相を含む5人の候補者が立っているがその誰もがこの矛盾については口を拭って語らない。5人はすべて世襲議員である。谷垣さんに詰め腹を切らせて矛盾解消、一件落着ということだろうか。その他の政策についても5人の候補者の言い分は似通っているが、「凛とした力強い日本」「日本再生」「集団的自衛権の行使」など保守への回帰が匂う。長老に握られている政党には新しい発想は出てこないのだろう。現在の最重要課題であり国民の大半が望む30年代原発ゼロの民主党案については全員が反対だった。自民党には原発を推進してきた過去があり、官僚や電力業界や経済界と深く関わってきた長老たちがそれを反省してきっぱり決別する覚悟は出来ないのだろう。

福島の大事故がありながらそれと正対出来ぬ保守政治、政権に返り咲いたらうやむやに原発稼働を続けるのだろうか?恐ろしいことだ。いま憲法に抵触する1票の格差を生む国会議員の定数削減が焦眉の急である。国会議員の定年制でも導入したらどうだろう。