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「映画館」

2015-12-08

12月9日(水)「無能の人」

無能の人」('90・松竹富士)監督・主演:竹中直人 原作:つげ義春 脚本:丸内敏治 撮影:佐々木原保志 音楽:GONTITI 出演:風吹ジュン/三東康太郎/マルセ・太郎/山口美也子/神戸浩/神代辰巳/いとうせいこう/大杉漣
★異色の漫画家つげ義春の同名漫画を個性派俳優の竹中直人が初演出で映像化した作品。多摩川の河原で石を売る男とその家族を中心に、現代社会から落ちこぼれた人々をブラックなユーモアを交えて温かな視点で描く。竹中自身が惚れ込んだという独特のつげワールドを初演出ながら見事に再現してみせた。多摩川で拾った石を売る助川助三。かつては漫画家だった彼も、いつしか時代に取り残され、数々の商売にも失敗、思いついたのは元手のかからない石を売るというものだったが…。<allcinema>

2015-12-03

12月4日(金)「ビバリ−ヒルズ・バム」

「ビバリ−ヒルズ・バム」('85・米)製作・監督・脚本:ポ−ル・マザ−スキ− 原作:ルネ・フォ-ショワ 脚本:レオンカペタノス 撮影:ドナルド・アクアルパイス 音楽:アンディ・サマ-ズ 出演:ニック・ノルティ/リチャ-ド・ドレイファス/ベッド・ミドラ−
ビバリーヒルズの金持ち一家に入り込んだ浮浪者が、持ち前の教養と性格で次第に皆を感化し始める。ジャン・ルノワールの名作「素晴らしき放浪者」(32)を、舞台をハリウッドに移してリメイク。P・マザースキーが上流階級の馬鹿馬鹿しさを笑い飛ばしている。浮浪者に扮するN・ノルティの豪快なキャラクターと、彼に振り回されるR・ドレイファスの対比が面白い。<allcinema>

◎ボロボロ・でぶでぶで、もうこれ以上堕ちようがないと開き直った浮浪者が、相棒のワン公にも遂に愛想を尽かされてペットロスに陥るという冒頭の設定が面白い。絶望した浮浪者が成金のドレイファスの邸宅に紛れ込んで、プ−ルで自殺を図ることから物語が動き始める。迷惑を受けた側のドレイファスだが、虚栄心に裏打ちされた博愛精神から浮浪者を世話することになるのだが、最初は浮浪者を毛嫌いしていた家族たちが次々に彼に影響されるに及んで、主役の座を奪われる恐れに本来の素朴な差別感を露わにし始める。そのあたりのドレイファスの演技が見もので、浮浪者ノルティのふてぶてしい演技との対比が素直に笑わせてくれる。呑気呆亭

12月3日(木)「汚れた血」

汚れた血」('86・仏)監督・脚本:レオス・カラックス 撮影:ジャン・イヴ・エスコフィエ 音楽:ベンジャミン・ブリテン/セルゲイ・プロコフィエフ/シャルル・アズナブ-ル/デヴィッド・ボウイ/セルジュ・レジアニ 出演:ジュリエット・ビノシュ/ドニ・ラバン/ミシェル・ピコリ/セルジュ・レジアニ
ハレー彗星が再び近づく近未来を舞台に、才人カラックスが独創的な映像世界を展開するSF的なフィルム・ノワールメロドラマの要素が溶け込んだ作品で、熱狂的に世界の若い観客に迎えられた。愛なきセックスによって伝染する“STBO”という奇病が蔓延するパリで、ジャンという男がメトロで死ぬ。友人マルクは彼が金貸しのアメリカ女に殺されたのではと疑いを持つが、彼女から汚れた金を借りていたのはマルクも同じだった。その返済のため、ある製薬会社が開発した“STBO”の特効薬を盗み出そうと誘われたジャンの息子アレックスは、マルクがつれ添うアンナに密かに心魅かれしぶしぶ承諾。計画は実行されるが、そこにアメリカ女の目は光っていた…。マルクにM・ピコリ、アレックスにD・ラヴァン、アンナにJ・ビノシュ。エスコフィエの、特に夜間撮影が素晴らしい。ビノシェが風のように走り、まさに風になってしまうラスト・ショットが鮮烈だった。
<allcinema>

◎前作の「ボ−イ・ミ−ツ・ガ−ル」を再見してラストまで見終えることが出来なかったので、これはどうかなと変な期待を持ちながら見始めたのだが、これは中々面白かった。筋立てはあまり練られたモノとは思えなかったが、随所に挿入される斬新な映像が映画を見るということの面白さを与えてくれたし、それよりも何よりもジュリエット・ビノシュの天与の美貌がこの作品の魅力のすべてだと言っていい。おかげでドニ・ラバンも光っていた。呑気呆亭

12月2日(水)「薔薇の名前」

薔薇の名前」('86・仏)監督:ジャン・ジャック・アノ− 原作:ウンベルト・エ−コ 脚本:ジェラ−ル・ブラッシュ/ハワ−ド・フランクリン/アンドリュ−・バ−キン/アラン・ゴダ−ル 撮影:トニ−ノ・デリ・コリ 音楽:ジェ−ムズ・ホ−ナ− 出演:ショ−ン・コネリ−/F・マ−リ−・エイブラハム/クリスチャン・スレイタ−
★1327年、ヨーロッパ宗教裁判の嵐が吹きあれている頃、北イタリアベネディクト修道院に、バスカヴィルのウィリアム(ショーン・コネリー)と見習修道士のアドソ(クリスチャン・スレーター)が重要な会議に出席するために向かっていた。キリストの財産をめぐる教皇派とフランチェスコ修道会とその争いをまとめるための会議であった。荘厳な修道院に着くとすぐ、ウィリアムは、若い修道士が不審な死を遂げたことを知る。修道院長(ミシェル・ロンダール)によれば、死んだ僧は、文書館でさし絵師として働いていたということだった。殺人のにおいがするこの事件の解明を、ウィリアムは頼まれることになったが・・・。(goo映画)

◎驚くのはこれだけのセットとロケ地を選んだスタッフの執念と力量である。この作品の魅力はいかにも西欧中世の雰囲気を再現したと観る者に納得させる映像にあるだろう。冒頭に近く厨房で働く僧たちが、解体した豚から絞った血液を大事に貯めているのは腸詰めを造るためなのだろうか。僧院に貢ぎ物を納めに来る貧者たちの描写もリアル感があって、こんな描写の一々の積み重ねが圧倒的な重厚感をこの作品に与えている。ただ、残念ながらワタクシの観たバ−ジョンは英語版であったのと、主役が米国の有名俳優であることとかのために最初から最後まで違和感があった。興行的には有名俳優を使うことのメリットはあるのだろうが、これだけの準備をした努力が主役の顔一つで台無しになってしまったように思う。またアドソを演じたクリスチャン・スレーターが妙に色っぽくて、その顔のアップを演出が多用するので恐らく僧院内に蔓延していたであろう同性愛の暗示が鼻に付いて、せっかく美術スタッフが盛り上げた雰囲気が薄められてしまったのも惜しまれる。出来ればイタリア語バ−ジョン(DVDには有るのか?)で見直してみたいものだ。呑気呆亭

2015-11-24

11月28日(土)「12月のスケジュ−ル」

「12月のスケジュ−ル」
2日(水)薔薇の名前 '86・仏 ジャン・ジャック・アノ−
3日(木)汚れた血 '86・仏 レオス・カラックス
4日(金)ビバリ−・ヒルズ・バム '86・米 ポ−ル・マザ−スキ−
5日(土)臨時休業日
9日(水)無能の人 '90・松竹=富士 竹中直人
10日(木)映画監督川島雄三/サヨナラだけが人生 藤本義一
11日(金)蝉しぐれ '03・NHK 内野聖陽
12日(土)七人の侍はこう作られた 野上照代
16日(水)眺めのいい部屋 '86・英 ジェ−ムズ・アイボリ−
17日(木)臨時休業日
18日(金)暗闇のボクサ− '86・チェコ ヤロスラフ・ソウクップ
19日(土)ラウンド・ミッドナイト '86・米 ベルトラン・タベルニエ
23日(水)マックス・モン・アム−ル '86・仏 大島渚
24日(木)サクリファイス '86・仏 アンドレイ・タルコフスキ−
25日(金)チャイニ-ズ・ゴ-スト・スト-リ- '87・香港 チン・シウトン
26日(土)グッド・モ-ニング・バビロン '87・伊 パオロ・タヴィア-ニ
30日(水)歳末休業日
31日(木)歳末休業日
★邦画の上映は第二週のみ。シャ−プDLPプロジェクタ−⇒80インチスクリ−ン映写
★金曜日は西部劇チャンバラDAY土曜日はリクエストDAY

2015-11-23

11月28日(土)「ビッグ・トラブル」

「ビッグ・トラブル」('86・米)製作・監督:ジョン・カサヴェテス 脚本:ウオ−レン・ボ−グル 撮影:ビル・バトラ− 音楽:ビル・コンティ 出演:ピ−タ−・フォ−ク/アラン・ア−キン/ビバリ−・ダンジェロ/ヴァレリ−・カ−ティン/トロイ・ドナヒュ−/ロバ−ト・スタック
★主人公のレオナ−ドは安定した生活を望んで保険会社のセ−ルスマンを務めているが、現実はなかなかうまくいかない。そんな彼にスティ−ブ夫妻が保険金詐欺の計画を持ちかけてきた。一攫千金を夢みて話に乗った彼に、次々と災厄が起きる。(ぴあ・CINEMA CLUB)

◎ワイルダ−の「深夜の告白」('44)をパロったというかおちょくった展開がバカバカしくて、“えっ、カサヴェテスともあろうものがこんな野暮ったいモノを?・・・”と思いながら見ていたのだが、フォ−クとア−キンの怪演比べがエスカレ−トして行くにつれて、まるで落語の「らくだ」のような奇妙な倒錯が徐々に生じて、遂には過激派の登場するどんでん返しになだれ込んで、モ−ツアルト伴奏に彩られたハチャメチャなラストに至る。やっぱりカサヴェテスという人はただ者じゃあないなと納得したことであった。呑気呆亭

11月27日(金)「ダブル・ボ−ダ−」

「ダブルボ−ダ−」('87・米)監督:ウオルタ-・ヒル 原案ジョン・ミリアス/フレッド・レクサ− 脚本:デリック・ウオッシュバ−ン 撮影:マシュ−・レオネッティ 音楽:ジェリ−・ゴ−ルドスミス 出演:ニック・ノルティ/パワ−ズ・ブ−ス/リップ・ト−ン/マイケル・アイアンサイド/マリア・コンチ−タ・アロンゾ/クランシ−ブラウン
★国境警備にあたるテキサス・レンジャ−の男と、メキシコからの麻薬輸入組織。それに組織壊滅のために作られた特殊工作部隊が加わって、ハ−ドなアクションが展開される一編。アクション監督ヒルの持ち味と原案のミリアスの要素が、良くも悪しくも同居している。(ぴあ・CINEMA CLUB)

ニック・ノルティが引き締まった体でやたら格好良くて、前年の「ビバリ−・ヒルズ・バム」のメタボなホ−ムレスのおっさん体型からよくもここまで絞ったものだと感心する。そのノルティがメキシコとの国境に近い田舎町の保安官役として、メキシコの麻薬組織と特殊工作部隊を向こうに回してク−ルな活躍をする。プロ中のプロである特殊工作部隊の面々は当初ノルティを田舎町の保安官として嘗めてかかるが、次第にそのガッツを認め始めて、部隊の指揮官(アイアンサイド)の裏切りへの怒りと保安官への共感が綯い交ぜとなった、「ワイルドバンチ」のクライマックスにも似た死への舞踏になだれ込んで行く。既に軍歴では死者とされている彼らを甦らせ最後に生の輝きを取り戻させたのは、ノルティの背筋を伸ばした頑固な生き方への共感であった。呑気呆亭

11月26日(木)「スイ−ト・スイ−ト・ビレッジ」

「スイ−ト・スイ−ト・ビレッジ」('85・チェコスロバキア)監督:イジ−・メンツェル 脚本:ズデニェク・スベラ−ク 撮影:ヤロミ−ル・ショフル 音楽:イリ・ブロゼック 出演:ヤ−ノシュ・バ−ン/アリアン・ラブダ/ルドルフ・フルシンスキ−/ペトル・チェペック/リブシュ・シャフランコバ−
チェコの小さな村を舞台に、ちょっと頭の弱い青年と彼の相棒で父親代わりの男の二人を通して、村の楽しくもあわただしい日々を心暖まるタッチで描いた優しい映画。のどかな田舎の風景と生き生きとした登場人物達が何よりも魅力的。話らしい話が無い訳でもなく、繰り広げられる数々のエピソードも愉快。<allcinema>

◎最初は見ていると頭が弱く無駄にのっぽなオチェクの間抜けさに腹が立ってくる。オチェクとは対照的な短躯で太った体格の相棒パヴェクがイライラするのも無理はない。その二人の仲を中和し結び付ける媒体として、詩人夢想家で運転音痴のドクタ−が物語の狂言回しをする。不倫有り、陰謀有り、事故有り、喧嘩有り、祭りの騒ぎ有り。笑わせるのが、トラクタ−に男が轢かれたと聞いて駆け付けたドクタ−が発見したのが、畑に残った人型だけで犠牲者の跡形もなく、脇でピョンピョン跳ねる不死身の男を発見するというギャグで、このギャグは後にドクタ−がブレ−キを掛け忘れた自分の車に轢かれるエピソ−ドに受け継がれたりして、全編にさりげなく伏線を置きながら、思わぬ所でギャグを入れて行くという、実に巧みに造られた物語りである。ラストは仲直りしたオチェクとパヴェクの凸凹コンビのぴょんぴょんと跳ねる息の合った歩行のギャグでありました。呑気呆亭

11月25日(水)「愛と哀しみの果て」

愛と哀しみの果て」('85・米)製作・監督:シドニ−・ポラック 原作:アイザック・ディネ−セン 脚本:カ−ト・リュ−ドック 撮影:デビッド・ワトキン 音楽:ジョン・バリ− 出演:ロバ−ト・レッドフォ−ド/メリル・ストリープ/クラウス・マリア・ブランダウワ−/マイケル・キッチン/マリック・ボ−ウエンズ
★20世紀初頭のアフリカを舞台に、愛と冒険に生きたひとりの女の半生を描いた一大ロマンススウェーデン貴族と結婚し、ケニアに渡って来たデンマーク人の令嬢カレン。だがそこには幸せな結婚生活は無く、農場経営も思うように進まない。そんな彼女の前にサファリのガイドを務めている冒険家が現れた…。波乱万丈のストーリー、アフリカの雄大な景観、ストリープとブランダウアーの丁々発止の演技合戦と見どころは多いが、あまりにも上映時間が長すぎる。アカデミー作品・監督・脚本・撮影・作曲・美術・音響と主だった部門を独占した作品ではあるものの、時として冗漫な語り口は万人向けとは言い難い。<allcinema>

◎確かに長かったが決して退屈はしなかった。観終えてこれほどに爽やかな気持ちになる映画というものも珍しい。それが何に由来するかと考えて思い当たったのは、登場する人物たちが誰も類型として描かれていないということではないかということだった。それは下世話に言えば三角関係を形成するカレン(ストリープ)、ブロア(ブランダウワ−)、デニス(レッドフォ−ド)の三人だけではなく、彼らの友人のコ−ル(キッチン)にしても、カレンの執事役のアフリカンにしても、部落の長老、若者、デニスの相棒で台詞一つないのに印象的な存在のマサイの戦士、そして物語の始めでは女性であることから入室を拒否しながら、独り敢闘・破産してアフリカを去ろうとするカレンの潔さに敬意を表して、“一杯飲りませんか?”と誘う社交クラブの面々のフェアなスマ−トさ、そしてデニスの墓に詣でる雌雄のライオンに至るまで、心に深々と染み入るように描かれている。素晴らしい映像でアフリカの景色を捉えて見せてくれたキャメラ、モ−ツアルトを効果的に使った音楽、そしてモチロン、カ−ト・リュ−ドックの脚本とシドニ−・ポラックの演出。何度観ても初めて見るような思いにさせてくれる作品である。呑気呆亭

11月21日(土)「シ−ズ・ガッタ・ハヴ・イット」

「シ−ズ・ガッタ・ハヴ・イット」('85・米)監督・脚本:スパイク・リ− 撮影:ア−ネスト・ディッカ−ソン 美術:ロン・ペイリ− 音楽:ビル・リ− 出演:トレイシー・カミラ・ジョ−ンズ/トニ−・レッドモンド・ヒックス/スパイク・リ−/ジョン・カナダ・テレル/ジョイ・リ−
ニューヨークインディーズ映画の雄であり、ブラック・ムービーの旗手である天才的映画監督スパイク・リーによる長編第2作。やさしくて実直な好青年ジェイミー、ナルシストルックス抜群のグリアー、失業中だが持ち前の明るさを失わないマーズの3人の恋人と付き合っている、黒人女性ノーラ。彼女は束縛を嫌い、自由で気ままな生活を楽しんでいた。そんなある日、こんな恋愛ゲームに耐えきれなくなったジェイミーは、彼女に決断を迫って来るが…。長編第1作「ジョーズバーバー・ショップ」で評論家から絶賛を博したスパイク・リーが、弱冠29歳の時に約3千万の低予算ながらも卓越したアイディアで撮り上げた作品。画面は白黒、キャストは全て黒人で描かれたこの初期の作品でも、ハイテンポなカッティングやイキなセリフ、センスのいい音楽など、この後の彼の才能が昇華してゆく片鱗が見て取れる。彼の才気と独特のユーモアが溢れる、初期の傑作の1本。
<allcinema>

◎公開当時はその設定の斬新さが受けたのだろうが、今となって見るとすべってが陳腐化してしまっている。この設定のグル−プがボクラの60年代に実際に成り立っていたことを知っているが、これが成り立つためには中心に生きる女王様が魔術的な魅力を持っていなければならないのだが、このモナにはまったくそんな魅力を感じなかった。そのモナを巡って神経症で色情狂の男たちがビタ銭沙汰を繰り広げる。モナは何をガッタしたのだろうか。正直疲れる映画でありました。呑気呆亭

11月20日(金)「愉快なゆかいな殺し屋稼業」

「愉快なゆかいな殺し屋稼業」('85・米)監督:アンソニ−・ハ−ベイ 製作・脚本:マ−ティン・セヴィバック 音楽:ジョン・アデイソン 出演:キャサリ−ン・ヘップバ−ン/ニック・ノルティ/エリザベスウイルソン/チップ・ジェン/キット・ル・フィ−ヴァ−
★独り暮らしのマダム・クイグリ−と殺し屋シ−モアとの出会いは殺人事件。コンビを組んで始めた仕事は死にたくて死ねずにいる老人相手の殺し屋稼業!? 戦慄どころか依頼殺到の反響ぶり、けれども二人の間には・・・。
説明抜きの大女優キャサリ−ン・ヘップバ−ンと個性派アクションスタ−、ニック・ノルティの絶妙な演技が冴える都会派アクション・コメディ。手ごたえ充分の快作です。(VHSの解説)

◎強面の殺し屋シ−モア(ニック・ノルティ)が罪悪感に悩んで、商売道具の右腕の不調や鼻血の頻出に襲われ、怪しげな髭面の精神科医に1時間75ドルも払って治療を受けているという設定が笑わせる。そのシ−モアの殺しの場面を偶然目撃した老嬢クイグリ−(キャサリ−ン・ヘップバ−ン)が、シ−モアに自分を殺してくれるように依頼に現れるところから奇妙に倒錯した物語が始まる。ミズ・クイグリ−は1000ドルの依頼料を工面するために、死にたくとも死ねないという同じ悩みを持つ男性をこの奇妙な企てに誘い込む。この男性がひょんなことから頓死し、ミズ・クイグリ−はそれをシ−モアの手際と思い込み吹聴して廻ったために、5人の友人が志願者として名乗りを上げる。都合で一人抜けた4人を歌を唄っている最中に痛みも苦しみもなくあの世に送ったシ−モアは、この殺しについては罪悪感が起こらなかったことで、長年の職業上の悩みから脱却することが出来て歓喜し、クイグリ−を“ママ”と呼び始める。その“ママ”ことミズ・クイグリ−はシ−モアを老人ホ−ムに案内し、ベッド上で植物人間化したニンゲンたちを見せ、この世の中にはいかに多くの老人たちが死にたくとも死ねずにいることを知らしめ、シ−モアにかつて持ったことのない使命感と生き甲斐を与えるのだった・・・。これから再逆転が始まるのだが、それは見てのお楽しみ。ラストのオチも悪くはない。なによりもこのブラックな設定が今となってみればより切実なモノとなっていることの皮肉を思う。呑気呆亭

11月18日(水)「冬の旅」

冬の旅」('85・仏)監督・脚本:アニエス・ヴァルダ 撮影:パトリック・ブロシュ 音楽:ジョアンナ・ブリュドヴィッチ 出演:サンドリ−ヌ・ボネ−ル/マ−シャ・メリル/ステファヌ・フレス/ヨランド・モロ−/ジョエル・フォッス
★実話を基にした、アニエス・ヴァルダ監督作品。少女がひとり、行き倒れて寒さで死んだ。誰に知られる事もなく、共同墓地に葬られた少女モナ。彼女が誰であったのか、それは彼女が死ぬ前の数週間に彼女と出会った人々の証言を聞くほかなかった。そして映画は、バイクの青年たち、ガソリン・スタンドの主人、さすらいの青年ダヴィッド、山にこもって山羊を飼う元学生運動のリーダー、病んで死んでゆくプラタナスを研究する女教授マダム・ランディエなど様々な人々の証言を元に、彼女の軌跡を辿ってゆく……。これは現代社会にとって“自由とは何か”という、これまであまりに語られすぎた、あまりに汚れきった観念を、新しく洗い直し、とことんまで正面から追求しようという姿勢に満ちた作品である。がゆえに、決して夢物語の様な陳腐な形で“自由”というものを扱ってはいない。この現代社会で、真の自由を得ることがいかに難しく、そして過酷な事であるかが、切々と語られているのだ。そして真の自由を得る為に欠くことの出来ない、表裏一体の、“孤独”というものにも、その視点は同等のスポットをあてており、それらを変な感情移入をせずに、引いた視点で淡々と描いている。これほどまでに“自由”と“孤独”というものをキチンと描いた映画は他に見た事がない。本作は、公開当時は余りスポットを浴びなかった作品ではあるが、実に素晴らしい、傑作といえる作品である。<allcinema>

◎ヴァルダにしては粗末な味の映画を作ったものだ。実話を基にしたとのことだが、そうした姿勢はしばしば実話であることに寄りかかって、何を語っても許されると思いこんでしまう。この浮浪者の少女は文明の周辺をうろつき廻ってそのおこぼれかすめて楽に生きて行くことしか考えていない。旅をしているらしのだがやたらヒッチハイクで車に乗りたがる。その旅路には目的地が無く狭い範囲を堂々巡りをしているようだ。描かれるのは彼女がその周辺をうろつき廻る文明生活という惨めな三文芝居でしかなく、決して自然の厳しさの中に踏み込もうとしない。冒頭ヴァルダは“少女は海から来たのではないか”として冬の海から上がる少女の姿を効果的な音楽とともに描くのだが、ラストでは、“嘘をつけ!”と言いたくなるほどの味気なさを感じたのだった。呑気呆亭

2015-11-17

11月14日(土)「ナビイの恋」

「ナビイの恋」('99・東京テアトル)監督・脚本:中江裕司 脚本:中江素子 美術:真喜屋力 撮影:高間賢治 音楽:磯田健一郎 出演:平良とみ/西田尚美/村上淳/登川誠仁/平良進/アシュレイ・マックアイザック/嘉手刈林昌
沖縄本島から少し離れた粟国島。奈々子は都会の喧騒に疲れて久しぶりに帰ってきた。島までの小さな船には一人旅の青年・福之助と伊達な白スーツの老紳士が同乗していた。そしてその老紳士こそ、60年前に奈々子の祖母ナビィが最も愛していた人だった……。物語はふたつの三角関係を軸に、沖縄特有の文化やジャンルを越えた音楽と共に老若男女の恋の思いを夢とも現実とも取れるファンタジーとして描いている。監督は『パイナップルツアーズ』『パイパティローマ』の俊英・中江裕司
 ナビィを演じるのは、後にNHKの朝の連続テレビ小説ちゅらさん」の好演もあり、いまやすっかり全国区の人気を獲得している平良とみ。一方、オジィ役の登川誠仁さんは三線の第一人者で、数多くの一流ミュージシャンを輩出している沖縄にあっても特別なカリスマ的存在。そのキャラクターに惚れ込んだ中江監督が、シブる登川さんをなんとか口説き落として出演に漕ぎ着けた。そんな、まさに沖縄を代表するオジィとオバァの顔合わせが実現したという意味でもなんともうれしい一本。<allcinema>

◎ラストのタイトルロ−ルに挿入歌の一覧が掲げられている。「ひょっこりひょうたん島」「下千鳥登川誠仁)」「海ぬチンポ−ラ(登川)」「じゅりぐわぁ小唄(嘉手刈林昌)」「ザ・スタ−・スパングルド・バナ−(三線登川)」「六調節(山里勇吉)」「クレイグニッシュ・ヒルズ(ケルト民謡マックアイザック」「ケルティック・リ−ル(ケルト民謡マックアイザック」「トウバラ−マ(八重山民謡マックアイザック」「国領ジント−ヨ(登川)」「月ぬ美しや(八重山山里」「むんじゅる節(照喜名朝一)」「夏の扉西田尚美)」「ロンドンデリ−の歌(アイルランド民謡山里/マックアイザック」「ハバネラ(カルメン〜恋は野の鳥)兼島麗子」「アッチャメ−小(登川)」
老若男女、ふたつの恋の三角関係のあれこれの展開に、これだけの歌がちりばめられていて面白くないわけがない。平良とみの可愛らしさはもちろんだが、沖縄三線の第一人者といわれる登川誠仁の素人とは思えない軽妙なアドリブに富んだ演技こそが、この映画を成功させた第一の功であったろう。呑気呆亭

11月13日(金)「雨あがる」

雨あがる」('01・東宝)監督:小泉尭史 原作:山本周五郎 脚本:黒澤明 撮影:上田正治 美術:村木与四郎 音楽:佐藤勝 監督補:野上照代 出演:寺尾聰/宮崎美子/三船史郎/吉岡秀隆/原田美枝子/壇ふみ/井川比佐志/加藤隆之/松村達雄/仲代達矢
★故・黒澤明監督が山本周五郎の短編をもとに書いた遺稿を、黒澤組のスタッフたちが映画化。剣の達人でありながら人の良さが災いし、思うように仕官できない浪人をユーモラスに描く。堅苦しくなく、見終わった後に爽快な気分になれる良質の時代劇。お人好しの浪人を寺尾聰が好演。宮崎美子三船史郎吉岡秀隆原田美枝子仲代達矢共演。享保の時代。浪人の三沢伊兵衛とその妻は、長雨のため安宿に居を構えた。ある日、若侍の諍いを難なく仲裁した三沢は、通りかかった藩主・永井和泉守に見そめられ城に招かれる。三沢が剣豪であることを知った和泉守は、彼を藩の剣術指南番に迎えようとするが…。<allcinema>


◎三沢伊兵衛は若き日に勘定方の仕事に嫌気がさして故郷を脱藩し、江戸で無外流の辻月丹に師事して達人になりながらも、何処の藩に仕えても長続きしなかったと語られる。こんな人の良さげな男がどうして周囲と折り合って職務を続けることが出来なかったのか。観客が抱く疑問は、賭け試合で負けた恨みを晴らそうと町道場の面々が、仕官の望みを絶たれて下城してきた伊兵衛を待ち伏せする凄まじい殺陣のシ−ンで氷塊する。伊兵衛の腹の裡でふつふつと滾る怒りのマグマの熱さは、人の良さにカモフラ−ジュされているだけに一旦噴き出すと止め処がなくなるのである。この多数を相手にした接近戦の殺陣の凄さは空前絶後の剣戟であった。伊兵衛を演じるにあたって寺尾聰は実際に無外流の師について学び、四ヶ月という短期間で振り下ろす木刀に空を切り裂く音を出さすまでになった。しかし、寺尾によれば、師の木刀はゆっくりと振り下ろされても空を切ったという。呑気呆亭

11月12日(木)「午後の遺言状」

「午後の遺言状」('95・日本ヘラルド)監督・原作・脚本:新藤兼人 撮影:三宅義行 美術:重田重盛 音楽:林光 出演:杉村春子/乙羽信子/朝霧鏡子/観世栄夫/瀬尾智美/松重豊
★老女優が避暑に訪れた先で過ごすひと夏を描いて、生きることの意味を問う人間ドラマ。監督は名匠・新藤兼人杉村春子と共演した夫人乙羽信子は本作が遺作となった。夏、蓼科の別荘に避暑にやってきた老女優、蓉子。彼女をその別荘で迎えるのは農婦の豊子。もう30年もの間続いてきた光景だ。言葉は乱暴だが、仕事はきっちりこなす豊子に蓉子は信頼を寄せている。そして、今年の夏もいつも以上にいろいろなことが彼女たちを待っていた。<allcinema>

◎題名と新藤兼人作品ということで録画しておきながら長いこと敬遠していたのだが、いやあ、面白い!面白かった。新藤さんの映画では一番面白い作品ではないだろうか。静かな蓼科の別荘に次々に起こる事件が戯画的に描かれて笑わせてくれるし、民俗学的な足入れ婚やら海から黒子に担がれて上がってくる心中した夫婦を納めたダブルサイズの棺桶やらの描写が大駱駝館の参加で前衛的な面白さがあったりして、監督のサ−ビス精神が感じられて好ましかった。しかしこの映画の何よりもの面白さは、杉村・乙羽・朝霧というベテラン女優たちの激しくはないが互いに時空を自在に巡るサスペンスを秘めた丁々発止の演技合戦であった。流石!と言わざるを得ない。呑気呆亭

11月11日(水)「大誘拐 RAINBOW KIDS」

「大誘拐 RAINBOW KIDS」(91・東宝)監督・脚本:岡本喜八 原作:天藤真 撮影:岸本正広 美術:西岡善信/加門良一 音楽:佐藤勝 出演:北林谷栄/緒形拳/風間トオル/内田勝康/西川弘志/神山繁/水野久美/岸部一徳/田村奈巳/樹木希林
★「独立愚連隊」「ジャズ大名」の岡本喜八監督が、3人組の若者に誘拐された老女が、それを逆手に若者たちを手玉にとって事件に関わる人々を翻弄するさまを描いた痛快コメディ。ある夏の日。大富豪の老女が3人の若者グループによって誘拐される。誘拐の報に、老女を生涯最大の恩人と慕う凄腕の警部が捜査に乗り出す。一方、誘拐犯が要求しようとしていた身代金が5千万と知った老女は激昂、百億にしろと言い放ち、3人を従え、自ら身代金強奪の指揮をとり始める……。主演の北林谷栄が快活で人間味あふれる老女を好演、この年の映画賞を総ナメした。<allcinema>

◎これはまず天藤真の原作がスケ−ルが大きくて面白い。その原作の面白さを岡本喜八が存分に生かして映画にしてくれた。作品の成功はキャスティングにあると言われるが、まさにこの作品にはピタリと当てはまる。大富豪の老女の北林谷栄の智略、母親を誘拐されて結束する神山以下の家族。そして辣腕の警部役の緒形拳。それぞれに適役で活躍してくれるのだが、群を抜いて存在感を見せるのは農婦役の樹木希林である。最初の登場が勢い余ってタンスを押し倒す力持ちのギャグで笑わせてくれて、主家の刀自への絶対の信頼感からすべてを呑み込んで見せる腹の据わった女の、ユ−モラスでありながらも強靱な生活者の存在感を画面に刻みつけて見せてくれたのだった。呑気呆亭

11月7日(土)「ラヴ・ストリ−ムス」

「ラヴ・ストリ−ムス」('84・米)監督・脚本:ジョン・カサヴェテス 原作・脚本:テッド・アレン 撮影:アル・ル−バン 音楽:ボ−・ハ−ウッド 出演:ジ−ナ・ロ−ランズ/ジョン・カサヴェテス/ダイアンアボット/リサ・マ−サ・ブルイット/シ−モア・カッセル
★'81年に上演された同名劇の映画化で、舞台版ではカサヴェテスの演じたロバート役はジョン・ヴォイトだった。脚本は戯曲の作者T・アレンとカサヴェテスの共作で、第一稿は「特攻大作戦」の撮影終了後書き上げられていたというから、20年越しの企画である。関心を持っているのは愛であり、それを失うこと、と言いきるカサヴェテス作品の主題が最も露骨に出た、見応えは充分だがかなりヘビーな作品。
ロバートは離婚歴のある、現代人の孤独や愛を描く人気作家。次回作を書くためハリウッド郊外の家に秘書や若い女友達らと奇妙な共同生活を送っていた。姉のサラ(ローランズ)は15年連れ添った夫ジャックと離婚に踏み切り、一人娘の養育権をめぐって協議を重ねていたが、娘は母との同居を拒み、彼女は発作を起こしてしまう。精神科医に勧められ出かけたヨーロッパでも憂さは晴れず、姉は久々に弟を訪ねる。その頃ロバートは、先妻との子アルビーを預かるが、実の息子にどう接するべきか皆目分からないでいた。留守を姉に頼んで、息子とラスベガスに向かったロバートだが、彼を置いて街に繰り出してしまい、翌朝になってホテルに帰ると、息子は母に会いたいと泣き叫んだ。早速、先妻の所へ出向いた二人だが、彼女の現在の夫にロバートは手ひどく殴られ、落胆し家に帰る。一方、サラは初めて自ら異性を求め出かけたボーリング場でケンという若者と出会い、明るさを取り戻すが、娘からの電話でまたも傷つく。彼女は電話口に夫を呼び出し尋ねた。愛は流れ続けるものか、と。そこへ割り込んだロバートは義兄をなじる。翌朝、目覚めた彼の見たものは大量の猛獣や珍獣。潰れた動物園から姉が買い取った動物たちだ。明らかに姉の様子はおかしい。が、その夜、大雨の中、ケンと共に家を出ていく彼女を彼は引き止めることが出来ないのだった…。ベルリン映画祭グランプリ受賞。<allcinema>

◎主人公ロバ−トが酒場で唄っていた歌手を口説き落とそうとして、立ち去ろうとする彼女の車の運転席に強引に割り込み、蹴られても叩かれてもハンドルを離そうとせず、遂に根負けした歌手を乗せて酔っ払い運転で家まで送り届け、送ろうとして階段から蹴落とされ、額から血を流しながらもなおもめげずに這い上がろうとする姿を見て、歌手はとうとう笑ってしまって家に入ることを許すシ−クエンスがある。ここを見ていてこのくどいほどの強引さと粘りこそが監督ジョン・カサヴェテスの真骨頂でありまたスタイルでもあるなと思ったのだった。そのスタイルを貫いてカサヴェテスは数々の愛の物語を創ってきた。この粘液質のスタイルは他に類を見ないほどのモノであり、カサヴェテスを一種奇態な非作家としたようだ。同伴者でアリ共犯者でもあるジ−ナ・ロ−ランズとジョン・カサヴェテスがこの作品に定着しようとしたのは、人間存在の絶対の孤独と愛という得体の知れぬモノだった。ラスト近くで見せたロ−ランズのゾッとするような喪失感に拉がれたマスクがトラウマとして残ってしまいそうな予感がある。呑気呆亭

11月6日(金)「イヤ−・オブ・ザ・ドラゴン」

「イヤ−・オブ・ザ・ドラゴン」('85・米)監督・脚本:マイケル・チミノ 原作:ロバ−ト・デイリ− 脚本:オリバ−・スト−ン 撮影:アレックストムソン 音楽:デヴィッド・マンスフィールド 出演:ミッキ−・ロ−ク/ジョン・ロ−ン/アリア−ヌ/ビクタ−・ウォン
★ハリウッド史に残る興行的失敗を喫した「天国の門」('81)のM・チミノが、やっと撮れた新作。ニュ−ヨ−クの中国人街にはびこる非合法組織チャイニ−ズ・マフィアの内幕に迫る。原作は元NY市警刑事ロバ−ト・デイリ−の同名ベストセラー小説。中国人マフィアのドンが殺された。後バマを狙う若い幹部ジョ−イ・タイは急進的に麻薬組織を変えようとする。強引で帽子好きの新任部長刑事スタンリ−・ホワイトは女性TVレポ−タ−や新人中国人刑事の協力を得、身の危険を冒して組織壊滅に挑む。ジョ−イに扮したJ・ロ−ンは静かな演技ながら圧倒的存在感を発揮。(ぴあ・CINEMA CLUB)

◎初見時にはジョン・ロ−ンの非情な存在感にかなりの衝撃を覚えたのだったが、今回見直してみて、ミッキ−・ロ−クの伊達な存在感に痺れた。それにしても物語をロ−ンとロ−クの突っ張り合いに矮小化させてしまって、ニュ−ヨ−クという都市とその一角に食い込んでいる中国人街というものの疫学的な意味にまで踏み込めなかったのは、マイケル・チミノにしては不満な出来の映画ではあった。呑気呆亭

11月5日(木)「ロ−ザ・ルクセンブルグ」

「ロ−ザ・ルクセンブルグ」('85・西独)監督・脚本:マルガレ−テ・フォン・トロッタ 撮影:フランツ・ラ−ト 音楽:ニコラス・エコノモ− 出演:バルバラ・ズコバ/ダニエル・オリブリフスキ/オット−・ザンダ−
19世紀末から第一次世界大戦にかけてベルリンを舞台に活動した女性革命家、ロ−ザ・ルクセンブルグの伝記映画。大戦に際し反戦を唱え、'19年に右翼軍人に虐殺されるまでのドラマチックの人生を行動的な活動家、そして女性としての側面から描く。女流監督フォン・トロッタの力作。
ぴあ・CINEMA CLUB)

◎前半のヒステリックに喚き立てるロ−ザにはやや辟易したが、刑務所に入ることによって小さな自然の美しさに目覚めるあたりから、ロ−ザの言葉に深味が増してくる。しかし一貫して違和感を覚えるのはロ−ザの身辺に常に家政婦が居る生活には貴族性が付きまとっていて、その彼女の口から発せられる大衆という言葉だった。刑務所でも何故か特別扱いされていて、書斎やガ−デニングの敷地まで与えられているのにはぶったまげた。などと色々違和感を覚えながらラストの虐殺まで見終えて、権力というものの不気味さと何時の世にも変わらぬ陳腐さを思い知ったのだった。呑気呆亭

11月4日(水)「マイライフ・アズ・ア・ドッグ」

マイライフ・アズ・ア・ドッグ」('85・スエ−デン)監督・脚本:ラッセ・ハルストレム 原作:レイダル・イェンソン 脚本:レイダル・イェンソン/ブラッセ・ブレンストレム/ペ−ル・ベルイルント 撮影:イェリン・ペルション 音楽:ビョラン・イスフェルト 出演:アントン・グランセリウス/マンフレド・セルネル/アンキ・リデン/レイフ・エリクソン/メリンダ・キンナマン
★主人公のイングマル少年は、兄と病気の母親、愛犬シッカンと暮らしている。父親は、仕事で南洋の海に出かけたままずっと帰ってこない。人工衛星に乗せられて地球最初の宇宙旅行者になったあのライカ犬の運命を思えば、どんな事だってたいしたことはないと考えるのが彼の人生哲学だ。やがて夏になり、母親の病状が悪化。イングマルは一人、田舎に住む叔父の元に預けられることになる。その村の住人は、一風変わった人ばかり。街に置いてきたシッカンのことが気になるものの、男の子のふりをしている女の子・サガとも仲良くなり、毎日を楽しく過ごすイングマルだったが…。
 50年代末のスウェーデンの海辺の小さな町と山間のガラス工場の村を舞台にしたこの映画は、母親の死、愛犬との別れ、また家族はバラバラになってしまうという展開で進みながらも、実にあたたかい視線で描かれている。それはこのハルストレム監督の人間に対する眼差しによるものだろう。悲劇的な要素を交えながらも、主人公の友人や村の人々との出会いを通して、人生そのものをユーモア豊かに、みずみずしい美しさを全編に漲らせて、実に心温まる作品に仕上げている。主人公を演じるA・グランセリウス少年の、何とも言えない不思議な魅力溢れる笑顔が、この作品の持つ“人生”の楽しさ、悲しさをまとめて語っているのも、“温かさ”の大きな要因のひとつだろう。傑作である。<allcinema>

◎好きな女の子から無情にも愛犬の殺戮を知らされたイングマルは、死ぬと分かっている宇宙にライカ犬を打ち上げる無情な人間の世の中に決別して、ニンゲンの言葉を発しない存在(犬)に成り切ってしまおうとする。これまで堪えてきた不条理の数々が遂に彼を狂気に追いやったのだ。そのイングマルを救ったのは村のガラス工場の人々の優しさと、厳寒の池に飛び込んだ変なオジサンを総掛かりで救おうとする村の人々の底抜けの善意であった。呑気呆亭