前進か回帰か・・・第三極の行方・・・

民主党にも愛想をつかした。と言って今更旧態依然たる安倍自民党でもあるまい。解散総選挙では棄権する外ないと思っていたら何と80歳になる石原慎太郎が突然都知事を辞め第三極の中核となる新党を結成すると言うので波紋を広げている。先ずは立ち上がれ日本の老人党と組んでその名前は「太陽の季節」にあやかったのか「太陽の党」とするそうだ。大幅に意見の異なる日本維新の会にもすり寄っているようだ。

石原慎太郎都知事に連続4回も当選しているから大方の都民に人気があるということだろう。そのカリスマ性とともに、大衆小説家であったことや伝説的俳優裕次郎の兄というのも人気の理由でもあろう。彼がどんな善政を施したかよく分からないが都民が4期にわたって支持したのだから善いこともあったのだろう。しかし失敗も多い。オリンピックの招致失敗、新銀行東京の破綻、いずれも莫大な都民の血税の浪費を招いた。

最右翼の独特の傲慢さには辟易することも多い。尖閣諸島問題ではアメリカまで行って火付け役を演じて問題を起こした。東京都が尖閣諸島を購入するという発想自体が甚だ乱暴な話である。深刻な中国との対立を引き起こしながら都民からはさしたる苦情もないところを見るとさすがに彼は都民から支持を得ている理由が分かるような気がする。当然これは国対国の不信問題に発展する。それを見越しての仕掛けである。これが都知事の職務の範疇に入ることだろうか? 彼は中国をいまだにシナと呼んで憚らない。中国の世論調査(日本の国有化宣言以前の調査)によると近く東シナ海で戦争状態になるという世論は50%を超えるという(日本世論は27%)。中国との有効な話し合いの場を持つことは極めて困難になった。満州事変から80年、いま日本と中国は攻守ところを変えて戦争の危機に突入しようとしている。

東日本大震災関連の発言も酷い、「日本人のアイデンティティは我欲だ。津波で流してしまえ」。原発問題では「原発は絶対に必要、脱原発を言うのはセンチメントだ」。でもこんな暴走老人慎太郎を都民の多くが好きだという。理解し難い話だ。

さて彼の目指す「第三極」はどんなものか? たしかに自民党民主党も期待出来ない今第三極を考えるのは当然かもしれない。大阪の維新の会の成功にも心を惹かれてのことだろう。しかし政党は理念と政策のもとに成り立つものであり、原発にさえ根本的に意見の違う党を束ねて、大同団結とは時代錯誤も甚だしい。彼は乱立した小政党を束ねるのに「小異を捨てて大道につく」という古風な譬えを引用しているが、第三極とはそんな明治維新、舟中八策に回帰するような単純なものだろうか?意見の分かれる原発問題だけをとっても決して小さな問題ではない。それどころか将来の世界の運命を決めかねない大問題である。

総理大臣になり損ねた老人が八十にして立つ!その気概はよしとしよう。でも過去の時代をなぞることは有害無益である。ましてや存命中に自分の息子を立てようとする世襲を考えているようだったら何をか言わんやである。


(追記)
政局は動いている。この記事を書いた直後、国会の党首討論会で野田首相憲法違反の議員定数是正への自民党の協力を条件に二日後の16日の衆院解散を宣言した。解散を迫っていたはずの安倍さんは意表をつかれて言葉を失った。野田さんはやはり嘘のない誠実な決断の出来る人だった。総選挙に向けて時間の無くなった第三極はどうなるのだろうか? よい機会だ。この際、慌てて離党だ、鞍替えだとか右往左往する議員たちの顔をよく見ておこう。